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#8 混沌の魔宝珠


 ヴァルドさん率いる冒険者パーティー『黄昏の果て』の目的地とわたしが目指す場所は全く別方向にあるらしく、ここで別れることとなった。


 その別れ際―――――



 「【魔法増強剤】作成のお手伝いとても助かりました」



 わたしの素直な感謝の言葉に神妙な顔つきで



 「話の分かる嬢ちゃんで俺たちこそ助かった。礼を言う」



 とかなんとか全くもって意味不明な礼の言葉を告げるヴァルドさん。


 そして意味が分からず固まるわたし。


 やっばい……。

 知らないうちに何かやらかしたかもしれない。


 ちょっと考え事してて途中からヴァルドさんの話の大半を聞き流していた。


 ぶっちゃけ会話の内容なんてほとんど覚えていなかったりする。


 地図のくだりのあとどうなったっけか?

 

 ………思い出せないぞぉ~。

 

 見栄張って分かってるフリしても碌なことにならないだろうから素直に聞くか~。

 

 「あ、あの――――」

 「じゃ、ウィスカルで会ったらよろしく頼む」


 「さっきのはな―――――」

 「さっさと行きましょうよ」

 「行こうぜ行こうぜ」

 「来ないと殺す。」

 「分かった分かった。そんじゃまたな」



 パーティメンバの声高な催促に「仕方ないな」と言わんばかりに返事するヴァルドさんは軽く別れの挨拶を告げるとともに仲間の元へと去っていった。


 そしてわたしの言葉は『黄昏の果て』一行の言葉に掻き消される形で虚しく霧散していった。


 何が「よろしく」なのかホントに分からないけどウィスカルの街で会ったときに何か頼まれたら忘れてたよテヘペロで誤魔化すことにしよう。うん。そうしよう。


 閑話休題。


 それにしてもほんとマジで助かったよ。


 魔晶石思ったよりも硬くて中々量産できなかったから今日まるまる一日潰す気で居た。


 筋力パラメータ貧弱な錬金術師が魔導具使わず肉体労働とか凄まじく非効率だからね。


 いつ擦り終わるか分かったもんじゃないよ。

 だから、たったの数時間で終わるとは思っても見なかった。

 ある意味あのエルフちゃんのおかげだね。

 感謝はしないけど。

 

 予想外にも粉たくさん出来たからアレが作れるねアレが。

 アレがあればこの先やばい魔物が出ても対処できるようになる。

 アレというのはズバリ【混沌の魔宝珠】。


 名前からしてやばそうな香りがするけどホントその通りにやばい。


 早い話が()()()()()()()()()()からとにかくやばい。

  

 使ったが最後、全身全霊を以てして即離脱しないと巻き添え食らって普通に自分が死ねるけど、序盤のボスなら大抵一撃で倒せるほど強力な消耗品。ジョーカー的切り札。


 で、【混沌の魔宝珠】の原材料は魔晶石だったりする。

 つまり造るには魔晶石に関する知識が大切になってくる。

 というわけで、まずは魔晶石について説明するよ?


 基本的に魔晶石は魔物の体内でのみ生成される謎物質を媒質に魔力素が定着して物質化したものらしい。そして魔晶石は魔物の属性とか周辺環境の影響をもろに請けて属性を帯びるようになる。


 大雑把に式っぽい何かを書くとこうなる。


 魔晶石 = 謎物質 + 魔力素


 かな~りいい加減な式でごめんね。

 なにせ目下研究中の内容なだけにわたしもほとんど理解できてないんだよね~。

 だから細かいところは勘弁して!


 ってことで、次いくよ?


