02
暗くじめじめしとした空間に、どこからか水の滴る音が木霊す
その水音の合間に少女のうめき声が混じった
ごつごつざらざらとした汚れた床に露出の多い傷だらけの肌が擦れる
嬲られすぎて破れた衣服はもはやその機能を果たしてはいない
だが少女はそのことに対する羞恥心を感じるほどの余裕も理性も持ち合せてはいなかった
「おいネロ、お前これやりすぎだろ、さすがに俺でも引くわ」
「カントさんは優しいっすね、いや、こんだけやってもまだ目、変わらないんすよ」
「反抗的な目」そう言ってネロはからからと笑った
馬小屋で縛り上げられて蹴られ続け意識がシャットアウトした後、気づけば地下牢のようなところに私は閉じ込められていた
両手を縛っていた麻縄は解かれていたが、そのかわりより強靭な鉄の鎖が手脚にそれぞれつけられていた
ピッキングでもして逃げてやろうと思っていたがこれではそうもいかなそうだ
そのうちあの黒髪男がやってきて、一方的な自己紹介が始まり
「俺はネロ、ここの地主の一人息子ね、色々あって3年戦争にでなきゃいけないわけ、で、信頼できる下僕を調達中
あ、今から作るんだけどね、お前で」
貴族にしてはひょうひょうとしていて言葉使いも荒い男だが、ところどころの仕草はやはり優雅だった
それから拷問まがいのことが始まった
私は基本的に学がない
識字率がそこそこのこの国で、私は文字が読めないし書けない
「はいはい、これはなんて読むのでしょーか」
「わかん、な」
「はは、絶望的に頭悪すぎっしょ」
間違えたりわからなかったりする度に殴られたり、蹴られたり
意識が朦朧としてきたところで水桶に顔つけられたり
ただ正解すると食べ物を貰えた
最初の方は理性がしっかりしていたのか反抗をしていたが
最後の方になると「覚えたら痛くない」それだけしか頭に残らなくなっていて
気がつくと私は文字をすっかり覚えていた
それから何日そのようなことが続いただろうか
文字だけでなくその他の様々な知識を痛みと共に詰め込まれた
死んでもいい命だと思っていたのに
痛いのだけは堪らなかった
こいつが私を殺すつもりなんてないのはわかりきっている
これ以上痛いのは嫌だった
「とりあえず医務室に運ぶぞ」
「え、いいっすよ、こんな汚ねぇのカントさんに触らせられないっす」
そう言ってもともと私の服だったわずかな布を掴むと、ずるずるとネロは私をひきずりだした
拘束はカントと呼ばれた男が解いてくれた
「とりあえず外に出せるくらいは躾したんで、ね」
「お前はほんと.......ごめんな、お嬢ちゃん」
カントという男が申し訳なさそうにこちらを見る
私のしてきた罪を知っているのか知らないのかはわからないが
こういうやつは信じないほうがいいってのだけは知ってるので
誤るくらいだったら、このひきずるように私を運ぶネロをどうにかしろと言いたい




