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刻の繭

 ゴゴゴゴゴ!!


 大地を割り、そそり立つ姿。

 起こした上半身だけでも悠に40メートルは超える真紅の巨体。

 劇中に描かれた機械巨人イデヨンそのものである。壇上に露出していたのが異世界召喚装置の一部分だったのか、それとも装置がルイの力によって増幅され、このような巨体になったのかはわからない。それでもルイを連れ去った左腕に続き、頭と胸部、そして現れた右腕はその手のひらに眼鏡を乗せて上空へと運ぶ。

 胸に輝くイデヨンゲージはその光を増し、頭部のカメラアイには流星群のような光点が無数に流れる。

 かくして世界に滅びを与える巨神は、異世界に覚醒を果たした。



「上方、障壁を展開! 急げ!」


 神官長が叫ぶと同時に頭上に結界を発生させる。頑丈な石造りの召喚棟ですら耐え切れず、その壁と天井が崩落を始めたのだ。しかしさすがは王宮勤めのエリート神官たちと言うべきか。神官長に続き一糸乱れぬ動きで神官たちが発生させた多重障壁は、落下してくる石材や木材を受け止め、次々に他所へと跳ね除けていった。


「ルイは!?」


 ようやく落下物と土煙が収まり、ギンガはルイの姿を探し求める。

 王城の広い敷地内。すでに召喚棟は跡形もない。見上げる空には依然と地を睥睨している巨神の上半身。背後には、飛竜襲来の晩とよく似た月が浮かんでいた。右手にはその指にしがみ付きながらも薄気味悪い笑顔を浮かべた眼鏡。そしてようやく左手にうずくまったルイの姿を見つける。地上からは15メートルと言ったとこだろうか。


「い、い、いいぞイデヨン! その力を見せてやれ!」


 グオオオオ!!


 眼鏡の命令と伴に巨神が雄たけびをあげ、胸元のイデヨンゲージから電光石火の一撃が放たれる。その光線は夜空を切り裂き、上空の何もない空間を破砕。いや正確には、その場で異世界との隔たりを破砕したのだ。地上100メートルほどの高さ。空にぽっかりと空いた穴は、劇中でいうところの逢魔ゲート。異世界とのトンネルである。


「見ろ! 逢魔ゲートが開かれた! 本物だ! 本物のイデヨンだ!」


 眼鏡の半狂乱の叫びをも塗りつぶし、そのトンネルが轟々と唸る。どうやらハルミ宅での話は真実だったらしい。周囲の空間もろとも魔力を吸い込み、恐らくギンガの居た元の世界へ排出するその姿は、さながらブラックホールであった。


「おい! 眼鏡! もういいだろう!」


「・・・なあ岡崎。 その眼鏡というのは、ひょっとして俺のことか」


「今、逢魔ゲートに入れば、元の世界に戻れる! この世界を滅ぼす必要はないだろう!」


「ふざけるな! 誰があんなクソみたいな世界に戻るか!!」


 ギンガの必死の説得も届かない。眼鏡は口角泡を飛ばして反論する。


「俺は転生がしたいんだよ! 異世界転生だ! この顔も身体も厭き厭きしてんだ!」


「お前・・・」


「お前だって同じ穴のムジナだろう! お前はこの世界でなにか手に入れたのかも知れん。 だがな、だからと言って他人の転生を邪魔する権利がお前にあるのか!?」


 その言葉に思わず口をつぐむ。眼鏡の理屈が間違っているのはわかっているのだが、反論の言葉が見つからない。この世界に来た当初、異世界転生で無かったことを残念に思っていたことは事実なのだ。


「しっかりしなさい! あれと話しても無駄よ。 それよりまずあの歌を止めないと」


 見かねたハルミが駆け寄り耳打ちする。意味の少ない会話を重ねるよりも、行動を起こすべし。行動派を自称する彼女の理念を押し付ける。この土壇場で後悔の残るような言動は、例えパーティメンバーのものであっても許す気は彼女にはさらさらなかった。


