#18 物品募集板
翌朝、わたしの目の前には無数の縦向き板が規則正しく並び立つ光景が広がっていた――――
ここ?
商業ギルドだよ?
ちょっと詳しく言ってみると3階まるまるワンフロアが1つの部屋になってる所謂大部屋ってやつ。
え、何か作るって言ってたじゃんって?
宿に戻ったら早速なにか造ろう思ってたんだけどさ……着いた頃にはもう日が暮れちゃって夜になってたから寝ることにしたんだよね。眠いと作業効率悪いし。
それで次の日になって考え直してみたんだけどさ、やっぱ商業ギルドの買取依頼サービス使うことにしたよ。
商業ギルドって所属するだけでお金掛かるけど、それに見合った色々なサービスとか特典があったりする。買取依頼もその一つだね。
で、概要ざっくり言うと、何か欲しいアイテムあるときに、一定期間、商業ギルドが代行して買い集めてくれるサービス。
まぁ正確には何時から何時まで単価いくらで何個まで募集するか設定して、買取に必要なお金を事前にギルドに渡しておく必要があるけどね。
それだけじゃなくて、依頼登録料として1万リディス、収集報酬としてアイテム1個当り買取値の10%分のマージンをギルドに支払わないといけない感じ。その他の細かいルールについては飛ばすよ?
結構マージン料が高い気もするけど階級上げれば徐々に下がるらしいし、その間はギルドに精一杯貢げってことなのかもしれないね。そう考えると案外ギルドって汚いよね。
まぁそれはともかくとして……。
ギルドがどうやって依頼されたアイテムを集めてるかっていうのが今わたしの目の前に広がる光景に関係してたりするの。
例えば目の前の札にはこんな内容が書かれていたりする。
番号:KFSB0111940
名称:蒼岩塩
上限:10塊
状況:07塊
期日:オーボリ歴908年3月30日まで
単価:15000リディス
備考:500グラムで1塊として扱う
もちろんアルファベットだとかアラビア数字だとか単位だとかは元居た世界の似たような単位に置き換えたものだよ?
あと暦なんだけど、この世界は1年=10ヶ月、1ヶ月=30日、1日は20時間らしいよ?
それで平民が月を数えるときは空に浮かぶお月さまの数を数えるらしい。なんでも30日毎に夜空に浮かぶ月の個数が増えていき、10個で最大になるみたい。すっごいカオス。
で、10月の30日目が終わったら再び1個にリセットされるらしい。この惑星の重力とか軌道とか宇宙とか一体どうなってるんだろうね。ホント不思議。素人だけどツッコまずにはいられないね。
なんか話逸れちゃったけど、さっきのような内容記した板――――【物品募集板】を用意して、ワンフロア丸ごと使った展示室に並べて会員に公開することで売り手を公募するって方式を採ってるみたいだね。
つまりこの板の群れの中から期限内に造れるアイテム見つけ出して即席して売りつけようっていうのがわたしの計画だったりする。
買取依頼の反対で売却依頼っていう買い手を募集するサービスもあるにはあるけど、登録料とマージン取られるだけ取られて売れ残ったら損だから今回は買取依頼で売りつける側になろうと思うよ。
それで出来ればなるべく誰も手をつけなていない依頼か、需要多くて依頼品目ダブってる感じのものがいいんだよね。素材調達して造ってる間に依頼終わっちゃったら売れなくて大損だしね。
その条件の下、板を探していくと不思議なことに複属性の魔晶石の依頼ばっかり目につくんだよね。
基本的に属性多い魔晶石は出力高すぎる関係で日用品とか家具の類に使われることってほぼ無いんだよね。
つまりその逆、非日常品? 魔剣とか、魔杖とか、大砲とか、カタパルトとか、とかく強力な兵器の製造に使われることが多いのが多属性の魔晶石。属性数は2~4に固まってる感じだね。
たぶんどこかでそういう兵器が必要になるほどの大事が起きるのかな?
だけど戦争にしてはどの【物品募集板】も単品での依頼だし、多いと言っても数十ぐらいだから多いか少ないかで言えば少ないよね。そうなると戦争の線は薄そうだけど他に思いつかないんだよね。じゃあなんだろ?
うーん…何か忘れてる気がするんだよね。何だったっけ?
でも思い出せないってことは忘れるほど大したことじゃないってどこかの誰かが言ってた気がするよ。たぶんこれもそういうことなのかな?
お読み下さりありがとうございます!