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第2話

「ありがとうございます」

「いってくるねー!」


「「パトロール、気をつけてね!」」


エレベーター係の双子天使、アニーとテオに転送してもらった天使のふたりは、パトロールのために現世にいた。


「可愛い人間の女の子いないかなぁ〜」

本来の目的などそっちのけで、にやにやしているのは天使であるアラン。


「…アラン先輩。行きますよ」


溜息をつきながら早歩きをする天使はアリス。


待ってよ〜、とアランは追いかけた。


「天使の女の子にはない魅力が、人間の女の子にはあると思わない?」

「は、はぁ…」


アランはアリスに語りかける。


「最近は若い女の子全然死なないからさぁ〜。こっちの世界に来るのはヨボヨボのお婆ちゃんばっかで萎えちゃうよ〜」

「…先輩、不謹慎すぎませんか?」


ヨハン先輩に言いつけますよ?とアリスが睨みつける。


「わわっ!ごめんなさいっ!…でもさぁ、ヨハンは絶対俺のこと好きだと思うんだよなぁ。いつも厳しいことばっかだけど」


仲間としての好きね!と付け加えるアラン。

アリスは軽くあしらった。


────ドクン


その時、現世の魂が揺らぐ音が二人の耳に入る。


「…アリス!これって…!」

「えぇ、間違いなく悪魔の波動です!」


真面目な顔つきに戻るアランは、その音の方向へと走り出した。アリスも続いて走り出す。








「あ!いたっ!」


アランが走りながら指をさすその先には、今にも悪魔に魂を食べられそうになっている人間。


「くそっ!間に合えっ…!」

アランとアリスはスピードを上げた。


「そこまでです!!」


大きな声で牽制をかけるアリス。アランはそのスピードのまま、悪魔へとキックをした。


「魂を食らうなんて卑劣なこと、これ以上させませんよ!」

アリスは悪魔──レオンたち──を睨みつける。


レオンは小さく舌打ちをしながら、その場から逃げ去った。

お待ちください!とジルダは急いで後を追いかける。ノエルも続けて走り出した。


「おい待て!」

「アラン先輩!!」


追いかけようとするアランを呼び止めるアリス。


「私たちだけで後を追うのは危険です」


アリスはそう言うと、そうだね…、とアランは悪魔たちを見送った。


天使のふたりは、食べられていた人間──遥人──の元へ駆け寄る。


「この人、大丈夫でしょうか」

「だいぶ持ってかれちゃってたけど…」


無事だといいんですが…、とアリスは遥人の頬に手を当てた。


「ん…」


遥人の口から息が漏れる。

魂は食べられていなかったようだと、天使のふたりは安堵した。


ゆっくりと目を開ける遥人。


「…え。うわぁぁぁぁっ!!」


遥人はすぐに触れてしまいそうな距離にいる少女──アリス──に驚き、転んだ。


「いててて…」


遥人は、腰打った…、と呟く。


「あれ?もしかして俺らのこと見えてる?」

「まさかそんなはずは…」


普通、人間が天使を見ることはできない。しかし────


「だって、アリスのこと見て驚いてたじゃん」

「…ですが」


「あのー」

遥人は目の前にいる2人──天使──に声をかけた。


「ほら、話しかけてきたよ!」

「別の人間に話しかけてるんじゃないですか?」

「周りに人間なんて、この人以外にいないよ!」


この人は孤独なんだ!と力説するアランに、アリスはあたりを見回して、まぁ確かに…、と答えた。


「あの!…誰、ですか?」

遥人は再び二人の天使に問いかける。


────…。


「「やっぱり、見えてる!!」」


アランとアリスは顔を見合わせ叫んだ。


「ど、どうしましょう…!」

焦るアリス。

アランは、俺に任せて!と声をかけた。


「俺は天使!!」

唐突にそう言ったアランに、は?、と首を傾げる遥人。アリスも盛大なため息をついた。


「見てよこのオーラ!どこからどう見ても天使でしょ?」


形容し難いポーズをとるアランに、遥人は冷たい視線を浴びせる。


「…警察呼びますよ?」

「あぁ!ごめんごめん!それはめんどーなことになるからご勘弁を!」


両の手のひらを合わせるアラン。見るに耐えなくなったアリスは遥人の元へ歩み寄る。


「私たちが見えているとなると…。なにか、体に異常を感じる部分はありませんか?」

「え?あ、いや、大丈夫です…」

「そう、ですか」


────…。


「へ、あ、えっ?」


確かに何もお変わりはありそうにないですね、とアリスは遥人の身体のあちこちを触った。

女性に慣れていない遥人は、その恥ずかしさに顔を逸らす。アランは遥人のウブな反応に、顔をにやけさせた。


「…顔が赤くなっていますが、熱っぽさはありますか?」

「だだだだだ大丈夫です!!!!」


飛び退く遥人。

にやけるアラン。



「んー、魂を完全に食べられたというわけではなさそうですが…。一度、先輩方のもとへお連れした方がいいかもしれませんね」

アリスは腕を組みながらそう呟く。


「この状況で放っておくわけにもいかないしね」

「エレベーター係、呼びますね」


そう言ってアリスは、電話のような機器で通話を始めた。


状況が理解出来ないでいる遥人の肩に、アランは手を乗せた。


「…なに?アリスのこと、気になるの?」


アランはそう言いながらアリスを見つめる。


「お目が高いねぇ」

「べ、別にそんなことねえよっ!」


そう言った遥人の頬は赤く染まっていた。




通話を終えたアリスは、すぐに来れるそうです、とアランに伝えると、よかったー!と微笑んだ。




さっきから何の話してんの?と遥人はアランに聞くも、行けばわかる!!などと押し切られ、その場に立ち尽くしていた。


しばらくすると、人が1人入れるサイズの大きな箱を運んでくる小さな子供が2人。


「「お待たせしましたー!」」


ふたりは声を合わせて遥人の目の前に箱を設置する。


「アニーさん、テオさん。いきなり呼び出してしまってすみません」


そうアリスが頭を下げると、大丈夫だよ!とツインテールを揺らした女の子──アニー──が笑った。


「運ぶのはこの人?」


もうひとりの子供──テオ──が、遥人を指さす。


「ほんとに私たちが見えるのー?」


アニーは遥人の前で動いた。テオもアニーと同じように動き回る。


「まぁ、見えるわけないよね!」

「そうだねー!」

「見えてるけど…」

「「うわぁ!びっくりしたぁ!!」」


アニーとテオは驚き、アリスの後ろへと隠れる。


「おそらく、悪魔に食べられかけていたことが原因だと思います」


マノン先輩のところまでお願いできますか?とアリスは言うと、わかりました!とふたりは声を合わせていった。


「ほら入って!」

「早く早くー」


アニーとテオは遥人を箱の中へ押し込む。


「ちょっとだけ、中でじっとしててくださいね!」


「え?ええええええええ?!」


そういってアニーとテオは箱に手を翳すと、遥人は身体が浮かび上がるような感覚に襲われた。


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