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9.その罪は

言うまでもありません。

殺人事件に注意です。


【水(水行)】

泉から涌き出て流れる水が元となっていて、これを命の泉と考え、胎内と霊性を兼ね備える性質を表す。「冬」の象徴。


+++++★+++++


 突然日向がつぶやいた。

「誰か後をつけてるよね」

「そうですね」

日陰も頷いた。

「え?」

咲音は気がついていない。

「もう少ししたら巻きましょう」

「そうだね」

再び3人は無言で歩き始めた。

そして道が3本に分かれているところで、3人は立ち止まった。

「二手に分かれましょう。どの道を進んでも、川には向かえます」

「わかった。じゃあ俺は一番右の道を行くよ」

「私は真ん中を・・・咲音さんはどうしますか?」

「え?一番左の道じゃないんですか?」

てっきり一人ずつ違う道を行くと思っていた咲音は驚いた。

「そんなわけにいかない・・・女の子を一人にできないよ」

「私か日向のどちらかと一緒に行ってください」

そう言われ咲音は少し悩んでからなんとなく、

「じゃあ・・・・日向さんと行きます」

右の道を選んだ。


 少し歩く速度を上げ、2人が右の道に入ると、あとをつけていた影も右を選んだ。

「こっちに来たか・・・咲音ちゃん、離れないでね」

「はい。でも誰なんでしょう・・・あの人」

咲音が首を傾げると日向は驚いたように、

「え、わかってない?」

そう聞き返してきた。

「はい・・・ちょっと遠くて」

「うーん。確かに分かりづらいか・・・ヒントは目」

ヒントを出され、咲音はちらっと後ろを振り向いた。

その時、一瞬見えた。


「赤・・・!?」


「もうわかったかな。あの鬼だよ」

影は金の神の神殿に入る前に咲音達が見た鬼だった。

「どうしましょう・・・日陰さんもいないし、術は使えませんよ」

咲音が焦って言うと、日向は苦笑して、

「そうなんだけど・・・もう少し俺を信用してよ」

そう言った。

「あっ・・・すみません。別に日向さんを信頼してないわけじゃなくて・・・」

「ごめんごめん。わかってるから大丈夫・・・確かに俺は日陰より弱いけど、咲音ちゃんは絶対守るから」

その言葉と一緒に頭をなでる。


やっぱり子供扱いですか・・・。


咲音は赤くなりながらそんな事を思った。

そうしてしばらく歩いていたら、


――ザッ


目の前に何かが立ちふさがった。

「何で・・・!」

それは黒い髪と赤い瞳を持つ、後をつけていた鬼だった。

「さっきまで後ろにいたのに・・・!」

「鬼は人間と違って身体能力が高い・・・このくらい、造作ない」

鬼は鎌を一振りして、2人の方に向けた。

日向は咲音を自分の後ろに庇いながら、

「どうしてこっちに来たの・・・神子の方に食いつくと思ったんだけど」

にやりと笑ってそう問いかけた。

未来(さき)の子の方がうまそうだ・・・まあ、お前達の後に神子も食うがな!」

鬼は鎌を振りかぶりながら咲音の方に突進してきた。

「・・・・!」

咲音は突然のことに身動きができない。

「咲音ちゃんっ!」

日向はとっさに咲音を抱えて鎌を避けた。

「すみません・・・!ありがとうございます」

「いやいや、守るって言ったからね」

続けざまに鎌の刃が2人を襲う。

初めのうちはギリギリのところで避けれた2人だが、

「・・・っ」

「日向さん!」

体力がなくなってきて、日向の腕を刃が掠めた。

「大丈夫ですか!?」

「うん、平気。こんなのかすり傷だよ」

流れる血もそのままに、日向は鬼を睨み付ける。

息を荒げている2人とは反対に、鬼は涼しい顔をしていた。

「避けてるだけじゃ、食うぞ」

「言われなくてもわかってるよっ!」

「その割にはボロボロだな」

咲音を庇いながら刃を避けているせいか日向の体には無数の傷ができていた。

「日向さん・・・!私のことはいいです!」

たまらず咲音が叫ぶと、

「大丈夫。ちゃんと考えてるから」

日向は笑顔で言って、咲音の手を引いて走り出した。

「無駄なことを」

鬼も後を追って走り出す。


 しばらく走ると、分かれ道の合流点が見え、日向と咲音は木の陰に身を隠した。

「どうするんですか?」

「このまま木の間を歩いて、真ん中の道に出よう。そこから川まで行く」

そして2人は静かに足早に歩き始めた。

「追いかけてきませんね・・・バレてないのかな?」

