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雪の降る朝

三題噺として「雪」「学校」「電車」の三つのお題で書かせていただきました。千文字の短い文章なのですぐに読み終わるかと思います。

 いつも通りの見慣れた風景が流れていくのをぼんやり眺める。ただいつもと違うのはそこに白い雪が舞っていること。綺麗とはあまり思わない。それに空は灰色で今の私の心を表しているようだ。

「はぁ……」

 口元まで巻いたマフラーからため息が漏れる。雪のせいで電車の本数が減らされ、その影響で車内は普段より人が多い。いつもの定位置である座席と扉の角に体をすべり込ませることに成功しただけマシか。そんなことを考えながら視線をスマフォの画面に移す。

 返事はまだこない。寝てるのかな? そんな気がするが、この時間でそれは遅刻フラグだよ……

 私と違って自転車通学だからまだ家に居られる時間ではあるけど、今日はあいにくの天候。いつも通りギリギリに出ていたら危ないのに……

「はぁ……」

 再びため息が漏れる。視線を窓の外に向ければ一面真っ白になっている。最寄りの駅まで行くまでにも何度か雪に足を取られて転びそうになった。学校に行く途中の坂道が不安だ……

 そんなことを考えている内に電車が学校の最寄駅のホームに滑り込む。学生服の集団に混ざって私も降りる。ホームに流れ込む冷気に体が震え、手を袖の中に隠す。

 手袋忘れたのは辛いな……手が悴むのを我慢してパスケースを取り出し改札を通り抜ける。学生服の集団に紛れ、学校に向かおうとするといきなり手を握られる。

「!?」

「相変わらず手冷たいのな」

 その声を聞いて嬉しさと戸惑いが綯い交ぜになる。何でここに彼がいるのかと……

「何で……?」

「ん? 彼氏が彼女と手をつなぐのがそんなに不思議?」

「そうじゃなくて何でここにいるの?」

「いやー、朝方あまりにも寒くて逆に目が覚めてさ。んで、窓開けたら外は雪じゃん。テンション上がっちゃってさ」

「なにその子ども。バカみたい」

 思わず苦笑してしまう。

「笑うなよ」

 ばつが悪そうにするところがまた愛おしくなる。私も充分バカみたいだ。

「それで何でここに?」

「この雪だしさ、転ばないか心配になっちゃってさ。だからお迎えにきた」

 そういってニカッって笑うのは卑怯だと思う。本当はあまり知り合いがいるかもしれないところで手をつなぐのも恥ずかしいけど、今日は我慢しよう。

「それじゃ、しっかりエスコートしてくれる?」

「もちろん、お嬢様」

 そう言って私の冷えた指に彼の暖かい指がぎゅーっと絡まる。それとは逆に私の顔が緩まるけど仕方ないよね。でもその顔を見られるのは恥ずかしいから左手でマフラーを上げた。



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