01
なんか・・・すんません・・・
この戦争は、大人による、大人のための、子供達だけのの戦争だ
ホープダイアンドという大きな島国で、国家予算に近い額が15年に一度動く
そして、わざわざ他の大陸からここに脚を運んでくる名のある富豪や貴族達
なぜか?決まっている、彼らの目的はただ一つ
見かけだけの恒久平和を叶えてしまったこの退屈でしかたがない世界に、擬似戦争を産み出して遊ぶためだ
赤、黒、白、青の4つのグループに分かれて擬似戦争は行われる
戦員は18歳以下の子供だけ、期間は三年間
人種国籍を問わず、戦争をする意思だけあれば参加可能
勝ち残った軍には、一生豪遊しても余りある富と名声が主催者から支払われる
「んだけど、どう、参加しない?」
「は......?」
薄汚い馬小屋のような場所で、私は雑巾のようなボロ布をまとい寝転がっていた
柔らかい腹の上にはピカピカに磨かれた皮のブーツが乗っかっている
この世界が憎い
親も頼れる親戚もいない私は、この世に生を受けた瞬間から自立することを求められていた
擦り切れるような毎日をおぼつかない足取りで必死に生きる
食い物を奪い合い、盗み、罵言雑踏を浴びながら、それでも、死にたくないと
だけどある日ふと足りない頭で考えたのだ
なんのために私は息をしているのだろうか、と
生きるために?死にたくないから?擦り切れた指先が痺れて涙が零れた、痛い
それからの私の行動は早かった
この世界が憎い、誰でもいいからこの私の惨めさを転嫁させてやる!
生き残るために培った俊敏さと暴力をもって、金持ちの子息や令嬢を襲った
視力を奪い、手足を壊し、声を消した
殺しなんてしない、殺してなんてやらない、殺したら意味なんてない
私と同じような惨めさと不自由さの仲で最後まで生きろよ
こんなことを繰り返していたらいつかは捕まるということはわかっていた
私を殺してやろうと血眼になって襲った子供の親である貴族達が動き出す
惨たらしい最期を迎えることになるだろう私
だけどそれでいい
もう生きるのに疲れていたのだ、命なんて惜しくない、もともと生きているのか死んでいるのかわからないような存在なのだから
だけど、こんな結末は望んでいなかった
「まー俺を狙ったのが運のつきっしょ、諦めて俺についてきて戦争に参加するかー?惨たらしく貴族達になぶり殺しにされるか!
そんなの考えるまでもないだろ?な、俺についてこいよ」
腹の上にのっている革靴が容赦なく私の横腹を蹴り上げた
麻縄で縛られている私は大きな音をたてて衝立にぶつかる
「っ........」
獲物を定め間違えたらしい
にやにやと嫌な笑みを浮かべる背の高い男を見上げる
私が触れたこともないような高価な衣服、端麗な容姿をさらに際立たせる真っ白な肌
漆黒の髪、吸い込まれそうなインディゴブルーの瞳、私とはまったく違う人種
こいつで最後になるだろうと思って襲ったのに、まさか返り討ちに遭うとは思わなかった
「返事は」
逆らってはいけないと、私の第六感がびしびしと訴えかけてきた
この男はただ者じゃない
なんで襲う前にきづかなかったんだ!!伊達にスラムを何年も生き延びてきたわけじゃないだろう!!
男の提案自体は悪いものじゃない、勝てば大金が手に入って、惨めな生活からおさらばできる
しかもホープダイアンドに行ってしまえばもう私を追っている貴族達から逃げずに済む
だけど、ごみくずにもごみくずなりのプライドがある
こんな貴族の野郎に従ってたまるか!!
生にしがみ付く本能に逆らって私は声を張り上げた
「私は誰にも従わない」
「めんどくさいな・・」
コツコツとこちらに近づいてくる男の足音
這い蹲るような体制の私に何発もの蹴りが入る
その度に体が宙へ浮かびごろごろと芋虫のように体が転がっていく
内臓がやられたかもしれない、せりあげる吐き気に絶えながら男を睨み付けた
殺すなら殺せ
「出発する前に躾なおすわ」