何故?笑っているの?
私の叔父は、親戚から嫌われていた。
なぜ嫌われてるのかは分からないけど…小さい頃から父に、
「純一叔父さんには、近づいてはいけない。叔父さんは、変わった人間なんだ」
と聞かされて来た。
今日は、そんな純一叔父さんの葬式だ。
死因の詳しいことは聞いてないけど、他の親戚が言うには、どうやら車に跳ねられたらしい。
なのに…。なぜ、葬儀に参列してる人は、みんな笑ってるんだろう?
私の親、親戚、そして…。
叔父さんの親…(私からすれば、祖父と祖母)。
私、頭おかしくなっちゃったのかな…?
なんで、みんな笑ってるの?
葬儀って笑うところだったかな?
「有紀」
父に呼ばれ、父のところへと向かう。
有紀。それが私の名前。
父は少しお酒に酔っているようだ。
頬が赤くなっている。
「なに?お父さん」
「お父さんは、おじいちゃん達と後片付けがあるから。お母さんと先におじいちゃん宅に帰っておきなさい」
と、言って酒を飲み始めた。
(いや…、片づけるって今言ったよね?)
私は心で愚痴りながらも。
「は~い」
聞こえるか聞こえないか分からないほどの声を出し、その場を後にしてお母さんを探すことにした。
―――お母さん、どこにいるんだろう?
「お母さ~ん…」
葬儀場の室内を端から端まで探すことにした。
給湯室、御手洗い、大広間。
母らしき姿は、全然見当たらない。
―――どこかですれ違ったのかな?
と思い、もう一度、同じ場所を探そうとした時だった。
「……お母さん…?」
何気なく、外を見た私の眼に入ってきたのは、一人で花壇の前で、しゃがみこんでいる母だった。
―――どうして、一人で外なんかに…。
私は、母の元へと急いだ。
「お母さん」
しゃがみこんでいる母に私は、ゆっくりと近づく。
母との距離が近づくたびに、鼻をすする音が聞こえて来た。
―――お母さん、泣いてるの?
「………お母さん」
もう一度、母を呼んだ。
「・・・有紀。どうしたの?」
母は、何事もなかったように私のほうを見る。
「どうしたの?は、こっちだよ。どうして、一人で泣いているの?」
「それは…」
「お父さんがお母さん達と一緒におじいちゃんの家に帰りなさいって」
母の答えを聞く前に私は父に言われたことを母に言った。
「わかった。有紀はおじいちゃん達に挨拶してきなさい。お母さんも後でいくから」
さっきとは違い、凛とした声で私に言う母は……違う人に見えた。
「うん」
私は、言われたとおりにおじいちゃん達がいるであろう場所へと向かった。