#11 魔除けのお守り
聖域に引き籠もり始めてから早3日が経った。
なんとかウサギ着包み作れたよ。
着包みのプロトタイプ自体の作成は半日で終わった。
着包みというか着包みパジャマみたいな見た目。
けど実際に着てみると思いの外、問題だらけでびっくりしたよ。
それで修正に修正を重ねていたらあっという間に3日経っちゃった感じだね。
造ったはいいんだけど全身装備って結構蒸れるんだよね。
【双子兎の毛皮】って地味にモフモフしてて保温性高い。
だから【双子兎の毛皮】製の装備着てると汗かきまくる。
そもそも普通の装備って身体の部位毎に合わせて造るよね。隙間が生まれる関係上、基本的に蒸発した汗は外へと逃げてくれる。
だけどウサギ着包みの場合は隙間が殆ど無いからすっごい蒸れる。
つまり通気性がとっても悪いってことだと思う。
通気性を確保するためにウサギ着包みの関節部分に穴開けてみたけどあんまり変わらなかったから、手間かかるけど空調機能つけることで解決した感じかな。
空調機能と言ってもあんまり素材のバリエーション無いから今回は空気循環と冷房機能限定で実装してみた。
まずやったのが【風魔晶石】と【氷魔晶石】の生成。
あ、一応だけど【風魔晶石】と【氷魔晶石】は風属性と氷属性の魔晶石のことね。
無属性の魔晶石の近くで属性魔法を長時間行使すると魔晶石がその属性を帯びる性質使って作ったよ。
だけど魔晶石ってドロップ品云々関わらず結構ゴツイ形してるからそのまま付けると寝転がった時ぶっ刺さって痛いことになる。
ならどうするかって?
粉末状にすれば問題なかったりする。
でもあの気の遠くなるスリスリ作業はもう嫌なんだよね。
人って同じ作業ばっかりすると眠くなるし。
すっごく飽きてくるし。
そもそも地味すぎてつまんないし。
ってことで〈錬金術〉スキル使うことにしたよ。
前にも言った覚えあるけど、〈錬金術〉スキルは『魔力を浸透させて物質の状態・性質・形状に干渉する』スキル。
より正確に言えば、『直接触れた存在を自身の魔力で染め上げて世界の法則に則って自由自在に变化させる術』。
一応言っておくけど生物に対してはほとんど効かなかったりする。
基本的に≪AAO≫の生物は血液のように魔力を生成、循環しているらしい。だから魔力を浸透させてもさせた端から上書きされて打ち消されることになる。
つまりMP量が対象よりも相当高くないと抵抗されちゃうんだよねー。
そもそも戦闘に向かない錬金術師が常時相手に触れ続けるとかまず無理だし。そんなわけで〈錬金術〉は生産面では万能でも戦闘面では無能だったりする。
話がちょっとズレたけど〈錬金術〉スキルを使うことで素材の結合状態ももちろん弄れる。
これ使うとあのスリスリ作業しなくても一瞬で魔晶石を粉末状にできたりする。
じゃあなんで以前に使わなかったかって?
単純にMP不足だっただけだよ。
あのときはMP節約しないといけない状況でもあったし。
でもここ聖域だから基本安全。
倒れるまでMP使いまくっても大丈夫だからやったね。
おまけに最大MPも大分上がってるはずだし。
そんなわけで【風魔晶石】と【氷魔晶石】を粉末状にしてみた。
一見、順調そうに進んでるけどそのあとが問題だったりする。
2種類の粉を混ぜ合わせて再結晶化すると二属性の魔晶石つまり【風氷魔晶石】ができるんだけど二属性以上の魔晶石って出力すごい高いんだよね。
つまり着包み内が一気に冷却されて最悪凍え死ぬ。やばい。
さすがのわたしもそんなの着たくないから別の方法取ることにしたよ?
ざっくり言うと、着包みと粉の合成。そうすることで生地が変質して、魔力を流すと微小の冷気と気流を生むようになるって仕組み。
ただ何も考えずにやるとさっき言ったような事故が起きかねないから、慎重に粉を追加・合成していく必要があって大分時間が掛かった感じ。
あとは〈錬金術〉で肌触りを滑らかに調整して完成!
あの【ジギースーツ】とは比べ物にならないほど着心地が良くて大興奮だよ!
売りに出してもいいレベル。
こりゃもうジャリジャリ【ジギースーツ】生活には戻れないね。
でも粉の色成分の問題でカラーリングが元の白から水色へと変色しちゃったせいか、なんだか目立つ。目立つってことは魔物に見つかるリスクが上がる。
さすがに危険を犯してまで着るわけには行かないけど勿体無いよねコレ。
聖域がわたしについてきてくれればいいけど普通に無理だし。
でも聖域の土を使えば【魔除けのお守り】作れるかもしれない。
持ってるだけで魔物が勝手に避けてくれる便利グッズ。
できれば聖属性の定着化した真っ白な土が良いかな。
色濃い方が効果高いし。
うん。爆心地の中心辺りが結構白化してていいね。
アレならたぶん並以上の効果が期待できそうだね。
そんな感じで【聖土】を回収したわたしは【魔除けのお守り】制作を始めたのだった―――――
お読み下さりありがとうございます!
2018/03/17 02:02 --------------------
[注釈]魔昌石に関する補足説明です。
異なる属性の魔晶石同士の粉末を合成すると複数属性の魔晶石ができます。ただし、他の素材も一緒に合成する場合は素材に特性が付与されるだけで複数属性の魔晶石並の出力にはなりません。そのため、複数属性の魔晶石と同様の出力を得たい場合は、事前に複属性化してから粉末にする必要があります。
【七色剣】は後者の方法を用いることにより高出力化を図っています。また、ウサギの着包みと2種類の粉とを混ぜ合わせても高出力にならないのは前者の方法を採用しているためです。
サラッと読み返した時に紛らわしい感じがしたため、この注釈を追加することにしました。
長文失礼しましたm(_ _)m