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憤るカルテロに、パロディアスは答える。
「けれど、力を欲しがらぬ王などおりますまい。光脈が欲しいのは、誰もが同じ。だからこそ、ミドロルにしろ、ロード・ガルナにしろ、エンリトに調査団を仕向けたのでしょう」
ナルシアの前方で三人は夢中になって話している。この暑さの中、よくぞ、そんな元気が出るものだと、一人、苦笑した。
疲れが残っているのか、ナルシアの足取りは重かった。必死になって後を着いていくが、干上がりそうな喉に耐えきれず、ナルシアは腰にさげた水筒の蓋を開けた。口を付け、上を向くと、ぬるい液体が流れこんでくる。ナルシアはそれを、喉を鳴らして飲んだ。
だが、喉の渇きはおさまらない。ナルシアは、空になった水筒を下ろした。ハァ、ハァと犬のように荒い息が込み上げてくると同時に、吐き気を感じ、ナルシアは口を押さえた。
視界が、ぐらりと揺れる。
やはり、寝不足が祟ったのだろうか。ひどく、気分が悪かった。
ナルシアは、息を大きく吸い、気分を変えようと荒野を見渡した。
その時、ナルシアは遠くに何か異様なものが立っているのに気付いた。広い荒野に、ぽつんと立つ黒い棒のようなもの。彼のいる場所からは、あまりに離れ過ぎていて、それが何であるかは解らない。
灼熱の見せる蜃気楼だろうか。ナルシアは、一瞬そう思ったが、それにしては奇妙だった。近づくに連れ、その輪郭が明らかになってくると、ナルシアは思わず息を飲み、足を止めた。
唖然として、それを見つめる。
着いてこないナルシアの足音に気付き、ロックが振り返った。
「おい、早く来いよ」
その言葉に、喋り続けていたカルテロとパロディアスも立ち止まる。ナルシアは、皆の元へ駆け寄った。
「ロック……。あれ……」
ナルシアの示す指につられ、皆、首を動かす。その横顔が、驚きに変わった。
それは――
塔だった。だが、普通の塔では無い。あまりにも、長すぎるのだ。塔は、どこまでも高く延びて、垂れ込めた雲を突き刺している。その果ては、見えない。
眼を凝らすと、何か螺旋状に、蛇のように巻きつくものがあった。どうやら階段のように見えるが、一体、誰があれほど高い塔を登ると言うのだろうか。だが、ただのモニュメントではなさそうだった。
「何なのだ……、あれは! パロディアス、おぬし、あれが何か知っているか?」
カルテロが興奮して叫ぶと、パロディアスはふるふるとかぶりを振った。
「いえ、アーク・レイにあんな建造物があったなど、初めて知りました。むろん、地図にも載っておりませんし」
不思議な光景だった。地上から天へと果てしなく、続く一本の柱。ここからでは、細く見えるが、あれだけの高さを支えているのだ。円上の塔の直径は、並大抵の広さではないだろう。荒野に不動として佇むその塔は、まるで天上への通路のように見えた。
「圧巻だな。どこの誰だか知らないが、よくぞ、こんな大層なものを造りあげたものだ」
「あれだけの高さだ。長い年月と、膨大な人員を使ったんだろうな」
一つ、また一つと築き上げる様を想像すると気が遠くなりそうだった。いつの時代に造られたのかは、解らないが一朝一夕で出来るものでは無い。悠久の時を経て、よくぞ、今まで崩壊もせずに持ちこたえていたものだ。