「あんたが歌えば、 あの変な歌は消えるか上書きされるんじゃないの?」


「・・・・駄目だ。 複数の歌い手で試したことが無い。 下手したらルイが壊れる」


 新たな歌を歌えば、前の歌の効果は消えるという法則は、あくまで歌い手と踊り子が一対一の場合である。もし複数の歌い手による効果がルイに流れ込んだ場合、その小さな身体がどうなるか保証が出来ない。まして電子の歌姫初音ハクの圧倒的な力を受けて、今なお腰を抜かし動けないでいるルイに、これ以上新たな歌を聴かせる訳にはいかない。


「無駄だね! こうなった以上、誰も俺を止められん。 こんな風にな!」


 その直後、眼鏡に向けて巨大な火球が飛来する。会話の隙を突いて狙い撃った神官長の劫炎魔法だ。しかし火球が着弾する直前、巨神の装甲上を滑る様に移動してきた光の円盤によって遮られてしまった。炎と煙が晴れた後には、何事も無く指にしがみ付く眼鏡の姿があった。


「・・・・ピンポイントバリア」


 それは劇中で活躍したイデヨンの防衛機能の1つ。同時に256カ所まで守ることが出来る局所防御用の移動式バリアだ。例えこの場の全員が同時に攻撃したとしても、あの鉄壁を抜くことは出来ないだろう。


 眼鏡の勝ち誇った高笑いが響く中、巨神の左手のひらにうずくまったルイも僅かに動けるようになった。

 相変わらず腰は抜けて全身に力が入らない。ただ声だけは聞こえていたので状況は何となく理解できていた。大切な2人のピンチらしい。こういうときこそ、一番しっかりしている自分がなんとかしないと。そう思って無理に上半身を起こすが、やはり力が入らない。再びヘニョリとつんのめる。


 コロコロ・・・


 白衣の胸元から不意に転がり出したのは桜色の球。月夜の光を浴びて仄かに輝いている。

 それはいつぞや青年が手ずから渡してくれた宝玉。正しくは張り倒して取り返した「巫女の紅玉」。ルイが感情に任せて行動を起こしたのは、あの時が初めてだった。もちろん人を叩いたことも。

 そしてその淡い激情を、ささやかな暴力をあの青年は受け止めてくれた。あの出来事以来、少し前向きになれたのだ。こんなくらいでへこたれるわけにはいかない。紅玉を握りしめると、もう一度身体を起こす。その目が見据える先は、この身体を支配する無機質な歌の発生源。全身にありったけの力を籠める。


「・・・・んぐぅ!」


 カチリ・・・


 音を立てたのは、巫女装束に最近追加された新機能。左手首の時計を模したブレスレットが時間の停止が始まったことを知らせる。そのタイムリミットは5秒。魔法少女の歌による効果が無い今、止めていられる時間はたったのそれだけだ。急がなければ。


「・・・・んがぁ!」


 残り少ないありったけの力で、思いっきりぶん投げた。

 鑑定スキルを持つハルミの話では随分と高い値が付くらしい。その紅玉はゼニ投げスキルの効果を発揮しつつ、停止したバリアのすき間を縫い、一筋の赤い光弾となって眼鏡の持つノートパソコンを粉砕するのだった。


 そして5秒が過ぎる。


 バボン!!


