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「お前も心配性だな。光の騎士団がレイダートの奴らに負ける訳が無いだろう。それにナルシア様は剣豪と謳われたシドラス王を超える剣技の腕前というじゃねぇか。我らのナルシア様に栄光あれ、だ」
ダンが、カカカと笑い飛ばした時、ケリーの耳がピクリと動いた。ケリーは顔を事務所の入り口へと向けると、けたたましく吠えはじめた。
「ほら、おいでなすったようだぜ。罰当たりな不信者が」
「ケリー、落ち着け」
扉が開き、外から一人の少年が入ってくる。癖のある赤毛に、琥珀色の眼を持つ少年だった。
少年は、尻尾を振って足にまとわりついてくるケリーの頭を撫でながら、扉を閉めた。
「全く、ケリーの野郎、餌をやってる俺にはなつきもしねぇくせに」
「無愛想な者同士、気が合うんだろうよ。おい、ロック。家に居て、ナルシア様のご武運をお祈りしねぇと、また、じぃさんに怒られるぞ」
少年、ロックは、ゆっくりと板張りを歩いてくると、肩に掛けている鞄を床に降ろした。
「働かざる者、食うべからずだ。レイダート公国のおかげで楽な暮らしはしてないからな」
ロックが差し出した手のひらに、ダンは一枚の紙切れを渡す 。
「酒屋のモルナードさんからの依頼だ。エンタレスまで行ってリゴの実を買って届けて欲しいんだと。果実酒を作るんだとよ。報酬は、今渡した依頼状にも書いてあるとおり、二十ルドだ」
ロックは軽く頷くと、机にあるペンを取って自分のサインを書き込んだ。
「モルナード酒店の依頼かよ。エンタレスまで行って、二十ルドとは、しみったれた額だな。だから、言わんこっちゃねぇんだ。お前が国立航空試験に受かった時、素直に飛行隊に入ってりゃ、今頃「世界への門」で、がっぽり稼いで豪邸住まいだ」
貿易国家であるエンリトでは配達人の需要は高い。この国で最も名誉な職業といえば「光の騎士団」に入隊する事だが、こちらは家柄が関係してくる。
しかし、飛行船での運搬業務を扱う飛行隊は、実力次第で一般市民でも入れるので、若い青年達は皆、厳しい試験に挑み、「世界への門」で一山当てる事を夢見るのである。
「飛行隊のラスリーク隊長なんかは、ここに来ると、今だにぼやいてるぜ。何故、あのロック・ファニーは、試験に受かったというのにそれを辞退したんだね。でかい図体して、おろおろしてるんだぜ。吹き出しそうなの通りこして気の毒になってくるよ」
「ラスリーク隊長はこいつの母親のマーサさんに憧れてたからな。こいつを一人前にせなゃ、あの世で顔向け出来ねぇと思ってるんだろ」