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ロックは、こめかみをとんとん叩きながら呟いた。
「ロード・ガルナのルトの泉。アーク・レイのリシアの塔。だが、ミドロルにそんなところあったか?」
美しく……、周囲の人間が恐れる場所……。
ナルシアは、あっと声を上げた。エルアが言っていたではないか。
゛一度、入っては二度と帰ってこれない迷いの森…。そして戻ってこれなかった人間は悪魔に喰われたのだと。この森の近くに住む者は、その言い伝えを信じ……、怯えて暮らしているの。″
「悪魔の森…」
ナルシアは唖然とした。ロックは、その様子に眉をひそめる。
「あんた、何か知ってるのか?」
「あ、あぁ……、ミドロルでレイダート軍に襲われて森の中に逃げたんだけど、僕はそこで不思議な遺跡を見つけたんだ。もしかしたら、そこが゛聖域″だったのかもしれない」
いや、きっとそうだ。ナルシアは奇妙な確信を感じていた。
ならば、あの遺跡で出会った男は、精霊の化身だったとでもいうのか?
足元から、震えだす。
ならば、何故、僕に精霊の声が聞こえたんだ?
ロックは、荷物から地図を取り出すと、テーブルの上に広げた。彼の指の合間では、くるくるとペンが踊っている。
ルトの泉。
リシアの塔。
悪魔の森の遺跡。
ラナテナ全域の広い地図の中から、それぞれの聖域を探り当てると、円で囲み印しをつけていく。
「こうやって地図を見ると、確かに聖域はエンリトを中心にして分散してる。けど……、レイダートの聖域だけ場所がわからないな。誰か知ってるか?」
一斉に皆が首を振ると、だろうなと呟いて、ロックはペンをくるりと大きく回した。
「しかし、交わる地といっても……、ルトの泉とリシアの塔を結ぶ線を辿っていけば、いつかは着くのではないか?」
カルテロはロックからペンを奪うと、地図に直線を引いた。ロックは顎に指をあて、その線をじっと見ていたが、何かに気が付いたかのように指を離した。
「そういえば前に、レイダートの連中が草の根をわけて光脈を探したが見つからなかったって、イルマーク王が言ってたよな」
「あぁ、確か、そんな事を言っていたな」
「もしかしたら、光脈……、その光源というのは封印の地にあるんじゃないのか?」
ロックは地図に指を乗せ、エンリトをぐるりとなぞった。
「レイダート軍は草の根をわけて探したんだぜ。ということはあてずっぽうでわかるような場所じゃないって事だろ?」
それならば……。カルテロは眉をひそめた。
「やはり、四点の聖域を結び、その場所に行かないと、封印の地がわからないと言う事か?」
「おそらくな」
呟くロックに、カルテロは険しい顔を向けた。
「しかし、それならレイダートはどうする? お前、まさかあんな危険な国に行こうとでも思ってるんじゃないだろうな。」
「知るあてもないんだぜ? 行かずに、どうやってレイダートの聖域がわかるって言うんだよ」
「また……、お前は無茶を言う……」
カルテロは大きくため息を吐いた。
地図上のエンリトをナルシアはじっと見つめていたが、力なく首を振るカルテロに声をかけた。
「確かに、ロックの言う通りだよ、カルテロ。封印の地が光源だとするならば、きっと光の暴発と無関係じゃないだろう。レイダートの聖域を見つけ、封印の地へ行かないと、何もわからないよ」
その言葉にカルテロは、血相を変えてナルシアを振り返った。
「ナルシア様まで、何を言っているんです。レ イダートは、あなたの身を狙っているんですよ。それをレイダートへ行くなど……、羊が狼の群れへ、みすみす飛び込むようなものです」
「けど……、他に方法などないだろう?」
「それならば、ナルシア様が行かずとも我々だけで向かいます」
剣幕に押されナルシアは口ごもった。




