表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天のカリカチュア  作者: 綾崎 伊志
 第6章 天へと続く塔
81/245

 6

 天上。あの先に、神はいるのだろうか。もし、御座すならば、その隔たりはあまりにも遠く、人間が神を追い求めるのは無謀のような気がした。


 人間の脆弱な祈りなど届かない。手を伸ばしたところで、気がついてもらう事すら出来ないんじゃないかと、ナルシアは思った。


 放心したように見入っていると、背後から、じゃりと砂の擦れる音がして、ナルシアは振り返った。そこに立つ、意外な人物に、ナルシアは少し驚いた。


「ロック……、寝てたんじゃないのか」


 突然の訪問者はにこりともせずに、ナルシアの元へ歩み寄ってくる。


「さっき、寝たからな。眠れなかった。おっさん達も煩いし、あの大合唱の中にいると頭痛がしてくる」


 それも当然の事かと、ナルシアは思った。結局、ロックが眼を覚ましたのは、日が暮れ始めた頃だった。洞穴へ移動するため、カルテロに叩き起こされ、仏頂面になったロックの顔を思い出す。


「何、笑ってるんだよ。変な奴だな」


 ロックは怪訝な顔をしながら、岩を回り込むと、ナルシアの足元に座った。


 何をするでもなく、何を喋るでもない。だが、ナルシアは、不思議と、気詰まりも気まずさも感じなかった。まるで孤独を共有しているみたいだ、とナルシアは思った。沈黙は、さざなみを聞いているかのような不思議な安らぎがあった。ふと、下を向けば、いつもの張った空気はなく、ロックはぼんやりと遠くを見ていた。


 何を考えているのか、わからない。ロックにしては珍しく虚ろいだ眼をしていた。だが暫くすると、前を真っ直ぐに見たままに、ロックは口を開いた。


「あんたに、一つ聞きたい事がある。あんたは……、本当に゛光″について何も知らないのか? シドラス王やグラハム王は、あんたに゛光″について教えようとはしなかったのか?」


 ロックの問いは当然の事だった。普通であれば、後継者である自分が何も知らないというのはおかしな話だ。


 普通であれば。ナルシアは俯くと顔を曇らせた。


「わからない。父はもしかしたら、レイダートの奇襲がなければ、僕に゛光″について教えようと思っていたのかもしれない。父の死は、突然の不慮の死のようなものだから。けど、祖父は……」


 そこで、ナルシアの唇が震えた。


 いくら叫んだところで認めてもらえない。いくら、手のひらに血まめをつくって剣術を磨いたところで報われない。


 ゛精霊の声が聞こえない。″のだから。


 その言葉は呪詛のように身にしがみつく。重く鎖のように巻き付き、そこから一歩も身動きが取れない。


「そうか……」


 呟くロックを、ナルシアは見た。


「そう言えば、まだ、礼を言ってなかったな」


「礼?」


 ナルシアの言葉に、ロックは面食らったように眉をしかめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