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#19 登録割引券

 展示室を歩き回った末に早速依頼を受けてみることにしたよ。


 書かれた内容はこんな感じ――――



 番号:UCST0083123

 名称:三属性魔晶石[火・水・風]

 上限:1個

 状況:0個

 期日:オーボリ歴908年3月27日まで

 単価:3150000リディス

 備考:拳大のみ買取



 十数あった魔晶石系依頼の中でも比較的報酬額高めのやつを選んでみた。


 魔晶石系の依頼を選んだのは、単に作り慣れていたり素材がすぐ揃ったりとお手軽なのが理由だったりする。


 ただ、属性の付与作業って結構時間掛かるんだよね。

 そもそも魔晶石のストックがもう無いし。


 つまり宿屋に戻ってパパっと造って直ぐ納品みたいなことはできそうにないかな。


 だから今日のところはシーチナさんの素材屋に寄ってって、魔晶石買った後は宿屋でじっくり石の錬成することにするよ。


 そんなわけでわたしは商業ギルドを後にした―――――



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 翌日。商業ギルド1階、買取依頼専用窓口―――――



 「すみません。〝買取番号UCST0083123〟の依頼ってまだ大丈夫ですか?」


 「少々お待ち下さい」



 そう答えた受付嬢はカウンター下の収納棚から買取帳簿を取り出した。


 至るページに色とりどりにペタペタ貼られた付箋を頼りに該当ページを引き当てたのか、受付嬢は顔を帳簿へ近づけて依頼の確認を開始した。


 そして確認が終わったのか、再び顔を上げてわたしの方を向くと「大丈夫です」と一言そう告げた。



 「売却希望でよろしいでしょうか?」


 「はい」


 「では、部屋はご利用になられますか?」


 「えーと…はい、お願いします」



 基本的に匿名性を保つべく、依頼書には買取主の名前の記載は一切なく、売却主も取引毎に名前を記載したりなどの事務手続きは存在しない。


 場合によってはちょっとアレな商品とかも稀に取引されるみたいだし。


 つまり買取依頼の依頼主と売却主は互いに互いが誰なのか、通常はは判らない仕組みになっている。


 だけど稀に調べて回ってツテや人脈作りに精を出すマメな商人とかもいるみたい。


 まぁ中には詮索されたくないって人も当然居るよね。


 だからギルドの会員サービスの一貫として、原則100万リディスを超える取引を行う場合は今みたいに部屋を無償で貸し出すサービスを行なっているらしい。


 お金はたくさん欲しいけど、なるべく目立ちたくないからさ、もちろん利用することにしたよ。



 「係の者を呼びますので少々お待ち下さい」



 カウンターの収納棚からハンドベルを取り出した受付嬢は軽く3回それを振るった。


 すると間もなくしてカウンター奥の扉から1人の中年男性が現れた。シャキッとタキシードを身に纏った出で立ちは正に出来る男って感じの雰囲気をヒシヒシ感じる。


 その男はカウンターの外へ出るとスタスタこちらへやってくると共に物柔らかな声音と手振りで行き先を告げた。



 「それでは商談室へ向かいましょう」



 そして歩き出した男の後をわたしは追った――――― 



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 依頼の品の受け渡しはあっという間に終わったよ。


 向かった先の部屋の中でスタンバイしていた鑑定士に造った3属性魔晶石を渡して真贋の確認。


 次にタキシード男が代金袋を取りに行って戻ってくる。


 そして依頼品と引き換えに代金袋を受け取って硬貨の枚数数えて終了。


 特筆するようなイベントもなくスムーズに取引進んで呆気なく終わったよ。


 イベントと言うほどでもないけど登録割引券もらったよ。


 買取依頼とか売却依頼とか出す時に渡すと登録料が5%少なくなる地味に便利な券。複数枚の同時使用は不可。


 低ランクな商人たちに対して依頼系サービスの利用を促すために商談成立時に配布しているらしいけど5%って微妙だよね。これ、本当に効果あるのかな…?


 まぁ異世界での始めての取引だったから少し緊張したけど、それ以上に味気なさを感じたよ。


 別にトラブル発生してほしいわけでもないけどさ、もうちょっとこう…異世界というか何というか、これぞファンタジー!って感じの摩訶不思議現象とか見たいんだよね。


 光る鉱床とか無限に湧き出る泉とか。どこかにファンタジー落ちてないかなぁ……。


 なんて、そんな他愛もないこと考えながら辿り着いた先は『シーチナの素材屋』。つまる話、【魔導書】を作るために必要な【魔視薬】除く全ての素材を買いにやってきたよ。



 「こんにちは~。お店やってますか?」


 「毎日やってるに決まってるじゃろうが?」



 そう尋ねると、何を言ってるんだと言わんばかりに呆れた声音で返事されたよ。来るたび呆れられてるのは気のせいかな?


 まぁ気を取り直して早速本題を告げると、シーチナさんは奥の部屋から頼んだ素材一式を持ってきてくれた。



 「130万リディスじゃ」


 「あれ?なんだか高くなってません?」


 「そのとおりじゃ」



 悪びれる様子もなくシーチナさんはあっさり認めた。


 前回提示された額は120万だったはずだから地味に高くなってるよね。どうしてだろ?


 その理由を聞いてみた――――



 「最近素材を買い求める客が多いのじゃ」



 シーチナさんの話によるとウィスカルの街全体で徐々に素材全体の需要が高まってきているとか。その影響で緩やかに値上がりし始めているらしい。


 なんでも、ここ最近になって近場で迷宮が再稼働したとか。


 その攻略が近々大体的に行われるらしく、それに参加する冒険者たちが挙って装備を買い求めたりだとか、新調したり強化したりしているみたい。


 それで街に存在する素材のストックが減少傾向にあるらしい。


 そういえば迷宮再稼働したってヴァルドさんが言ってた気がするよ。で、一緒に攻略しないかって誘われたんだけど断ったんだっけ。うん、完全に思い出したよ。


 再稼働が原因でいろいろ酷い目あったのになんで忘れてたんだろうねわたし。ホント不思議。


 まぁたぶんそれが理由で買取依頼で魔晶石系の依頼が多かったんだと思う。


 でも複属性の魔晶石に限って期限ギリギリな物品募集板たくさん残ってたし、無属性の魔晶石から属性有りの魔晶石を作り出して更に複属性化する手法って確立されていないっぽい?


 だとしたら今が一番の稼ぎ時かもしれない。


 だってわたし以外、誰も製造法を知らないのだから。


 お金の問題さえ無くなれば装備も強いの造れるし、そしたらレベリングにも取り掛かれる。


 呑気に【魔導書】造ってる場合じゃないかもしれない。

お読み下さりありがとうございます!

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