走れダイジロー①
・・・んっ、・・・んしょ!
朝のさわやかな青空をつかみ取るように、
踏み台から思いっきり手を伸ばせば、なんとか物干し竿に届く。
本日の洗濯物を干し終えて、紅白少女はふんすと意気込んだ。
少し前までは踏み台を使っても届かなかった高さだった。
どうやら少しづつとは言え、このちっぽけな身体も成長しているらしい。
・・・ふふ
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、今度は足取りも軽く庭先の井戸へ。
洗濯に使ったタライの水を捨てると、今度は台所に使う水を桶に汲まなければならない。
どれもこれもその少女、ルイにとってはなかなか大変な仕事だが、望んでやっていることだ。
それは一カ月ほど前のある夜のこと。
「え、大きくするにはどうすればいいか?」
顔を真っ赤にしながら、ルイは恥を忍んで家主であるハルミに相談した。
身体というかその一部というか、その”大きさ”についてだ。
”大きくなるには”ではなく”大きくするには”と言う点が少女の切実さを際立てる。
それに対するハルミの回答が「よく食べてよく動いて良く寝ることね」。
だから身体を動かすために、本来は当番制のはずの仕事を半ば強引に引き受けることにした。
「まあ日ごろ踊りまくってるルイちゃんは大丈夫よ」と付け加えられた言葉は、両手で耳をふさいで聞かなかったことにした。
まことに不都合なことにあの青年は、どうやら大きいのが好きらしいのだ。
もちろん自分にはまだまだ将来性が、そしてまだまだ可能性がある。
それでも出来る努力なら今のうちから何でもやっておきたかった。
今から頑張れば、妙齢になる頃にはきっとハルミに匹敵するものに育つに違いない。
なんせ普段から同じものを食べ、同じ仕事をして、同じ寝床で寝ているのだから。
ルイは改めて、有益なアドバイスをくれたハルミに感謝するのであった。
そんなハルミに来客があったのは、その日の昼過ぎ。
「あらシズカ、ひっさしぶりじゃない! とりあえず上がんなさいよ」
という家主の声で招き入れられて居間に入ってきたのは、絶世の美女であった。
同性のルイですらごくりと息をのむほどの。
「ほんと久しぶりねえ。 怪我したときのお見舞い以来だけど足は大丈夫なの?」
「ええ、おかげさまで普通に生活できるくらいには。 今は運営側として働いてるわ」
「良かったじゃない! シズカは昔から走るのひとすじだったからねえ」
そう言って豪快に笑うハルミとは対照的に、美女は口元に手を当ておしとやかに微笑んだ。
切れ長の目に鼻筋の通った清楚な相貌と、スラリと長い手足のスレンダーなモデル体型。
なにより真っすぐ腰まで流れて切りそろえられた、輝くような栗色の髪。
居間に突然現れた美人を前に、ルイは元よりギンガすら言葉を発し得ないでいた。
「それよりハルミ・・・」
その美人が微笑みをたたえたまま、事態の呑み込めないでいる二人に視線を送る。
ギンガはどきりと固まり、ルイは気恥ずかしさに思わずうつむいた。
「そうそう、この二人は冒険者仲間よ。 そっちがギンガでこの娘がルイちゃん」
「はじめまして、シズカと言います。 突然おじゃましてごめんなさい」
そう名乗った美女が笑顔で会釈をする。
「あ、は、はい。 よろしくお願いします」
ギンガはガチガチのまま辛うじて返事をするが、ルイはあまりの衝撃に動けないでいた。
うつむいたまま、わずかに頭を下げて会釈するのが精一杯であった。
いっぽうのシズカも、ルイの顔や格好をまじまじと眺め、不思議そうな表情を浮かべる。
ひょっとしたら郊外河川敷にそびえ立つ巨大踊り巫女像を知っているのかもしれない。
「シズカはね・・・。昔の友達っていうか・・・、なんなのかしらね私たち?」
