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#18 猛毒の矢


 「スカルト、そこの紅くてイボイボだらけで見た目も中身も普通にやばいキノコ採って」


 「なんでさっきからオレっちだけなんすか!?」


 「さっきのバツ。次やったらわたしひとりで逃げるから」


 「諦めろスカルト。明らかにあれはお前が悪い」


 「スカルト、ガンバ。」


 「まったく自業自得ですわよ」


 「みんなして酷いっすよー」



 酷いも何もね?


 スカルトマジ許すまじ。

 いやだってさ、戦闘中に手抜くんだよ?

 男のくせして疲れたとか言うんだよ?

 え、性差別よくないって?

 うん。今の言い方はわたしが悪いね。

 素直に謝るべきだよね。

 ごめんなさい。


 でもさ。肉体構造的に男の人の方がアドバンテージあると思うんだよね。


 ついでの話、ジョブ的にも盗賊(スカウト)のほうが錬金術師(アルケミスト)よりも能力値の成長率ほとんど上だし。やっぱスカルト許すまじ。


 え、あの後?


 あれからリシェーネさんが盛大に魔法3発外したよ。

 そして4発目にして漸く倒せたよ。ゴブリンアシュラル。

 合わせて5発だね。


 さすがに外しすぎだと思ったわたしは原因を調べることにした。万が一、FF(フレンドリ・ファイア)なんて食らったらシャレにならないからね。


 でも実際、戦闘中って一々周り見てる余裕なんて無かったりする。広く薄く周囲の気配に気を巡らすぐらいはするけど、じっくりなんて見てられない。


 そして4回目にして漸く見れたわたしは驚いた。


 リシェーネさんがどうやって魔法射ってるんだろうな~っと思ってチラリと横目で見たんだけどさ。なんと魔杖から射出してたんだよね。しかも片手撃ち。


 あれだよ。詠唱完了と同時に目一杯、杖を前に突き出して発動の鍵となる単語を唱える感じ。杖がそのまま照準の役割を果たしているっぽい。


 おまけに重心が僅かにピクピクしてるせいか中々照準が合わない。あと敵も気付いて避けるから余計に当たらない。


 ならどうするか?



 「エリンちゃんカモンカモン」


 「………なに?」



 そう。

 餅は餅屋に任せればいい。

 つまり射撃は射撃のプロに任せればいいのだよ!


 【黄昏の果て】随一の狙撃の腕前を誇るエリンちゃんに照準補正してもらえば大分マシになるはず。


 そう思ってリシェーネさんに寄り添う形でエリンちゃんをくっつけたのが功を奏したのか、ゴブリンアシュラルは一発撃沈したよ。


 その後は雑魚を挟んで2回もゴブリンシュラルとの遭遇戦を繰り広げてわたしは、ふと思った。



 「ヴァルドさん、森の主ってこう何匹も居るもんなんですか?」


 「いや、普通は一匹だ。斃して復活するにも最低半年は掛かるはずだ」


 「ってことはつまり………」


 「ああ、そうだと思うぞ」


 「マジですか――――」



 魔物の偏る異常現象――――どうやらそれは森の主にも適用されるみたい。

 つまり今、この森にはウジャウジャとゴブリンアシュラルが闊歩していることになる。


 どのくらい湧いているかは分からない。

 けどヘビやウサギよりも少ないのは確実だと思うよ?


 でも一戦一戦が長いから精神的疲労が結構溜まる。

 おまけに武器も所々傷んで来てるし。

 〈錬金術〉で直せなくもないけどMPは節約したいんだよね。

 細かい損耗まで修繕してたらキリがないし。


 ………MPなんて回復薬飲めばいいじゃんって思うかもしれないけれど、実のところそうでもなかったりする。


 回復薬って極論おくすりなんだよね。

 薬って用法用量きちんと守れってよく言われるじゃん?