「ぐあっ! なっ!? なんだ!? 何が起こった!?」


 手元のノートパソコンが突然爆発したことに混乱する眼鏡。ギンガたちも、初音ハクの歌声が止んだことに気が付き、なにが起きたのかと注意深く眼鏡の行動を探った。


 この隙を逃してはいけない。

 唯一、ことの一部始終を把握しているルイは叫んだ。

 今がチャンスだから早く歌を歌ってくれ。

 しかし、そう伝えたかった言葉は、依然轟々と唸る上空のゲート、そして巨神の体内から響く機械音によって挟み潰され、彼には届かない。


 負けるものか。


 ルイは身体にほんの少し戻った力をすべて振り絞ると、たった一言に想いを乗せてもう一度叫んだ。



「ギンガ!!」と。



 頭上から降り注いだ声。

 例えどんな騒音の中であっても、ギンガがそれを聞き逃すはずがなかった。

 残念ながら彼は、ヒロインの声援で実力以上の底力を発揮するようには出来ていない。

 ましてや危機的状況や絶体絶命に直面して、都合よく覚醒する隠された力など持ってもいない。

「選択的注意」あるいは「カクテルパーティ効果」という、人に誰しも備わっているスキルを使ったに過ぎないのだ。

 それがせいぜいであり、それで充分であった。


 その言葉を、どれほど待ち望んだことか。

 ルイが名前を呼んだ。初めて名前を呼んでくれたのだ。

 その声から伝わるものは、不退転の決意。

 儚く細い彼女の言葉に、これほどの情熱が籠る理由をギンガは一つしか知らない。


 歌を求めているのだ。

 それはどんな言葉よりも強い声援歌。

 これで踊れなければ男をやめた方がいい。

 腹の底から漲る力をそのままに叫び返した。


「ルイ! 踊ってくれ!」



 魂ひかれて星 あなたが過ごす大地

 青につつまれて 再び生まれ変わる

 原始 ULaLa ULaLa 還れ 無限の刻

 やがて時代をつつむ 輪廻転生



 歓喜にはやる気持ちを乗せ、歌うはスローテンポの美しい曲。

ターンウィングガンダル』のエンディング曲「刻の繭」。


 造り手の意向とは裏腹に、看板コンテンツとなってしまった「自動戦士ガンダル」シリーズの後年の一作。地球人類と月に住む人類との戦争を舞台に、黒歴史の遺産である機械兵器、ターンウィングガンダルに乗って戦う主人公を描いた物語である。シリーズ20周年として作られたその作品。一説には消費者からいつまでもズルズルと続編を求められる現状を断ち切り、ガンダルシリーズを終焉させるために作られたという。


 奇しくもその曲は、ルイの纏う巫女装束『一族の白衣緋袴-刻の繭-』と同じ銘。

 いや、ここまで来て格好を付ける必要などないだろう。巫女装束を鑑定したハルミからその銘を聞いていたギンガが、いつか歌うときが来ると心に留めておいたとっておきの一曲だ。そしてあの機械巨神を止めるためのうってつけの一曲でもある。巫女装束との親和性は火を見るよりも明らかだった。


 巨神の手のひらを舞台に、ルイがクルクルと踊る。さっそくその身体がふわりと宙に舞い上がった。緩やかにたなびく白衣の袖から、広がりたゆたう緋袴の裾から現れたのは七色に輝く光の帯。4本の帯はやがて太さと濃さを増し、蝶のような4枚の翅を形作った。星を守ろうとした怪獣、親友を助けようとした魔法少女、そして平和を求めて戦った少年兵士。そして巫女少女の思いを乗せ、蝶の羽を得た身体が月夜に翻る。


『絶光蝶』


 それは文明の光を絶つナノマシン粒子の翅。主人公機Mターンウィングガンダルに搭載された機械文明を分解消滅させるナノマシン兵器の名前だ。機体名「ターンウィング」もそれに由来した”無へと還す翅”の意で付けられている。劇中に見せるその力は凄まじく、過去の機械文明を消滅させ、無へと還したのも実は主人公機だったという終盤の展開は、ガンダルファンの間で物議を醸しだした。


「馬鹿な! 絶光蝶だと!? ターンウィングだと!? そんなのありかよ! チートだろ!」


 ようやく我に戻った眼鏡が悲鳴を上げる。その間にも周囲を舞い踊る絶光蝶によって、巨神の身体が押し込められ、少しずつ崩れ始めている。


「バリアを集中展開! くそっ! あんなチビ、叩き落してやる」


 眼鏡はどうやら機械操作のスキルによって巨神を動かしているらしい。その命令に従うように、巨人は手隙になった左の腕を、ひらひらと舞うルイ目がけて伸ばす。


 ガチャン!