「ええと・・・・、ライバルじゃないかしら?」
そんな呑気な会話を交わしながらお茶をすする二人を前に、ようやく衝撃から立ち直ったルイは改めて考え始めた。
それにしても綺麗な人だ。
ほっそりと引き締まった身体に、大人びた物静かな雰囲気。
背筋がピンと通っている様子から、どこか芯の強さもうかがい知れる。
けっして派手さのない身体つきなのに、先ほどから目を引いて離さない。
ルイはその美人に、自分の理想の完成形を見た気がした。
そもそもの話、はなから無いものを望むのが間違っているのではないか。
それよりも元からの持ち味を生かすべきなのでは。
横目に青年の様子をこっそりうかがうと、鼻の下を伸ばすのも忘れて呆けたように見惚れている。
少女は密かに、テーブルの下で決意のこぶしを握り締めた。
そんな小さくとも鋼のように固い決意など気付くことも無く、ハルミたちの会話は本題に移る。
「ところでシズカ、 なんか用事があったんじゃないの?」
「ええ。 ハルミ、あなたにお願いがあって。 実はね・・・」
「それってまさか、フットレースのお誘いじゃないわよね・・・?」
頬をひきつらせるハルミに、
「あらハルミ、話が早くてよかった」と、シズカは微笑んで首肯した。
「実はね、王国競技場開場三〇〇周年記念としてエキシビジョンレースが開かれるのよ」
顔をひきつらせたままのハルミを余所に、シズカはテーブルの前に一枚の紙を広げた。
ルイやギンガが思わずのぞき込むそれには、沢山の人名らしき羅列と、その下には謎の数字。
一番上には”歴代フットレース出走者人気投票女性部門”という見出しの文字がでかでかと踊っている。
話の流れからハルミの名前が表中にあるのでは、とギンガは探すが予想に反して見当たらない。
「ほらここ、人気投票堂々の第十位。 こんなに多くのファンがハルミを待っているの」
シズカの綺麗な指先に釣られて見ると、そこには”エビルプリンセス”という謎の表記。
下の数字は軽く四桁を超えている。
集計表をさらにハルミの方に寄せながら、シズカがずいっと身を机の上に乗り出した。
その気迫に押されてか、苦々しい顔で思わず横を向いたハルミ。
視線が、もの問いたげなルイとギンガの視線に捕まる。
「なあハルミ、さっきからなんの話なんだよ。 さっぱりわからないんだが」
「・・・ハル姉」
「あはは、ええと、あのねえ」
さすがのハルミもついに観念して、渋々と過去の悪行について話し始めるのであった。
「私が使う”ランナー”のスキルって知ってるでしょ?」
「ああ、逃げる時によく使う・・・」
記憶を遡れば、地下墳墓から逃げる時やルイを担いで大蝉から逃げる時にハルミが使っていたあれだ。
逃げ足も速くなるし物の運搬も容易になりそうなので、自分にもあったらいいなとギンガは思っていた。
「それを持ってる人なら参加できる”フットレース”っていう競技があってね」
話によると競技場という場所でおこなう、徒競走のようなスポーツ兼ギャンブルだそうだ。
レースごとに定められた距離において選手は先着を競い、観客はそれを予想して金を賭ける。
それはおそらく人類最古の競技の一つであり、同時に賭け事の対象の一つであったことは想像に難くない。
異世界でもやってることは結局同じかと、ギンガはかぶりを振るう。
違う点を挙げるとするならば、選手自身の持つスキルや強化魔法の使用が許されることくらいか。
「で、ハルミはそれに参加してた、と」
「まあちょっと・・・、かじった程度なんだけどね」
人差し指で頬をかきながら、ハルミが乾いた笑いを返すが・・・。
「狐火杯一位、天狼障害一位、淡雪賞一位、王都優駿一位、星月賞二位」
微笑みを絶やさずに、いやむしろ楽しそうにシズカがつらつらと言葉を紡ぐが、その目は鋭い。
