第6話:【悪魔とベリータルト】
「あぁ、やはり煎餅には緑茶が合いますなぁ(-д-)」
俺は今、真央お薦めの煎餅屋【三途ノ川本舗】の【地獄に落ちる辛さ!灼熱辛子煎餅。絶賛発売中!】を頬張りながら昼ドラを見ている。
「俺の人生もあとわずかか…(;_;)」
どんなに現実逃避しても虚しさが増すだけだった。
「何だお前、まだウジウジ悩んでるのか。」
お前のおかげでな(-"-;)
「まぁ、なるようになるさ。」
ここまでノーテンキだと逆に安らぐ。…気がしないでもない。
―ピンポーン~
突然、玄関のチャイムが鳴った。
「はーい。」
パタパタと玄関に駆けて行くキュバスの足音。奥さん気取り丸出しか(´-д-)=з
間も無くして話し声が聞こえて来る。キュバスの声のようだ。
「…ちょっと、アンタ誰よ?真央様に何の用(-"-;)?」
トラブルの予感。俺と真央は急いで玄関に向かう。
「あ、真央さんコンニチハ(≧∇≦)!」
そこには真央と同年代位の少女が立っていた。
「・・・・・・誰|(-.-;)?」
どうやら真央には面識が無いらしい。
「初めまして!明日香っていいます。ずっと前から真央さんのファンでした(≧∇≦)」
いやいや、ファンて…怪しさ満開だ(-.-;)
「俺のファンか。どうぞお入り下さい。」
上げるなー――――っΣ(°□°;)!!
明らかに不審者だよっっ!
「待ちなさい。得体の知れない人間を家に上げるワケにはいかないわ。」
さすがにキュバスは冷静だ。
「わぁ真央さんの彼女さんですか?すっっごく綺麗で優しそうで、真央さんにお似合いな人ですねぇ(≧∇≦)」
「婚約者よ。お茶菓子はチーズケーキで良かったかしら。」
(」゜□゜)」アホー――――っ!!
「ダメダメっ!今は何があるか分からないから!今すぐ出て行ってくれないか(-"-;)!」
俺はすぐに明日香を家から追い出す。
「ちょっと!可哀相でしょ。女の子を突き飛ばすなんて!」
キュバスは明日香をかばって間に入る。
「相変わらず馬鹿な奴らだな。」
明日香がキュバスの腕を捻り、後ろから羽交い締めにした。
「痛っ!ちょ、離してよっ(≧ヘ≦)!」
「しばらく静かにしていてくれないか?」
明日香はニヤリと笑いゆっくりとその姿を変えていく。
「はははっ!まんまと騙されましたね。君が女性に弱い事は知っていましたよ。」
アスラはキュバスの首筋に鋭く尖った爪を立て、真央を嘲笑う。
「まさか…悪魔が化けて…(°□°;)」
焦る真央。
「…いや、悪魔でも男でも、やっぱりファンは大切にしなきゃな(*>ω<)」
ファンなワケねぇよっΣ(°□°;)!!
「真央っ!状況をちゃんとよく見ろ。ソイツは敵だ!」
俺の言葉に「え、マジで(-д-;)?」みたいな顔をする真央。
そんなに解りづらい状況ではないと思いますが。
「おっと、真央君もジェダ君も動かないように。キュバス君が苦しむコトになりますよ。」
さすがの真央も、婚約者を人質に捕られては身動きがとれない。
「ふふっ…良い子ですね。ところで真央君、色々すれ違いもありましたが君には感謝しているんですよ。」
「…感謝してる相手にとる行動とは思えないが(-"-;)?」
真央に同意。悪魔としてのプライドが感じられない。
「今日は君達3人をスカウトしに来たんですよ。」
以前、一度聞いたような台詞だ。
「真央、騙されるなよ。俺達が捕まって生きていられるハズが無い。」
アスラが俺を見てニヤリと笑う。
「心配しなくて良い。魔王の秘密は、僕を含め一部の魔族しか知りません。君達がそれを知っている事は黙っておいてあげましょう。」
交換条件…と言うやつか。
「…アンタさぁ、私や真央様を引き抜いて何を企んでるのよ?」
「ククク…真央君なら解るんじゃないですか?我々の目的は、魔王暗殺と魔界支配ですよ。」
魔界支配…真央以外の口から聞くと重い言葉に聞こえて仕方がない。
「断る(-д-)魔王になるのは俺だ。」
(´-д-)=з
…あれ?俺、今ちょっとホッとした?
「…チッ(-"-;)キュバス君が痛い目にあいますが、それでも良いのですね?」
キュバスの首筋にうっすらと血が滲む。
「真央様。…私の全てはアナタのモノです。私に構わず撃って下さい。」
キュバスは微笑みながら真央を見つめている。
真央は小さく頷くと銃口をアスラに向けた。
「待てっ!キュバス君に当たったら彼女もただではすまないぞっ!」
驚いた表情のアスラを無視して、照準がキュバスの胸の中央でピタリととまる。
「真央様…愛しています。」
「俺もだよ…キュバス…」
真央はキュバスと見つめ会ったまま、引き金に指をかける。
「真央っっ!!ダメだ!撃つなっ!!」
俺の声よりも先に、真央は引き金を引いていた。乾いた発砲音がコンクリートに反響する。
次の瞬間、俺の目に飛び込んで来た景色は銃口から上がる煙、地面に落ちる薬莢、そして、胸元を真紅に染めて微笑むキュバスだった。
「バ…バカな…。」
アスラは、弾丸の通り抜けた胸を押さえて崩れ落ちる。
俺はただ、目の前の出来事を理解できず呆然と立ち尽くした。
「ジェダ!ぼさっとしてんなっ!3つ目の願いだ!!」
真央の声にハッと我に返る。
「キュバスの傷痕を跡形もなく綺麗に塞げ!早くっ、急いでくれっ!!」
頭の中が混乱したまま急いでキュバスに駆け寄り、弾丸の抜けた穴に掌をかざす。
「新田真央との契約により、淫魔キュバスの身体を傷を受ける直前に回帰させる!」
俺が呪文を唱えると、みるみる内にキュバスの傷痕が消えていく。
「キュバス…大丈夫か?」
真央はキュバスを抱きかかえ、銃口をアスラに向けた。
「はい、真央様。何ともありません。」
キュバスはニッコリ微笑む。
破裂音が2回。
空の薬莢が地面を転がり、やがてアスラは動かなくなった。
「本当に申し訳ない!!」
百年に一度しか見ることのできない真央の土下座。
「大丈夫ですよ。この通り傷痕も完全に消えてますし、私の命は真央様のモノですから(*^ω^*)」
多分、本気で真央になら殺されても良いと思っているのだろう。
「ジェダ…お前が居てくれて本当に良かったよ。ありがとう。」
…え(°□°;)?俺、今ほめられてる?
「そうね。アナタが仲間で本当に良かったわ(*^v^*)」
キュバスが俺の肩をポンと叩いた。
「さぁ、今日のおやつはトリプルベリータルトですよ。すぐに紅茶をいれますね。」
そう言ってキュバスは家の中に入って行く。
「仕方無い。今日は大きい方をお前に譲るよ。」
玄関を開けるとベリーの甘い香りが漂って来る。
「・・・・・・・仲間、か…。」
油断すると顔が緩んでくるのが自分でわかる。
「早く来ないと全部俺が喰っちまうぞー!」
「いや!そこは残しておけよΣ(°□°;)!!」
そしてその日、俺の好物に【ベリータルト】が追加された。