表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/61

#17 魔丸薬

 唐突な話だけど、回避盾って知ってる?


 オンラインなRPGでパーティ組むと役割分担とかいろいろあるよね。


 とりわけ盾役(タンク)っていうのは敵愾心(ヘイト)取りまくって敵の攻撃全てを一手に引き受けるのが役割。


 普通はHPと防御力に秀でた比較的打たれ強いジョブが盾で攻撃を堰き止めるのが基本。


 だけど回避盾は躱すことで盾を使わずして敵のタゲを取り続ける特殊な役。ダメージさえ受けなければ打たれ強いか否かなんて関係ないもんね。


 回避盾に向いてるジョブって大概スピード特化+攻撃特化だったりする。ヘイト系スキルなくても要所要所で高火力を叩き込めば自ずと敵愾心が貯まるからね。


 ついでに言えば大抵そういうジョブは紙装甲。


 だけどさ……錬金術師が回避盾やるってどうなのよ?

 紙装甲以外あってないじゃん。



 「ちょっスカルトさん!?何やってんですか!?サボってないで攻撃してくれません!?」


 「もう無理ぃ!なんで盗賊(スカウト)のオレっちがタイマン張ってんすかね!?」


 「それ言ったらわたしなんか錬金術師だよ!?」


 「お前ら黙って集中しろ!」


 「分かってますって!」


 「マジ無理ィィィィィ」



 あれだよ。

 7日目にして久々の難敵ってやつ。

 ウサギは数の暴力だったけど目の前の強敵は個としての強さを持っている。

 その証拠に三人がかりで漸く抑え込んでいる状況だったりする。

 ちょっとやばい。


 わたし、スカルト、ヴァルドさんがひたすら敵の攻撃を躱し受け流しつつエリンちゃんが援護射撃。そしてリシェーネさんがデカイの打ち込むとか言い出して現在進行系で長々と詠唱中な状態。


 なんでもこの世界では無詠唱魔法って一般的じゃないみたいだよ?

 ナニソノテンプレなんて思わなくもないけど考えるのやめたよわたし。

 だって異世界だもん……。

 常識なんて通じないもんね。

 自分にとっての常識(テンプレ)は他人の非常識っていうじゃん?

 え、言わない?

 そうですか。さいですか。


 それよりも何と戦っているかというとゴブリンアシュラルとかいう頭3つ腕6つのデカいゴブリンと戦ってるの。


 運悪く森の主に出会ってしまった感じ。一体どんな確率なんだろうね。すっごく嫌な予感がするよ。フラグがビンビン立ってる気がしてならないよ。


 ちなみにわたしの受け持ちは正面右側の『蛇腹剣』『錫杖』持った面のゴブ。


 武器の組み合わせがメチャクチャな癖して武器を巧みに操るゴブにかなり攻めあぐねていたりする。あと腕の可動域が異常に広くて気持ち悪い。


 正直なところ、武器捌きが巧すぎてほとんど攻撃できる隙がない。あっても全部パリィされるし。


 そもそも≪AAO≫では見たこと無い初見の敵ということもあって行動パターンというか癖が全く読めないんだよね。慎重になりすぎてる感はある。でも痛いのは嫌だから変えるつもりはないよ?


 でもそろそろ疲れてきたよ。



 「リシェーネさんまだっ!?」


 「――――――の逢来を以って……」


 「オレっち限界!ニナちゃんあれ使ってくれよ!」


 「悪い……俺もそろそろ限界だ。すまないが頼む」


 「またですか!?あーもう分かりましたよ!『回復(ヒール)!』『回復!』『回復!』」



 ≪AAO≫の雑システムのおかげで錬金術師でも回復魔法は一応使える。

 だけどコスパは超悪い。

 現に回復魔法を発動するたび酷い立ちくらみに襲われる。

 それでも辛うじて動けているのは一重に【マナガム】噛んでいるからだったりする。

 口の中に広がるカオスは食べた人にしか解らない地獄だよ?

 あの二人め。

 他人事だと思いやがってこのやろう。

 あとでタンマリ食わせてあげるからね♪

 覚悟してよね―――――



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 「退避ッ!」


 「――――を滅せよ!『消滅砲ディスインテグレーション!』」



 わたしは驚愕した。


 その威力に―――――――ではなくて外した事実に。


 この場面で外すぅぅぅ!?!?


 もうやだわたしおうち帰りたい!!


 ……ってふざけてる場合じゃないよね。



 「リシェーネさん!もう一発いけますか!?」


 「……………」



 チラッと振り返ると顔面真っ青にして打ち震えるリシェーネさんが崩折れて泣いている姿があった。


 MP枯渇の体調不良というよりかは外してしまったことによる精神的ショックのほうが大きいのだろう。


 仲間の命運が掛かった場面で盛大にやらかしたんだ。罪悪感と絶望感に苛まれまくってるんだろうね。


 でもさ、勝手に絶望されても困るんだよね。

 MPがもうないなんて言い訳はさせないよ?



 「ヴァルドさん!スカルト!今から補助魔法掛けるから二人で持ちこたえててくれる!?」


 「なんでオレっちだけ呼び捨て!?」


 「何か考えがあるんだな?」



 無言で頷き返したわたしは全力で戦域から離脱して二人に『身体強化(ブースト)』の魔法を掛けた。


 ごっそり身体の芯から何かが抜け落ちる感覚に堪えつつ、わたしはポケットから蒼い丸薬を取り出し――――それを口へと放り込んだ。


 これ?

 【魔丸薬】っていうMP回復アイテムだよ?

 【月光草】を〈錬金術〉でひたすら圧縮しまくった丸い物体。


 【マナガム】と違って飲み込むだけで一気にMP回復できるスグレモノだけど致命的な欠陥があったりする。一言で表すなら口臭やばい。


 ミントの香りって強すぎると咽るよね。

 【魔丸薬】飲み込むとその現象が起きまくるの。

 つまり今、わたしは大いに咽まくっている。


 何が原因かというと【月光草】の性質が関係している。


 【月光草】は地面から切り離すと徐々に水に溶けやすい性質を帯びるんだよね。この性質使うと簡単に【マナポーション】が作れたりする。水で薄める分、味とか風味とか薄まるから咽ることはない。


 だけど【魔丸薬】として使う場合は圧縮掛けるから希釈じゃなく濃縮と同じ現象が起きる。つまり超咽る。


 特に喉から胃にかけてミントの強烈な香りが残るから呼吸時に悲惨なことになるってわけ。


 え、丸薬なら【マナガム】よりマシって言ってたじゃんって?


 ―――――アレは嘘だ。


 いや、嘘じゃないけど素材不足の関係で無理だったの!

 言い訳乙とか言わないの! 


 とにかく、わたしはリシェーネさんにコレを飲ませに行こうと思うよ。

 あまりに咽すぎて魔法詠唱無理っぽいなら治療魔法で治せばいいだけだしね。


 そんなわけでわたしはリシェーネさんの下へと駆け寄った―――――


お読み下さりありがとうございます!


戦闘シーン書くのって難しいですね(´・ω・`)

あと心理描写スキルほしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