 しかしその腕がルイを捕捉する前に、どこからか飛んできた小瓶が眼鏡の頭にぶつかった。


「がっ! あ痛っ! 目がっ! な、なんだこれ!? 粉!?」


「おっし、命中! ルイちゃん、狙われてるから気を付けて!」


 その小瓶は割れると、中の粉をまき散らして眼鏡の視界を奪った。投げたのはもちろん投擲スキルを使ったハルミだ。小瓶の中身は、いつぞやルイの巫女装束から発見した謎のアイテム2号こと『巫女の粉塵』。密かに売り払って生活費にしようとポーチの中に入れていたのだが、巨神の腕に狙われ始めたルイを見て思わず投げつけてしまった。咄嗟のことだったが、石でも拾って投げりゃよかったとハルミは少し後悔する。


「くそっ! 余計な手出しを! イデヨン、立ち上がれ!」


 ゴゴゴゴゴ!

 視界を奪われながらも眼鏡が新たな指示を出す。応じた巨神は、激しい地揺れと地鳴りの轟音を響かせながら、埋まっていた残りの下半身を地上に引き抜き始めた。


「やばい! あいつ立ち上がる気だ! みんな逃げろ!」


「こんなんばっかり!!」


 ギンガの呼び掛けとハルミの悲鳴を合図に、周辺の神官たちが蜘蛛の子を散らしたように逃げる。あの巨体の制動に巻き込まれたらひとたまりもない。必死に彼らが距離を稼ぐ中、ついに大地に立った巨神は、全長100メートルの全容を露わにした。そのカメラアイが不気味に輝きながら、王城の尖塔をも超えるほどの高さから地上を見下ろす。


「こ、こ、ここなら手出し出来ないだろう。 ど、どっかコクピットに入る場所は・・・」


 地上からの横やりを避けるため、眼鏡が避難したのは地上80メートルほどの地点。視界がほとんど奪われた今、いつまでも巨神の手のひらに乗っているのは危険だと判断し、胸部にあるはずのコクピットハッチを探そうと身を乗り出す。

 このとき眼鏡は失念していた。視界が奪われ、周囲は先ほどまで地揺れによる轟音が鳴り響いていたため、そのことに気が付かなかったのだ。彼の頭上では、先ほど巨神が開けたブラックホールが轟々と渦巻き、周囲の魔力ごと空間を呑み込んでいたことを。


 あの紅玉もそうなのだが、巫女の粉塵とは余剰エレルギーの結晶物であった。吟遊詩人と踊り巫女、そしてアニソンが掛け合わさって生まれる膨大なエネルギーを使い切れなかったときに、その宿り主を守るためにオーバーフローを起こしたものだ。そしてそれがこの異世界での主要なエネルギー、つまり魔力として具現化したものがその実態である。


「っ・・・・」


 逢魔ゲートが、近付きすぎた魔力まみれの眼鏡を吸い込むのは、声さえ残さぬ一瞬の出来事であった。

 その現場を目撃していたのは地上50メートル付近を飛んでいたルイのみ。その光景にショックを受けながらもヒラヒラとギンガの頭上に飛来する。


「・・・あの人が・・・・穴に」


「吸い込まれたか・・・。 いや、それより先に後始末だ。 急がないとイデヨンが暴走しかねない。 最後にもうひと踏ん張り頼む」


 そういうとギンガは再び歌い始めた。



 始祖に ULaLa ULaLa 孵れ 夢幻の繭

 やがて世界をつつむ 神羅万象

 いつか巡り合う



 絶光蝶が更に大きさを増して、持ち主の居なくなったまま佇む巨神を包み込む。

 奇しくも同じ監督が、時を経て作り出した2つの作品。

 方や新たな世界を開くため。方や既存の世界を閉じるため。

 方や滅んだ古代文明の遺産。方や機械文明を滅ぼした遺産。

 こうして光の繭につつまれた巨神は、そのかけら1つ残さず異世界から姿を消したのだった。


「・・・終わった。 ・・・良かった」


 地上70メートル。巨神を消滅させ、とうとう精魂尽き果てたルイの身体から歌の効果が消える。

 落下し始めるその小さな身体。ムシラのときのように、光をまといゆっくりと降下するほどの余力も残さず使ってしまったのだろう。


「危ない!」

「障壁を!」


 受け止めようとハルミが落下地点に駆け出す。神官たちは障壁を張って落下を緩めようとした。恐らくそれでも問題は無かったのかもしれない。しかしギンガはこればかりは譲れなかった。