「通算戦績十戦九勝は大したものよ。 悪事姫さん」
えも言われぬほどの迫力が、わずかに開いた眼球に宿っていた。
「はい・・・。 その節は大変お世話になりました」
肩を落として深々と頭を下げるハルミ。
それを眺めながら、ギンガは腑に落ちないでいることを尋ねてみた。
「なあハルミ。 フットレースだったか? お前がスポーツやるなんて意外なんだが」
そうだ、この女はひとつの物事に熱心にのめり込むやつじゃない。
よりにもよってスポーツ? なにかの冗談だろう?と。
となりのルイも、コクコクと何度もうなずく。
「それは・・・その・・・」
言葉を詰まらせたハルミに代わり、またもシズカが言葉を紡いだ。
「”ランナー”というスキルにはね、追加スキルがいくつも存在していてね」
「なるほど全部わかった」
ギンガがポンと手を打ち、となりのルイも再び何度もうなずいた。
走るという行為。
これは脚を持つ多くの陸上生物にとって最重要の移動手段である。
人間にとってもそれは例外ではなく、二本の足で前へ前へと進んできた。
切っても切り離せないその動作は、同時に多くの技術発展へとつながっていく。
速く走る技術、長く走る技術、悪路を走る技術、荷を担いで走る技術などなど枚挙にいとまがない。
当然ながらそれは、この異世界において様々な”スキル”へと昇華していった。
「そういった追加スキルを組み合わせていくことで”ランナー”の効果が強化されるの」
「俺の”吟遊詩人”に”伴奏”が加わったようなもんか」
走り方にもいろいろあるもんなと、ギンガは納得する。
それと同時に、その当時ハルミが起こしたであろう出来事の推測も沸いて来た。
「ある日、ランナー関係のスキルを全部取りたいって、ハルミがRFAに推しかけて来たの」
やっぱりこのパターンだ。
果たして、彼の脳裏に浮かんだ予想は的中していたことがわかる。
これがギャンブルなら大当たりもいいところなのだが。
「聞かなくてもわかるんだけどな・・・」
そんな呟きをよそに、語り明かされたシズカの昔話を要約すると・・・。
スキル目当てで強引に選手寮に入寮したハルミ。
その世話を押し付けられたのが、同室となったシズカだった。
練習もそこそこに、シズカに少し遅れるかたちでデビューしたハルミは破竹の勢いでレースを勝ち進み、新人王争奪戦線へと参戦。
それまでノーマークだったハルミは戦線を散々に荒らし回り、スキルの取れるタイトルを片っ端からかっさらい続け・・・。
スケジュール配分すら考えない無茶苦茶な連戦を経て、とうとう最有力選手の一人へとのし上がった。
短距離から長距離、平地から障害競走までなんにでも喰い付くその姿から、付いたあだ名が悪事姫転じて”エビルプリンセス”。
数年たった現在でもフットレース界隈で語り継がれる珍事である。
「お前、スキルがかかるとほんとに何でもするのな」
「・・・ハル姉」
となりで未だペコペコと頭を下げ続けるハルミを、ギンガは今更ながら呆れた目で見る。
ルイですらかなり引き気味の面持ちで黙りこくるほどだ。
しかも悪事姫の悪行にはまだ、最大最後の一発が残っていた。
「ところがハルミったら星月賞で私に負けたその日に、いきなり引退しちゃったの。 寮に置手紙ひとつ残して」
「は? いきなり辞めたのか? 最有力選手にまでなっておいて?」
ギンガは思わず耳を疑った。
彼は小学生のころ少年野球に通っていたのだが、補欠の身ですらチームを辞めるときにはずいぶんと気を回したものだと記憶している。
個人競技とはいえ、組織に所属している最有力選手がそんなことをしていいのだろうか。
「だって・・・だって・・・」
絞り出すようなハルミの声。
「三冠王も無杯王者も取れなくなったんだから仕方ないじゃない!」
