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#2 冒険者ギルド加入試験一次受験票

・いつもより若干長めです。

 ついに着いたよウィスカルの街!


 比較的、石造建築が多い感じが異国の風情を思わせるロマンチックな街並みだね。……異国も何もココ異世界だけどさ。


 そして集まる民衆の視線。

 その交点はわたしと一緒に揺れ動く。

 行き交う人は振り返りわたしのことをを二度見する。

 どれもコレもが奇異の視線。

 子供の無邪気な好奇の眼差しが眩しすぎるよ。

 稀に混じる哀れみの視線がとても辛いよ。


 やっぱウサギの着包み姿が問題だよね。

 ウサギなのに水色だから余計に目立つ。

 おまけにイベントやるわけでもないのに何やるのって聞いてくる人たまにいるから普通に困る。

 さっさとお金稼いで普通の服を買いたいよ。


 周りの視線に晒されている現実から逃避すべく、わたしはヴァルドさんに会話を振った。



 「この大陸の冒険者ギルドってわたしの居た大陸のギルドと関係あったりするのですか?」


 「それはないんじゃないか?」


 「ふーん……」



 わたしは別大陸から錬金術で事故を起こして今の大陸へ転移したことになっている。


 それをネタに冒険者ギルドの規模を調べてみたんだけど、少なくとも他大陸まで進出しているわけでは無さそうだね。


 それどころかヴァルドさん曰く、そもそも冒険者ギルドは国が管理している組織らしい。そして国ごとにその扱いや名称は異なる。だから同名の組織があって内実共に似た形態であったとしても、全くの別物として扱われるらしい。


 例えばヴァルドさんはこの国リディスエール王国の冒険者ギルドでは割りかし有名なほうだったりする。ランクも上から順に『虹』『黒』『白』『金』『銀』『銅』『鉄』の『白』らしく、冒険者の中では上位に位置する存在らしい。


 だけど一足他国へ出てしまえば、その国での扱いはランクなしの只の外国人。地位も名誉も何も無い凡人扱い。他国で確固たる立場が欲しければ、一から成り上がる必要があるってわけ。


 他にもギルドと名の付く組織があるらしいけど同じ感じらしい。


 なんだろうね。

 この世界って面倒くさいシステム多すぎじゃない?

 この国だけかもしれないけどさ。

 全部一元化しちゃえば使う側が楽なのに。

 ホント不思議。

 利権とか色々絡むとそう簡単にはいかないのかもしれないね。



 「そういや嬢ちゃんってどこ大陸出身なんだ?」


 「アヴァルティス大陸ですけど聞いたことありませんか?」


 「ないな……」


 「私にも判りませんわね」


 「そんな大陸あったっけ?」


 「……聞いたことない。」


 「そもそもこの大陸の名前って何て言うんですか?」


 「オーボリアス大陸ですわよ」


 「………どこそこ?」



 ≪AAO≫でも聞いたことのない大陸名出てきちゃったよ。


 まぁそもそも、≪AAO≫での知識なんて異世界じゃあんまり通じないけどさ。


 今のところ致命的な齟齬というか問題は発生していないけど、この先どうなるかなんて分からないからね。


 ≪AAO≫での知識は参考程度にって感じで考えておくのがベターだね。


 ともかく、わたしは冒険者になることにするよ。ヴァルドさんから根掘り葉掘り聞いた感じだと≪AAO≫の冒険者ギルドとあんまり変わらないし。


 ≪AAO≫の冒険者ギルドは依頼を受けたり発注できたりする。討伐依頼系は討伐証明部位を渡すことで依頼達成報酬がもらえる形式のものが多い。


 それで討伐証明部位っていうのが大抵、錬金術でもほとんど使わない部位だから小遣い稼ぎに結構向いてたりする。【ゴブリンの両耳】とか【オークの両耳】とか。


 ぶっちゃけ耳が多い。あと耳を手に入れたからと言って、その魔物が死んだかどうかも確認せずクエスト達成扱いとか管理が杜撰過ぎるんじゃない?って思わなくもない。


 だけどお金はきちんと貰えることだしツッコまないことにしている。


 そんなわけで≪AAO≫時代では小遣い稼ぎにと冒険者ギルドに所属して討伐依頼を請けてはクリアしてを繰り返して、なんだかんだで中堅冒険者と評されるランクCになってたりしてた。


 わたしの強さ?