 魔晶石の属性を決定づけるのが魔力素各々の属性。


 魔力素は初期段階では無属性だけど魔力素を取り巻く環境に応じて形態というか属性が変化する。そして一度属性が決定されると二度と他属性へと変わることはない。


 あと、基本的に異なる属性の魔力素は互いに反発し合うらしい。無理矢理くっつけようものなら最悪爆発する。その際、属性各々に対応する各種現象が副次的に発生する。


 前者に起因して一般的に≪AAO≫で流通している魔晶石のほとんどが単属性だけど、稀に2属性とか3属性とかの代物が出回ることがある。その理由は≪AAO≫の魔物AIの根幹に由来する。


 《AAO》の魔物って自由気ままに移動するから極端な話、氷山地帯を住処にする魔物が気まぐれ起こして火山地帯へ引っ越すなんてこともある。そして奇跡的にも環境に適応できたならばその魔物の魔晶石は2属性になるらしい。


 その複属性の魔晶石っていうのが不思議なことに魔力素密度が非常に高いから、高出力な魔導具の作成には欠かせない。


 正に錬金術師にとって垂涎モノの代物だったりする。


 どうしても欲しくなったわたしは金にものを言わせてオークションで競り落としたり、適応した魔物を探し求めて各マップの隅々まで探査したりもした。


 ―――――だけどそれって錬金術師の在り方として相応しいのだろうかな?という疑問がわたしの脳裏を掠めた。




 ――――というのは真っ赤な大嘘。



 もし作れたらお金ガッポガポだよね――――そう思っただけ。 


 それでいろいろ実験してたら無属性の魔晶石の傍で長時間かけて属性魔法使うと魔晶石の属性が変化することが判ったよ。残念だけど2種類以上の魔法を同時に使った場合は無属性のままだったよ。


 ってあれ?


 魔晶石の説明だったはずがいつの間にやらわたしの金儲け話になってきてない?


 このまま続けると延々と話しちゃいそうだから結果だけ言っちゃうよ?


 こうしたら出来た。


 1.異なる種類の単属性の魔晶石を用意する

 2.それぞれ粉々にする

 3.大体同じ割合で両方の粉を混ぜ合わせ〈錬金術〉スキルで合成する


 以上! ね、簡単でしょ?

 一応、粉でも結晶の状態でも属性付与は同じく可能だよ?


 というか手順とか種類とかの試行錯誤の過程で生まれたのが【混沌の魔宝珠】だったりする。


 8属性以上の魔晶石を錬成というか合成しようとする必ず失敗する代わりに生成されるのが【混沌の魔宝珠】。


 生成に使わなかった属性を帯びた魔法に触れた途端、魔宝珠に内包された属性のいずれかに対応する自然災害が発生するトンデモアイテム。ぶっちゃけわたし的には封印指定危険物扱い。ストレージの肥やし。


 だって【混沌の魔宝珠】持った状態で敵から使用外の属性魔法食らうと自爆するからホント素敵。マジやばい。


 危ないからといって破棄しようにも密度が高すぎてとにかく堅い。

 つまり捨てるのにも一苦労だし。

 不法投棄、よくない。


 ≪AAO≫だと捨てたアイテムってそのまま地面とかに残るし。拾われて事故起こって責任取れやって言われてもぶっちゃけ困る。


 結果、ストレージの肥やしになることが多い。



 ――――という感じで、やばさが伝わった思う。たぶん。



 まぁ珠のサイズで効果の規模の調整ができるのが唯一の救いかな。最小サイズが決まってるのが難点だけど。


 規模を制御できれば使い方次第では強力な攻撃手段としても運用できそうだよね。


 だから今回は小さな【混沌の魔宝珠】をたくさん作ってみようと思ってる。


 でも作れても2~3個だと思ってる。 


 なにせ8属性それぞれの魔法を長時間行使するからMPガリガリ減るし。


 魔晶石の粉末こと【魔力増強剤】は珠の材料として使うことはもとより、MP節約のためにバンバン使うし。


 安全マージンとるなら1個作ってしばらく様子見がいいと思う。そうしよう。




 【混沌の魔宝珠】の作成に没頭するがあまり、完成して気付いたときには翌日の朝を迎えていた―――――――




お読みくださりありがとうございます!


話が思ったよりも進まなかったです(´・ω・`)


女魔法使い:「私の出番少なっ⁉」

盗賊スカウト:「名前すら出てねぇし」

作者:「再登場の予定あるから許して(・д・`;)」

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