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「ぇ・・・」
河野羽琉は自分の目と耳を疑った。
『婆医者が死んだ・・・?』
というか、婆医者は本当に存在してたのか。
噂はもはや虎子町の常識となっているので勿論きいてはいたが噂は噂、そんなこと信じたことなかった。
「一昨日、虎子町夕山の麓で地元住民の方に遺体で発見された極めて老齢、推定130歳代の女性は戸籍も身元を証明するものも何も所持しておらず全くの身元不明のことです・・・―」
・・・うん、まあそうだろうな。
「・・・―ただ、皆様ご存知のとおり夕山には婆医者と呼ばれる謎の医者、椿野レイさんの存在が無戸籍ではありますが確認されており、その遺体が彼女のものではないかと推測されます・・・―」
・・・婆医者の存在が確認されているのは現に不治の病に侵された者とその親族が奇跡的に彼女のところにたどりつき、病を完治させて奇跡的に山を下りてきたものがいくらかいるからだ。
『確か・・・それをきいた役人が彼女のところを訪れようとしたけど、みんな行方不明になっちゃってるって話だっけ・・・』
「・・・―検察によると外傷などはなく、死因は老衰とのこと。現在は詳しい身元の究明が急がれています」
・・・老衰、か。
さてそろそろ掃除を始めるか。
さっきまで晴れていた空はいつのまにかどんよりと、雲で覆われていた。