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understanding  作者: ryure
剣士さんと王様
2/4

「結局オランのことはどうなのさ?」

「…………どうって」


 質問の意味は分かっているはずなのに戸惑ったように見返してくるティオ。

 ……もうちょっと、ほんのちょっとでいいからティオに「鋭さ」を世界につけてもらうべきだったかなぁ。いや、目つきは悪……じゃなかった、鋭いんだけど、そうじゃなくて。俺はティオの言いたいことがわかるし、うん。多分ね。だからさ……ティオには自覚がいると思うんだ。姉さんには恋なんて知らないで欲しいけど、姉さんの前世はともかくこの世界では年齢的にそうは言っていられないから。


 ティオって可愛い物が好きだったからさ、自分より戦闘的な意味では弱いオランとかに防衛本能が働かないかな、って思ってたんだけどなぁ。でもよく考えたらさっき峰打ちで倒した本日五人目の挑戦者よりは強いし、火薬の魔法では血塗れの戦場を更に彩るし。オランは守る必要があるほど弱い訳じゃないもんな。

 オランに危機が迫ればルチェがなんとかしそうだし。あいつらは意外に仲がいい。というか、「ティオの手を煩わせるな!」とか「魔法を使えよ」とか言って助けに走るのがルチェだし。ティオにはデレデレだけど他の人にはルチェはツンデレだ、奥さんにも。俺には…………止めてほしいけど、オランよりは間違いなく懐かれていると思う。一番はティオでしょ。


「ん、オラン……だよな。友達……じゃないのか?リュートもそうだろう?十年以上も一緒だった友達。今はレッサヴィーラの王。リュートや私の、ある意味では上司で、主君だ。それ以外に何かあったか?」

「………質問の意味から分かってなかったんだね、うん。姉さんならしかたがないよね」


 黄色の目はぱちぱちさせながら不思議そうに言う姉さんに質問が無駄だったと痛感した。

 そうだ、そんな物騒で手に不釣り合いに見える剣なんて置いてさ、姉さんを見た人が勝手に抱くイメージのままに生きればいいんだよ。

 こう、気高く、美しく、優しく……薔薇や百合とか、綺麗な花を愛でて、のんびりお茶を飲んで、オランやルチェや俺よりも強くて優しくてティオを愛せる人と結婚してのんびりしたらいいんだよね。ティオは。そうすればこうやきもきしなくてもいいんだよね…………、でもそんなティオなんて想像もつかない。


「今すぐティオの花婿を探すために大会でも開くべきだと思う」

「……何故大会なんだ」

「オラン、ルチェ、俺に勝てて、もちろんティオより強くて、優しくてティオを愛せる人を探すためだよ」


 途端にティオは底冷えするような無表情になった。…………怒らせて、しまった……?優しい、ティオを?ちょ、ちょっと待て、俺、ティオに怒られたら死んでしまう。精神的にではなく物理的に。ティオ直々に殺されちまう。


「…………、私をなんだと思っている、片割れ」

「……ごめ、ごめんよ」


 流石にそれは酷い、と地を這うような低い声でうなられて俺は縮こまった。怖いよ……ティオ怖いよ……。気持ち悪い時のルチェに近づかれるより怖いよ……。


「…………、そこまで怯えるな」

「ご、ごめんよ」

「……虐めないから、もうちょっとしゃんとしろ」


 思わずティオから距離をおいてその体を突き刺す鋭い目線から逃れようともがいていると呆れた声が上から「降ってきた」。勿論その声はティオのもの。


「え、うわ、ちょ……!」

「何を怯えている?」


 猫のように大きな戸棚の上に軽々と音も立てずに登ったらしいティオはそこから俺を見下ろしていた。


「い、いや……何で登ったのかなって」


 下手なことを言ってもっとティオが怖くなる前に当たり障りのないことを言っておき、それ以上ティオの恐ろしさが強調されないように俺は逃げた。壁に背中が張り付いているけど、これ以上下がれない。


「…………ん、何となく。出来なかったことは可能な限り出来るならやろうとこの世に生まれ落ちた時に決めた」

「………………じゃあ、前世では棚の上には登れなかったんだ」

「いや、これほどまでに跳躍力は無かっただけだ」


 やや感動したかのように足を擦ったティオは満足したように頷くと飛び降りる。また音も立てずに降り立ったティオはへたり込んだ俺の手をとって立ち上がらせた。


「……なあ」

「何?好きな人、いたの?」

「……いや、そうではないが」


 俺が一人で空回りしていただけかと思って聞けばそうではないという。どうすればいいんだよ……。


「いや、な。リュートはそれでいいのか、と思ってな」

「どういうことかな?」


 戸惑いがちに聞けばティオも戸惑ったように自分の顔を指差した。


「自分と瓜二つ、中身は自分の一部と言って他言ではない私が、リュートと同じ男と結婚すれば気分が悪いかと……」

「いやいや、ティオは女の子だからそういうのは考えなくていいよ」

「男女差別は反対だな」


 予想外だった。ティオが気にしていたのは俺の方だったなんて。いくらティオに俺の記憶があろうとも別に気にしやしないのにさ。顔だって、そんなことを言ったら世の中に少しはいるであろう一卵性の男女の双子は結婚できないじゃないか。

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