表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天のカリカチュア  作者: 綾崎 伊志
 第1章 神の光
19/245

 19

 お前は何故、そんなにも苦しんでいるのだ。祈るようなナルシアの問いかけに、精霊は何も答えない。共鳴し、ただ一体化したように、悲しく苦しい。額から流れ落ちた汗が涙と混じる。


 私は呼ばれている。ナルシアは、そっと炎へと手をのばした。


「ナルシア様!」


 カルテロの怒鳴り声に、はっとした時には、もう指の先端は焼き焦げていた。


「痛っ……」


 じんじんと刺すような痛みに、意識が戻ってくる。たった一瞬、触れただけなのに、指先はどす黒く焦げ、ぷっくりと水疱が浮かびあがってあた。


 炎は破裂しそうな程に、膨れあがっていた。精霊の暴走に慌てふためく人々の中で、その炎が自分だけしか見ていないことにナルシアは気付いた。凶暴に猛る、その攻撃的な眼差しが自分に向けられている。


 恐怖が沸き上がる。ナルシアの心には、拒絶しか無かった。


「やめろっ」


 叩きつけるかのような、その叫びに、精霊の揺らめきは止まった。あれほど膨れあがっていた炎は、幼子の泣き声のようにか細く、しだいに消えつつあった。


 私の声に反応したのか……? ナルシアは指から滴り落ちる己の鮮血を見つめた。


「ナルシア様……。精霊は……」


 唖然とするカルテロの問いに、ナルシアは無言で首を振った。


 風景から剥がれてゆくように火は薄れ、そして――、消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