 誰でも分かることだけど命に関わる副作用が起こるのが理由。


 【マナガム】とか【魔丸薬】にも副作用はあったりする。

 この2つだと主に目眩と痙攣だったかな。

 【月光草】由来の中毒成分が原因だからね。


 というか、そもそも回復薬の素材には大抵、中毒成分が含まれていたりする。


 そして摂りすぎると、時間経過以外では復帰不可の特殊異常『過剰投与(オーバードーズ)』状態に陥る。


 『過剰投与(オーバードーズ)』に陥ると、中毒成分で齎された状態異常全てが『過剰投与(オーバードーズ)』終了まで回復できなくなるから掛かったら割かし詰む。


 だから熟練の錬金術師は、錬成工程には中毒成分を取り除く工程を盛り込むんだけど、それをするには専用の精製装置と高度な技術が必要だったりする。


 〈錬金術〉で特定成分のみの抽出は不可能なのかって聞かれると否だけど、≪AAO≫のバランス調整なのか、直接的・間接的に錬金術師が突出して有利になるような項目については色々制約があったりするんだよね。


 その1つが抽出。できなくはないけど行うには莫大なMPが必要。やるにしても最低レベル250は無いと最大MP的にまともに作業できないから中々エグイ。


 ちなみにだけど≪AAO≫のレベル上限は1000だよ?


 ひ弱な錬金術師のレベリングってしんどいから、レベル250が錬金術師の登竜門って言われたりもする。


 大分話が逸れちゃったけど、MPの使いすぎは回り回って『過剰投与(オーバードーズ)』状態を引き起こすから避けたいんだよね。


 でも現状では結構な回数、回復薬を服用してるからそろそろやばい。


 前衛全員の疲労とか負傷などをわたしが魔法使って回復させてるのが原因。本職じゃないから魔法使用時の消費MPがとにかく高い。


 リシェーネさんの『消滅砲ディスインテグレーション』が必中したとしても保って後5戦くらいじゃないかな。


 中毒成分ってキャラのレベル問わず一定量で状態異常引き起こすから大体外れてはいないと思うよ?

 

 錬金術師のジョブ特性で薬物耐性っていうのがあるけど、せいぜい他職の3倍程度の耐性だから、どこぞのゲームみたいに乱用できなかったりする。


 ポーションガブ飲みしながら魔法連打したいなら薬物耐性25倍もある調薬師がオススメだよ。水でお腹がタップタプになるけどね。

 

 とにかくMP消費を抑えるにはどうすればいいか?

 答えは簡単。

 物理で殴ればいいのだよ!

 

 ……といっても物理的にまともなダメージ与えられたのはエリンちゃんだけだったりする。


 何度か援護射撃で矢が刺さるシーンがあったからね。もしこれを毒矢に替えたら後は放置ゲーになると思うんだよね。


 そんなわけで、現在進行系で劇物収集してるってわけ。そしてスカルトが恐る恐る握っている気持ち悪いキノコが最後の材料。


 最後のそれを急遽つくった草袋の中で保管しているオドロオドロしい草花たちと一緒に錬成すれば、晴れて劇毒の出来上がりってわけ。



 「スカルト、ご苦労さん。ほら手出して」


 「ニナっち酷いっすよ」



 文句を垂れつつも両手を差し出したスカルトに【七色剣】を向けたわたしはそのまま彼の手首を―――――水で洗い流した。


 さすがのわたしも腕を切り落とすなんて酷い真似はしないよ?


 【七色剣】って色々オーラ使えるけど攻撃向きなオーラって少なかったりする。


 その一つが水のオーラ。

 効果はただ水が出るだけ。

 まぁ威力も調節できるのが救いかな。

 剣に付着した血糊とかも簡単に洗い流せるから意外と便利だよ?


 と、他愛ないことを考えながら、それぞれの劇物を粉末状にして合成したわたしはエリンちゃんから矢筒を拝借した。作るのはもちろん毒矢。鏃と毒粉を錬成して猛毒の矢を作る感じで。


 そんな感じでわたしは猛毒の矢を作っていった―――――



お読みくださりありがとうございます!

あとブクマと評価も感謝です(≧∇≦)b

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