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「それでも……、前に進むしかないんだよ」
ロックは素っ気なくそう言うと、顔を背けた。だが、その唇が、微かに震えていた事に、ナルシアは気がついていた。
そして小さく息を吐くと、ロックは立ち上がった。
「俺は、もう行くけど、あんたは、まだ寝とけよ」
「行くって……、何処に……」
「カルテロとパロディアスが、向こうで筏を作ってるからな。そろそろ手伝わないと、おっさんにどやされる」
「……いかだ?」
思いもよらない言葉に、ナルシアは眼を見開いた。そう言えば、二人の姿は見えない。周りを全然、見ていなかった事に、ナルシアは今更ながら気付いた。
「そう、ここからサウゼンまで歩いて一日かからないらしいけど、あんたが起きるまでする事もないからって。それがあれば、この河は流れも速いし、数時間ぐらいで着くんじゃないかって、パロディアスが言ってたぜ」
「それなら……、僕も行くよ」
悪気に思ってナルシアが立ち上がろうとすると、ロックは冷たい眼差しでそれを制した。
「いいから、休んどけよ。その顔色の悪さで、動けると思ってるのか? また倒れても、次は知らないからな」
「わかったよ……」
そう言われると、ナルシアは、ただ素直に頷くしかなかった。
ルカ。
本当は僕は、自分でも気がついていたんだ。
自分の、醜さや弱さから逃げている事に。
眼を閉じ、耳を覆い、口を塞いでも、そこにあるのは闇でしかないのに。
それでも――、君に生きていてほしかった。笑っていてほしかった。
守りたかった。
だから、僕は掴みたいんだ。誰かのために――その意味を。
次に眼を覚ました時、ロックの姿はそこにはなかった。誰の姿もないという事は、まだ筏を作っているのだろう。
葉の合間から零れる日の光。勢いのある河の流れ。さっきと変わらない風景に思えるが、時間の感覚は狂い、ナルシアは自分がどれだけ眠っていたのか分からなかった。
充分な休息を取ったはずなのに、身体が重い。それでも、行かなくては。ナルシアは、地面からその身を引き離すように手足に力を込めると、立ち上がった。




