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#21 シーチナ像

 脈絡も無く聞いたことある(くど)い話しちゃってごめんだけど、魔導具について改めてざっくり説明するよ?


 魔導具っていうのは魔法を発動できる道具のことを指す。


 で、その魔法を発動する機構として、一般的に魔術回路が必要になる。


 魔術回路は有り体に言えば魔法を発現させる〝魔力素の奔流〟を模倣したもの。


 その関係で基本的な形状は3次元になる。


 それに加えて時間的に変化するなら4次元になって、さらに変化する要素があるなら、その要素分だけ次元数が増える感じ。


 まぁ次元数云々はぶっちゃけ回路の描き方次第で省略・削減できるから置いとくとして……。


 魔術回路を描くにはそもそも魔力素を目で捉える必要がある。


 だけど通常、魔力素は人の目には見えないんだよね。これは粒がすっごく細かい上に無色透明なのが原因だったりする。


 だから魔力素を見えるようにする工夫が必要になるんだけど大まかに分けて2つの方法があったりする。


 1つはお薬の力を使う方法。


 この方法は極論、薬の力で一時的に人の身体を改造する方法。


 だって、人の眼を、人外のそれへと変えることで魔力素を視る力を得る感じだからね。


 最早、変身薬と言っても差し支えないかもね。局所的だけど。


 まぁ無理矢理身体を変異させる訳だからそれ相応の副作用があったりする。吐き気とか目眩とか頭痛とか。


 副作用を抑えに抑えて尚キツイから元の作用は語るまでも無くやばい。


 それでも後で挙げる2つ目の方法よりも安価で直ぐに試せるってメリットがある。


 だから金欠だったりクエストの都合で一時的に魔力素を視たい場合によく使われる手段だったりする。


 それで今回の魔導具造りでこの方法使おうと思ったんだけどさ、肝心の【魔視薬】がどこにも売ってなかったんだよね。


 ならどうするかと聞かれたら2つ目の方法を使うしか無いんじゃないかな…。


 2つ目の方法っていうのは至極単純、魔導具の力を使う方法。


 高位の魔物の一部には魔力素を視る器官を備え持つ存在が居たりするから該当する部位を活用して魔力素を視覚化する感じ。


 ただ〝高位な魔物〟と言うだけあって討伐難易度があまりに高すぎて、素材自体ほぼ出回ってないパターンが定例だね。


 だから希少価値が特段に高くて魔導具を造るにはとんでもないコストが掛かる。


 なら2つ目の方法も無理じゃねって思うじゃん?

 でも灯台下暗しって言うのかな?

 その魔導具を持ってる人が身近に居たんだよね。

 早い話が借りればいいじゃんってことだったりする。


 そんなわけで所有者(シーチナさん)の居るお店へと来てみたのだけど――――



 「それは無理な相談じゃよ」


 「ですよねー」



 知ってた。……というかお店に着いてから気づいたよ。


 だってさ、仕事道具を他人に貸す人ってまず居ないよね?


 自分のせいで道具が歪んだり壊れたりする分には自業自得で納得できるけど、他の人にやられると納得出来ないというか、わたしは遣る瀬無い気持ちになるよ?


 その人がわざとじゃないと理解っていても壊された事実に変わりはないし、お金掛かってることだから「はいそうですか」と許すわけにもいかない。


 物によっては弁償してもらう必要もあるし。ギクシャクして嫌な気持ちになるよね。

 

 特にプロになると道具へのこだわりが強くなるから貸してくれるなんてまず有り得ない。


 道具が命と言っても過言じゃないからね。


 ならどうしてシーチナさんにそんな理解り切ったことを聞いのかと言うとあれだよ…異世界ならもしや……って思ったの。


 まぁそんなことはなかったけどさ。



 「お前さん、魔力素を見たいんじゃろ?」


 「そうですけど…」


 「なら錬金術師ギルドに行けばよかろう」


 「……え?」



 シーチナさん曰く、錬金術師ギルドに入会すれば、錬金術を行う上で必要だけど高価な機材を安値で貸し出してくれるサービスがある。


 ―――ってシーチナさんの旧友の錬金術師が言ってたらしい。農家同士で稲刈り機を共有する仕組みと似てるかもね。


 ともあれ問題解決するどころか色々便利な魔導具使えるみたいだし、これはもう錬金術師ギルドに入るしかないよね。


 善は急げというわけ、シーチナさんに錬金術師ギルドの場所を聞き出した。


 そして早速、かのギルドのところへ向かうおうとしたところで――――



 「ちょっと待っとれ」



 シーチナさんに引き止められてしまった。

 そして肝心のシーチナさんは別室へと行ってしまった。

 なんだろうね?



 「これでワシの面を造ってみるのじゃ」


 「へ?」



 広辞苑ぐらいもある【魔銀】の塊を抱えて戻ってきたシーチナさんが開口一番に発した言葉がそれだった。



 「えっと、依頼ってことですか?」


 「そうじゃなくてのぅ、お主の錬金術の腕前を見たいのじゃ」


 「ああ~、そういうことならいいですよ?」



 ここはあれだね。

 いつも何だかんだ呆れられてるから名誉挽回のチャンスってやつだね!

 ちょっと本気出しちゃうよ!


 わたしは全神経を注ぎ込み、寸分違わず二頭身にデフォルメされたシーチナさんの魔銀像を完成させた。


 腰に左手を当て、右手を突き出し親指立ててグッジョブしながらニシシと笑う可愛らしいシーチナ像である。


 その業物とも言える逸品を目の当たりにしたシーチナさんは像の如く拳をグッジョブ―――否、固めると腕を振り上げそのままわたしを軽く小突いた。………え、なんで?



 「真面目にやらんか!」


 「あ、はい」



 どうやら巫山戯てると思われたみたいだね。

 そんな~~~。

お読み下さりありがとうございます!


2018/04/06 ----------------

[修正]

・感想でご指摘いただいた箇所の修正を行いました。本文の最後辺りの一文です。

 前:親指を包み込むように丸めると……

 後:固めると……

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