2話
その日ぼくは夢を見た。そして記憶が戻っていく。
(あぁ。そうか。戻ったんだな俺の記憶。)
「そう。戻ったぞ。ふむ。状況確認を一応しておこうか。」
(えぇ。プルートさん。)
*******
俺は瑠衣、門倉 瑠衣。大学生だ。なぜか今日はとてつもなくだるかった。
(ん?最近は徹夜してなかったのになぁ。)
そんなことを考えながら歩いていると、工事中のビルの屋上から鉄骨が降ってきた。
もちろん、考え事をしていたため、頭上に鉄骨が迫ってきているのにも気がつかず、あっけなく死んだ。
(ん?ここは?)
「ここは死後の世界、冥界やら黄泉の国やら色んな呼ばれ方をしているが、まぁそんな感じのところへ向かう途中の、いわば道のような場所だ。」
(俺は・・・死んだんですか?)
「あぁ。だが、ちょっと特殊でな・・・おっと、自己紹介がまだだったな瑠衣くん。我の名はプルート。まぁ死者のための神の一柱だ。」
(え⁉そうなんですか?無礼とか・・・)
「我はそんなことを気にするような神ではないぞ。まぁ、あまりにも態度が悪すぎるやつにはちょっとイラッとするがな。」
(はぁ・・・あの、特殊ってどういうことなんでしょう?)
「あぁ、そうだったな。まぁ簡単に言うとお前はこの道をこれ以上進むことはできないのだ。お前は本来、まだ生きているはずだからな。運命がねじ曲がったといえばいいのか、死んでしまった。だからこの先へはどう頑張っても行けないのだ。」
(なぜでしょうか?)
「うーむ。生き霊というのはわかるか?まだ体は生きているが、魂だけ抜けてしまう現象だ。そういうやつが稀に来るからなぁ。まだ死ぬ運命ではないやつをシャットアウトできるようになっているのだ。状況は違うがお前もまだ死ぬ運命ではないため、この先へは進めない。だからといって、体がないから戻れない。そういうことだ。」
(俺は、どうなるんですか?)
「うむ。本当はこの道の先にある場所で記憶を抜き取り、また新しい生を授かるのだが、お前はそれができん。つまり、記憶をもったまま新たな生を授かることになる。」
(転生、というやつですか?)
「厳密にいえば違うが、そういう認識で大丈夫だ。だが、ここで問題が発生した。お前はこの世界にとってイレギュラーなのだ。このままこの世界で新たな生を授かると、お前の運命だけではなく、この世界の運命がねじ曲がってしまう可能性があるのだ。なので、お前には異世界に飛んでもらう。」
(異世界、ですか・・・)
「あぁ。お前の運命をそのままにしておけなかったのは止められなかった我々、神も悪い。これが我々にできる精一杯のことなのだ。ついでにおまえのステータスに若干の干渉させてもらった。多少は上がっているはずだ。」
(ありがとうございます!)
ちょっとそういうことに憧れているとは言えない・・・うん。
「それと、異世界に送ったときの衝撃で3年ほど記憶が飛ぶ。まぁ、その方が混乱せんし、いいだろう。それから記憶が戻ったあとにまた話しかける。最後にもう一度謝罪をさせてくれ。本当にすまなかった。」
(いいんですよ!俺なんかにそんな謝らなくて・・・)
「そうか・・・お前は優しいのだな。」
そう聞こえたと思ったら意識が遠のいていった。
*******
「思い出したか?」
(えぇ。まぁ、可愛い妹もいますし、充実してますよ。)
「それはよかった。この世界はなんでもアリだ。自由に生きろ。もちろん、自分のなかの倫理観や正義感は大事にしろよ?」
(もちろんです!)
「おっと、もう時間のようだ。別の世界に干渉できる時間は少ない。だが、お前と話せて良かったぞ。」
(ええ!俺もです!)
「最後に言っておこう。記憶があることは隠せ。それから、まだ子供のように振る舞えよ。両親が混乱するからな。」
(はい。わかりました。)
「ではな。もしもまた会えたのなら話したいな・・・」
*******
「アーク。朝よ~。」
俺はそんな声を聞いて起き上がる。うん。ちゃんと記憶が戻る前のことも覚えているな。
「はーい。ママ!」
「ついでにベルも起こして~」
「うんっ!」
「えへへぇ・・・」
なんの夢を見てるんだ。口元がにやけきってるぞ・・・
「ベル!朝だぞ!」
「あと3分・・・」
「ダメだ!早く起きないと朝ごはんが冷めちゃうぞ!」
「それはやだ!」
ちなみに言っておくとこの世界の暦やらなんやらは地球と同じようだ。すごく助かる。だが、時計は貴重品らしく、普通の家にはない。まぁ、なぜかうちにはあるのだが・・・
話がそれた。普通の人たちはみんな教会の鐘で時刻を知る。9時、12時、3時、18時、20時だ。まぁ、たぶん、ご飯の時間やら子供が家に帰る時間やらそんな感じだろう。ちなみに気を使ってか、深夜には基本的に鐘が鳴らない。緊急時のみだ。
「お兄ちゃん。行こう。・・・ふぁぁぁぁぁぁ」
(今日のご飯はパンにスープ、それからサラダか。)
ちなみに毎日食材や味は変わる。
(うん。うまい・・・)
そんな幸せな日々が続いていた。
「ねぇ。なんで僕、前回出れなかったの?約束破ったな!」
破ってないですよ。毎回後書きを書くとは誰も言っていません。
「ぶーぶー。出番が減るじゃないか!」
あなたはもともと出番が少ないですよ・・・
「んなっ。気がつかなかった!」
(この神バカじゃねぇの?)
「なんか失礼なこと考えた?」
いいえ?
(エスパーか⁉)
さてさて、今回はこのくらいにして、次回も読んでくれると嬉しいです。 (。ゝ(ェ)・)-☆
「もー。僕怒っちゃうからね~」
だったらなんですか?