「イビルウィング!」


 叫ぶ時間も惜しいと、その声を置き去りにしてギンガの身体が宙に舞う。その背には蝙蝠のような禍々しい羽根が生えていた。スペースシャトルのように真上に飛び上がると、ルイをしっかりと受け止める。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


「ルイ! 無事か!? しっかりしろ!!」


「・・・・ん。・・・羽根」


「ああ、アグレスのおっさんに貰ったスキルだ」


 知らないうちにギルドカードに追加されていたギンガの新スキル「悪魔の力」。

 謎の使い切りスキルは、入手経路が解らず怖くて使えない代物だった。しかしアグレスと再開したことでようやく思い当り、それ以来ギンガは使う機会を虎視眈々と狙っていた。本当なら超音波砲イビルアローや岩をも砕くイビルカッターを格好良く使いたかったのだが、なかなか使いどころが見極められず持ち余していた。そして気力を振り絞って絶光蝶を使う上空のルイを見て、もし危険なようなら助けに行こうと待ち構えていたのだった。

 こういった場合の事前準備と心構えほど肝要なものは無い。とっさにヒロインのピンチを救えるほど機転の利く性分ではないことは、嫌と言うほど身に染みている。そのお陰かこの空中キャッチは予想以上に格好良く決まったような気がした。格好付けついでにアグレスのことをおっさん呼ばわりするが、面当向かってはとても言えないだろう。


 受け止められたルイはその悪魔のような羽根を、絶光蝶とは似ても似つかない歪な羽根をぼんやり眺めると、もう一度青年の名を呼んでひっしと抱き着いた。


 地上に降り立ち、無事ルイを下ろしたギンガのもとにハルミが駆け寄って来た。

 これでまたパーティ3人勢ぞろいだ。仲間ってのはいいなあと感慨に浸る間もなく、襟元をハルミに締め上げられる。


「ギンガ! ちょっとなによその羽根! どうやって手に入れたのよ。吐きなさい! 吐け!」


「お、落ち着けハルミ・・・。 ルイ、助けてくれ~」


 助けを求められたルイは、改めてその背に生えた羽根を眺め、続いて自分の手足を確認する。

 そして先ほどまでそこにあったはずの七色の翅は跡形もなく消えているのに対し、青年の羽根はいまだ健在であることに気付いた。


「・・・・ずるい」


「ル、ルイ! 助け・・・、 ハルミ、死ぬ死ぬ・・・」


「・・ずるい」


 この世界のスキルに関してはいまだ詳しくないギンガだが、ハルミの目の色を見る限り「飛行スキル」というのは余程の価値があるのだろう。首を絞め上げられ、意識を薄れさせながらも考えた。使い切りとはいうもののアローやカッターと違い、イビルウィングは一度修得してしまえば使い放題なんじゃないか、と。最弱ながらも飛行能力を持つ主人公。それは好きなラノベの主人公そのものであった。


「やった・・・。 とうとう、やっと、ついにこの日が来たか・・・」


 歓喜に震えるギンガを余所に、その背中に生えた羽根に興味津々のハルミとルイ。ぶつぶつと気味悪くつぶやくギンガへの尋問をひとまず後回しにすると、その羽根をあれこれと調べ始める。


「付け根のあたりはどうなってるのかしら。 ちょっと引っ張るわよ」


「ずるい」


 ベリッ!!


 こうして女性陣にいじくり回されたギンガの羽根は、ハルミの「部位破壊」スキルの暴発により根元から千切れてしまった。

 言葉にすらならない絶叫が、崩れ去った召喚棟に響き渡るのだった。

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