そこには、未だ無念と後悔冷めやらぬ想いが見て取れた。
かたや三冠王とは、淡雪賞、王都優駿、星月賞を勝つこと。
かたや無杯王者は、新人王戦線を無敗で勝ち抜けること。
両方とも特定の条件を満たしたときにのみ獲得できる、ランナー系統最上位の超レアスキルだそうだ。
なるほどレアスキル獲得の目が無くなればすっぱり辞める。
なんともハルミらしい所業と言ってしまえばそれまでなのだが、巻き込まれる者の苦しみはギンガとルイも良く知っているだけに擁護は出来ない。
「それでファンがどんなにがっかりしたか。 関係者がどんなに苦労したか」
言い聞かせるようにシズカが続ける。
「本当に! 本当に済みませんでした!」
「最優秀年度代表選手賞まで辞退するし・・・。 この依頼はその穴埋めも兼ねてるの」
「・・・はい。 ・・・わかりました」
先程からコメツキバッタの如く頭を下げ続けるハルミを見るに。
どうやらシズカの持ち込んだ依頼とやらを断ることは難しいようだ。
ギンガに出来るのは、あまり面倒なことにならないことを祈ることだけだった。
しかしまあ、用があるのはハルミ個人に対してのようだし、どんな厄介ごとであったとしても俺とルイは無関係かとも思う。
しかし忘れてはいけない。
この女は転んでもただは起きない鉄面皮だということを。
「ところでシズカ、いくつかお願いがあるんだけど」
画策の色がギラリと光る瞳を隠すように、頭を下げたままだったハルミがゆっくりと顔を上げる。
「私は第一〇レースに出るわ。 現役選手と戦うのはさすがに荷が重いもの」
「え、でも・・・」
予想外の提案に困惑の表情を見せるシズカ。
それほど腑に落ちない提案であった。
RFAが王都郊外に構える”王国競技場”。
そこのレース開催日には順番に十二のレースが行われるのだが、メインイベントとなる大レースは十一番目に行われるのが常だ。
その前座が第一〇レースであり、当然ながら注目度も難易度も賞金も大きく変わってくる。
いまだ根強い人気のあることが証明されているエビルプリンセスことハルミが、本命レースを避けて前座レースに出ることに観客は納得するだろうか。
はたまたRFAの収益に与える影響は。
「あなたのために一枠確保しておいたのに・・・」
困惑から苦渋の表情に変わりかけたシズカを安心させるように、ハルミは言葉を続ける。
「大丈夫だって! 十一レースには私より速くて強い娘が出るんだから」
そう言ってルイの肩にポンと手を置いた。
「・・・へ?」
話をあまり理解できていないらしい紅白少女の声が、静かに居間に流れた。
ルイとギンガが厄介ごとに引きずり込まれた瞬間であった。
『速い速い! その轟脚はいまだ衰えず!』
晴れ渡った青空の下、拡声魔法による実況アナウンスが王国競技場にこだまする。
『最終コーナーで先頭に躍り出た悪事姫! なおも差を開く!』
多くの観客が歓声を揚げるなか、コースの先頭を突っ走っているのは・・・。
『まさに千里を走る悪事姫! 圧倒的強さで今ゴール!』
いつものエプロンドレスではなく、漆黒のドレスをまとったハルミであった。
見栄えのためかごてごてと飾り付けが施されているが、軽くて空気抵抗も少なく動きやすいとはハルミ自身の談。
ギンガから見れば、某歌劇団みたいだと思うような出で立ちであったが、それであの速度を出せるのだから嘘ではないのだろう。
結局ハルミはレース序盤から有利な位置に陣取ると、最後にあっさり先頭を抜いてゴールしてしまった。
観客席正面に設置された超大型モニター、魔法によって白板に投影するらしい、には「一着:悪事姫:大差」の文字。
そして漆黒のドレスをなびかせながらゴールを通過する、ハルミの華麗な映像が映し出されている。
「・・・かっこいい」
ルイは思わずつぶやいた。
