表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

はじまりのお話

5月8日、月曜日。


基礎英語の講義が始まってすぐのことであった。隣に座っていた成川に話しかけられた。



「最近いつも一緒にいる子ってもしかして彼女さん?」


「ん、あーまぁそんなとこだ」


「へえ、後で話聞かせてよ」


「はいはい」


「絶対だからね」



そういうと彼女はくるくるとペンを回し前を向きなおした。


真っ赤な嘘だった。彼女が言ってるのは凪澤茜のことだろう。彼女とは小さいころからの友人、言うならば幼馴染だ。わけあって数日前から一緒に住んでいる。じゃあなんなのか、そう思うだろう。それを説明するためには少々時をさかのぼらなくてはいけない。



4月28日、木曜日。


彼は自らを神と名乗った。20代後半くらい、髪は今起きました、とでも言うように寝癖でボサボサ。ロングTシャツにジーパンという格好だった。正直胡散臭かった。そしてここは僕の部屋だ。不法侵入である。



「あなた誰ですか、警察呼びますよ」


「神だってんだろ。まぁ座れよ」



目だけがきらきら輝いていたのはちょっとむかついた。今思えば奇妙な安心感があったのは確かだった。危機感はなぜか感じていなかった。1限の講義が終わり、そのまま家に帰ってきてドアを開けたら彼が部屋にいた。僕の家はワンルームのアパートで、玄関からまっすぐ廊下が伸びていて、その先にドアがあって部屋がある。そのため、途中のドアが開いていれば玄関から部屋が見えるのであった。


僕は常識に従ってそっと玄関のドアを閉める。ポケットに携帯電話がはいっているのを触って確認。ひとまずその場を離れようと後ろを向いたところで、気づいた。自分が立っているところ以外、床がないのである。まるでそこだけ切り離されたかのように灰色空間になっていた。僕はここで初めて危機感を覚えた。正直怖かった。手を伸ばすと見えない壁のようなものにあたった。思い出したように携帯電話を取り出すと当然のように圏外である。


「いいからこっち来いって」


ドアの向こうから自称神の声がした。「ああもう」僕は諦めてドアを開けて神と対峙した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