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#20 吸魔銀

 あれから10日が経って4月になったよ。


 部屋の窓から夜空を仰ぐと外には4つの大きな三日月が淡く煌めく光景が広がっていた。この三日月たちが日ごとに徐々に成長して、30日で満月になるらしいよ?


 で、翌月1日になると再び三日月になる感じ。


 満月から過程飛ばして三日月になるとかホントどうなってるんだろうね?おまけに更に1つ増えるんだからホント不思議だよ。


 あと明るさも変わるのか、満月が一番明るくて、三日月は元居た世界のお月さまより少し暗め。


 つまり4月初旬の今の時期、外はあんまり明るくなかったりする。


 当然、部屋の中も暗いわけで、いつもはランタン借りて照らしてるんだけど、偶には【七色剣】の光オーラ使うってのも趣があっていいよね。


 ――――なんて訳の分からないことを頭の中で宣いながら、わたしはゆっくり目を瞑ると【七色剣】の光オーラ起動部へと強めの魔力を流し込んだ。



 『ぐわっ!?』



 すると部屋の扉の裏側から男の呻き声が伝わってきた。


 クワッ!と隙かさず目を見開いたわたしは光オーラを解除しつつも抜剣状態を解かぬまま、腕を伸ばせば届く距離まで扉に近づき左手でドアノブを軽やかに回した。


 それと同時に扉を足で蹴破ると――――そこには既に誰の姿もなかった。代わりに遠くから響くのは階段を素早く駆け下りる音。どうやら逃げられたらしい。



 「はぁ~~~」



 そしてわたしは溜息を吐いた。

 だってさ、また逃げられたんだもん。

 何にって聞かれても正直わたしにも分かんないよ。

 まぁ…たぶん商業ギルドか闇ギルドじゃないかなぁ。

 四六時中うろちょろされて正直煩わしいんだよね…。


 あれだよ。

 商業ギルドに目つけられたかもしれない。


 ここ最近、魔晶石系の買取依頼とか消化しまくってガッポリ稼いだじゃん?


 一応、どの取引も商談室使って顔バレしないようにしたはずだから他の商人に身バレどころか名前バレすらしてないはず。


 ……はずなんだけどさ、商業ギルドの運営人とは何度も顔合わせてるわけだから複属性の魔晶石ポンポン出しまくってるのがわたしだってバレてるわけ。


 あと今更だけどさ、商業ギルドって匿名性云々謳っておきながらその実、取引した人物の名前とか物品とか記録してるんじゃないかなぁって思うんだよね。


 例えばさ、横流しとか非正規品とか出所不明の品物とか、不自然な物の流れって大抵犯罪の香りがプンプンするし、国としてはそういうのも監視対象だったりするわけで……。


 万が一に備えて取引情報とか記録して然りだと思うんだよね。


 だからその監視対象と言うか要注意人物としてピックアップされちゃった可能性がすっごい高いと思うの。


 どこからともなく現れた正体不明の新米商人が希少価値が頗る高い複属性魔晶石をピンポイントで各依頼で売り捌くとか異常だし、裏にデッカイ組織が潜んでいると思われても不思議じゃないよね。


 どこまで調べられているかは知らないけど別大陸から来たって設定も調査済みかもね。それで知らない間に脅威認定されて暗殺者仕向けられたら本当に笑えないよ。


 考え過ぎかもしれないけど実際に密偵っぽい人たちにココ最近つけられてるし少なからず当たってるんじゃないかなぁ。


 わたしが無属性の魔晶石を買い漁ってることも知ってるだろうし、わたしが複属性の魔晶石造ってるってこともバレるのも時間の問題かもしれない。


 そしたら最悪、その方法聞き出すために強硬手段に出てくる可能性も否めないよね。だってわたし、この国の人間じゃないし。ギルドに入ったと言っても所詮、末端だし。切り捨てられても可笑しくない。


 だからいつ襲われても大丈夫なように防衛手段いくつか用意しないとすっごい不味い状況だったりする。


 例えばさっき使われたのは透視系の魔導具だと思う。


 誰も居ないはずなのに見られてる感じしたからさ、まさかと思って部屋中眩しくしてみたら見事に当たった感じだったよ。いわゆる目潰しってやつ。


 一度は追い払えたけどさ、でもいつ戻って覗き見されるか分からないし、そのために常時ピリピリ警戒するのも疲れるし、厄介だよね。


 透視系の魔導具って対象エリアへ魔力素を伝播して周囲の状況を画像として逐次的に魔導具に送り届ける感じだから、その伝搬を阻害するなり、周辺の魔力素を掌握するなりすれば覗き見防止できたりする。


 まぁ詰まる話、対魔結界を張ればいいってことだったりする。けど、寝ずに結界維持し続けるとか普通に無理だから専用の魔導具を造ることにするよ。


 材料的は【魔導書】製作のために買った【魔導粉】【光魔晶石】に加えて【吸魔銀】が必要だったりする。


 【吸魔銀】は【魔銀】に周囲の魔力素を吸収する性質を付与した金属だけど、早い話が【吸魔石】の粉末を【魔銀】に混ぜ合わせただけだったりする。


 その【吸魔銀】に魔術回路を刻印して、更に電池代わりに魔晶石をくっつけることで魔法を常時発動させる感じで行こうと思うよ。


 くっつけると言っても豆電球を回して嵌め込む感じの穴を設けて、それに合わせて魔晶石の形状を調整する感じ。そうすれば嵌めた時グラつかないからね。


 で、刻印する魔法の効力的にも消費MP多いから魔晶石も最低3属性以上は無いと直ぐに魔力素尽きて只の石ころになっちゃうから気をつけないといけない。


 あと【魔導粉】と【吸魔銀】それぞれの成分の配合率も調整しないと動力供給不足になったり供給過多になったりするから慎重にやらないとダメだね。


 それらの点に気をつければ今回つくる魔導具は事足りるんだけど問題はやっぱり【魔視薬】なんだよねぇ。


 シーチナさんに聞いてもどこに売ってるかまでは知らないみたいだし。


 わたしの方でも薬屋巡りしてみたけど売ってなかったんだよね。でもこのおくすり無いと魔導具製作なんて不可能だし。ホントどうしよ?

お読み下さりありがとうございます!


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