6
天上。あの先に、神はいるのだろうか。もし、御座すならば、その隔たりはあまりにも遠く、人間が神を追い求めるのは無謀のような気がした。
人間の脆弱な祈りなど届かない。手を伸ばしたところで、気がついてもらう事すら出来ないんじゃないかと、ナルシアは思った。
放心したように見入っていると、背後から、じゃりと砂の擦れる音がして、ナルシアは振り返った。そこに立つ、意外な人物に、ナルシアは少し驚いた。
「ロック……、寝てたんじゃないのか」
突然の訪問者はにこりともせずに、ナルシアの元へ歩み寄ってくる。
「さっき、寝たからな。眠れなかった。おっさん達も煩いし、あの大合唱の中にいると頭痛がしてくる」
それも当然の事かと、ナルシアは思った。結局、ロックが眼を覚ましたのは、日が暮れ始めた頃だった。洞穴へ移動するため、カルテロに叩き起こされ、仏頂面になったロックの顔を思い出す。
「何、笑ってるんだよ。変な奴だな」
ロックは怪訝な顔をしながら、岩を回り込むと、ナルシアの足元に座った。
何をするでもなく、何を喋るでもない。だが、ナルシアは、不思議と、気詰まりも気まずさも感じなかった。まるで孤独を共有しているみたいだ、とナルシアは思った。沈黙は、さざなみを聞いているかのような不思議な安らぎがあった。ふと、下を向けば、いつもの張った空気はなく、ロックはぼんやりと遠くを見ていた。
何を考えているのか、わからない。ロックにしては珍しく虚ろいだ眼をしていた。だが暫くすると、前を真っ直ぐに見たままに、ロックは口を開いた。
「あんたに、一つ聞きたい事がある。あんたは……、本当に゛光″について何も知らないのか? シドラス王やグラハム王は、あんたに゛光″について教えようとはしなかったのか?」
ロックの問いは当然の事だった。普通であれば、後継者である自分が何も知らないというのはおかしな話だ。
普通であれば。ナルシアは俯くと顔を曇らせた。
「わからない。父はもしかしたら、レイダートの奇襲がなければ、僕に゛光″について教えようと思っていたのかもしれない。父の死は、突然の不慮の死のようなものだから。けど、祖父は……」
そこで、ナルシアの唇が震えた。
いくら叫んだところで認めてもらえない。いくら、手のひらに血まめをつくって剣術を磨いたところで報われない。
゛精霊の声が聞こえない。″のだから。
その言葉は呪詛のように身にしがみつく。重く鎖のように巻き付き、そこから一歩も身動きが取れない。
「そうか……」
呟くロックを、ナルシアは見た。
「そう言えば、まだ、礼を言ってなかったな」
「礼?」
ナルシアの言葉に、ロックは面食らったように眉をしかめた。