『第一〇レースではまさに敵無し! まるで現役と遜色がない強さでした!』
『やはり十一レースに出て欲しかったですねえ。 願わくば現役復帰も』
『しかし出走は今回限りとのこと。 なんとも残念です』
一〇レースの興奮いまだ冷めやらぬアナウンサーと解説役が悪事姫について盛り上がっている間に、当の本人が部屋の扉を開いた。
ギンガやルイが現在いるのは王国競技場の応援スタンド近くにある貴賓室の一室。
ハルミが出した”お願い”のひとつが、他人の目に付かない部屋を用意することであった。
「あああ、疲れたあ。 まったく錬金術師にこんなことさせないでよね」
ハルミは部屋に入るなり、ソファに大股でどかりと座ってボトルの水をラッパ飲みする。
巨大モニターに映った雄姿がまるで詐欺広告のようだとは思ったが、ルイは黙っていた。
「圧勝じゃないの。 現役選手とは荷が重いとか言ってたくせに」
不満気に言ったのは、同じく貴賓室でレースを見守っていたシズカだ。
現役引退後はRFAの職員として働いている彼女は本日、悪事姫ならびに”その弟子”の付き人として貴賓室に配属されていた。
早い話が、逃亡した前科のあるハルミの監視役だ。
「勝ったんだからいいでしょ。 もう終わったんだし」
「それで次のレースなんだけど・・・、本当に大丈夫なの?」
シズカのその質問は、もう何度目かであった。
隠しきれない不安げな様子は無理も無い。
ハルミが自分の代わりにと推挙したのは、紅白衣装の小柄な少女だ。
控えめに言っても脚が速そうには見えない。
しかも前座でハルミが圧勝してしまったために、本命レースで少女が下手なことをしてしまうとどうなることか。
そのことを考えて青ざめるシズカをよそに、ハルミは飄々と答えた。
「大丈夫だって。 ルイちゃん、さっきのレース見てたわね?」
「・・・うん」
「だいたいあんな感じで走ればいいわ。 先頭の後ろについてって最後に抜かすの」
「・・・わかった」
ルイはうなずく。
彼女にしては力強いうなずきだ。
その目には強い決意を感じさせる光があった。
正直なところ乗り気ではなかったのだが、青年の歌に釣られてやってきた競技場。
そこで目の当たりにしたのは、煌びやかな衣装で大観衆の注目と歓声をその身に浴びるハルミの姿だった。
ルイは、かたちこそ違えど大舞台で踊りを披露することに通づるものを感じたのだ。
願わくば、自分もやってみたい、と。
それにしてもやはり惜しいのは、ハルミの纏う衣装だ。
ハルミに限らず、さっきのレースに出ていた他の選手たちも実に綺麗な格好をしていた。
シズカの説明によるとフットレースに出る女性たちは、勝負衣装というものを着るのだそうだ。
自分も着たいと思うのは女の子なら当然のことだし、まして今回は沢山の観客が見守る大舞台。
いつもとは印象の異なる服を着れば、あの青年はどう思うだろうか、と。
現にサイズの合う衣装を見繕うとシズカが申し出てくれたが、残念ながら断るしかない。
この巫女装束を着ていてこそ、ルイの力が十全に出せるのだから。
「さて、あんたたちそろそろ準備しなさいよ」
「そうだな。 ルイ、準備はいいか?」
二人に声をかけられ、ルイは我に返る。
未練を頭を振って外に追いやると部屋の中央に歩みだした。
待ちに待った出走準備が始まる。
青年の歌が始まるのだ。
足場をととんと踏み確かめると、ふんすと意気込んだルイ。
それを確認すると、軽快な弦楽器の演奏に乗せてギンガは歌い始めた。
これから始まる猛レース ひしめき合って居並ぶは
稀代の名駿最強馬 競馬の祭典めでたいな
走れ走れダイジロー ターフもダートも駆け抜けて
走れ走れダイジロー 掻き込め飲み込め喰らい付け
それが後に語り継がれる、伝説の第十一レースの幕開けであった。