 客観的に考えて、装備込みで戦闘能力を評価すればSランクオーバー。だけど装備が無ければ良くてランクBの下位程度。


 なにせ回避は出来ても素だと攻撃力貧弱だからね。おまけに自製ぶっ壊れ装備が無ければ速度全般に制限かかるし。躱しきれずどこかで詰む。


 ってか、そもそも今のわたしはニナちゃんだし、レベルも不明なところから考えて強さ的にDの成り立てと名乗るのが自然かな。回避と魔法でゴリ押しできるのはBの中盤までだけど、この世界の冒険者の強さとかルールとか全然知らないし。



 「わたしの大陸での話だから実際どれくらい強いかなんてわからないよ?」


 「嬢ちゃんの大陸ってやばいんだな……」



 やばいと言われればかなりやばい。

 なにせプレイヤーの2割が廃人だったりする。

 それが≪AAO≫クオリティ。


 でもヴァルドさんの言う『やばい』は違う内容を指している気がしてならない。また意味不明発言か。なんなんだろうねヴァルドさん。やっぱ疲れてるのかな。パーティリーダーって結構大変ってよく聞くし。たぶんそれかな……。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 冒険者ギルド、正面玄関(エントランス)――――――



 「俺たちは依頼完了報告してくるが嬢ちゃんはどうする?」


 「わたしは冒険者加入窓口に行こうと思います」


 「やっぱ嬢ちゃんも冒険者やるんだな」


 「ええ、もちろんですとも~」


 「………ニナ、ガンバ。」


 「ありがと」



 冒険者ギルドの風貌?


 石造りの市役所って感じかな。


 酒場なんて見当たらないし荒くれ者の視線に晒されるなんてテンプレも無いし、何だか肩透かし感が半端ないね。まぁ時間帯も昼前だし、人が出払っているだけかもしれない可能性もあるけどね。


 数人ほど居たには居たけどさ、わたし見て、ヴァルドさんたち見た瞬間に目を反らされる。たぶん関係者か何かだと思われてるのかな。事実、関係者だし。


 とにかく人が集まる時間帯までにウサギの着包み脱皮できれば問題なしだね。これが直近の問題だね。悪目立ちしたくないし。


 【黄昏の果て】一行と軽く挨拶して別れたわたしは『新規加入窓口』の看板がぶら下げられたカウンターへと足を運んだ。



 「………。何の御用でしょうか?」



 わたしの姿を見て一瞬硬直した受付嬢さん。似たような経験があるのか直ぐに復活して言葉を発したけどさ、何の御用もなにも看板からしてさ、冒険者になるためにやってきたに決まってるじゃん。


 もしかして冷やかしか何かかと思われてる?



 「冷やかしではありませんけど?」


 「あ、はい、すみません! 冒険者になりたいってことでいいですよね!?」


 「そうですけど」



 そういうと冒険者稼業が如何に危険なのか有り触れた説明を長々と聞かされた。≪AAO≫でもスキップ不可で聞かされるから後ろに長蛇の列ができたりするのが≪AAO≫版冒険者ギルドの風物詩だったりする。



 「ではこちらに署名をお願いします」



 そう言って渡されたのは意思確認書みたいな何か。ざっくり言えば死んでも自業自得なので冒険者ギルドに一切の責任を問いません的な内容。


 念の為、隅から隅まで隈なく見てみる。どこかに変な文言書かれてたら嫌だからね。あと契約者の行動を強制的に縛る系の魔法とか掛けられてたらシャレにならないから殊更神経尖らせて確認してみた。


 結果―――ただの紙切れだったよ。セーフ。



 「ニナっと」


 「は、はぁ………」



 困惑した表情でわたしのことを眺める受付嬢の行動は至って当たり前。だけどわたしも命掛かってるから人目なんて気にしてなんていられないのだよ。


 ともかく、一通りの手続きが終わったみたいで、冒険者ギルドに加入するための試験内容について告げられた。



 「つまり、ゴブリンの耳を両方、10セット持ってくれば一次審査はクリアってわけですね」


 「そうなりますね」



 冒険者ギルドのギルド員になるためには二つの試験をクリアしなくてはならないっぽい。


 一次試験がさっき言われたゴブリン耳ゲットのやつ。

 そして二次が冒険者ギルドの長もしくは副長との面談。


 暗殺者とかぶっ込まれたらどうするよって興味本位で聞いてみたけど守秘義務ですとか何とかで結局はぐらかされたよ。ぐぬぬぅ…。



 「こちらが『冒険者ギルド加入試験一次受験票』となります。失くした時点で失格となりますので失くさないようお気をつけください」


 「わかりました」



 そんなわけでわたしの冒険者ギルド一次試験が幕を開けた―――――


お読み下さりありがとうございます!


2018/03/30 ----------------

修正:

 ヴァルドの冒険者ランク表記が≪AAO≫版冒険者ギルドのものになっていた箇所を修正しました。また、以前の回にも同様の誤りがあったため、修正を行いました。申し訳ありません。


冒険者ギルドのランク表記

 ・≪AAO≫版:上から順に『S』『A』『B』『C』『D』『E』『F』

 ・異世界版:上から順に『虹』『黒』『白』『金』『銀』『銅』『鉄』


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