「うーん・・・多分バレてる。きっと余裕があるんだよ。ま、ちょっとでも時間が貰えればいいや」

そうこうしているうちに2人は川のほとりに着いた。

日陰はすでに到着していた。

「その怪我・・・鬼に?」

日向の姿を見て日陰は冷静に尋ねた。

「うん、咲音ちゃんは無事なハズ」

日向の言葉に咲音は日陰に向かって頷いた。

「で、鬼は?」

「あっ!ごめん・・・振り切れなかったから、そろそろ・・・」

日向がそう言いかけた瞬間。


――ヒュン


日向と日陰の間に鎌が突き刺さった。

「もう来ちゃったのか・・・」

2人が慌てて飛び退くと、素早い動きで鬼が鎌を引き抜いた。

くるりと鎌を頭の上で回してから、鬼は3人を見た。

「神子もいたか・・・まとめて食うぞ」

「そういうわけには行きませんね・・・氷、鬼の身に突き刺され!」

日陰は鬼に向かって術を放った。

しかし鬼は氷を鎌を使って弾き返してしまう。

「くっ・・・風、行く手を阻め!」

その後も日陰は術を放ったが、鬼の前には無力だった。

「日向、咲音さん。神殿の入り口を探してください。鬼はなんとか食い止めておきます!」

その言葉を聞いて、日向は咲音の手を掴んで走り出した。

「えっ・・・!いいんですか!?」

「うん・・・あのままじゃ勝ち目無いから。神殿に入っちゃえば鬼はそう簡単に手は出せない、そんなところかな」

鬼は走り出した2人を追おうとしたが、日陰が術でそれを阻んだ。

「あなたの相手は私だ」

「・・・すぐ終わらせてやる」

そして、激しい戦いが始まった。


+++++★+++++


 日陰と鬼に背を向けて2人は川の周りを走った。

「入り口って・・・どんなの・・・でしょう!?」

「今までの・・・感じからすると・・・」

日向は足を止め、川を見た。

大きめの岩が何個か浮いている。

「中入るけど・・・いい?」

「はい、大丈夫です」

2人は川の中に入った。

膝下くらいまでの深さだったので咲音も歩くことができた。

「ちょっと冷たいね・・・大丈夫?」

「はい・・・どの岩でしょうね」

咲音は岩を一つずつ見た。

どこにも変わった様子は無い。

「どれでしょう・・・急がないと!」

2人はだんだん焦ってきた。

遠くからは刃物のぶつかり合う音が聞こえる。

それを聞きながら2人は川を歩き回った。


 一方日陰は、咲音と日向を離れさせたあと鬼に向き合った。

「ここは通しません」

そして、


「土、金、(つるぎ)となれ!」


刃の部分が光り輝いている剣を手にした。

「剣に霊力を込めたか・・・」

鬼はつぶやいて、日陰に向かって走り出した。

そして、


――キィィン


刃がぶつかり合う。

日陰は人の背丈ほどある大鎌を細身の剣で受け止めていた。

術が働いて、両者の力は互角。

日陰は一度後ろに下がった。

「そういえばお前、あの神子の・・・」

鬼からその言葉を聞いたとたん、日陰の顔色が変わった。

「それがどうした」

「神子の血は偽物でも旨いのかと思ってな」

「生憎だが、あなたに渡す血はありま・・・って!」

日陰は気がついた。


こいつ、偽物って何で知って・・・!?


そんな日陰の顔を見て、鬼は何ともなさげに言った。

「手のアレ・・・模様か。違う」

「あ」

日陰は左手を見て、声をあげた。

日陰の模様は神から与えられた、先代の物とは少し違う模様だった。

「まあ・・・そんなことはどうでもいい。旨いかどうかが問題だからな」

「だから・・・あなたに渡す血も、仲間もありません!」

日陰は剣を振りかぶって鬼に飛びかかった。

「お前は俺の手で・・・を失うな」

鬼が呟いた言葉は日陰には聞こえなかった。


+++++★+++++


 咲音と日向が川を歩き回ってしばらくたった。

「あっ!」

日向が突然声をあげた。

咲音が日向の方を向くと、眩しい金色の光が目に入った。

日向の勾玉からその光は伸びていた。

「どうしたんですか・・・・・?」

「いや、俺にもわからない・・・。でも」

日向が光の伸びている方を見やると、それは一つの岩に続いていた。

近づいてみるとその岩には、二つの見慣れた窪みがあった。

「これだ・・・!」

「日陰さん呼びましょう!」

「日陰!あったよ!」

2人は声を大にして叫んだ。


 鬼と戦っていた日陰は、自分を呼ぶ声に動きを止めた。

横目で川の方を見ると、咲音と日向が叫んでいた。


神殿を見つけたか・・・。


日陰は剣を持ったまま川に向かって走り出した。

当然、鬼も後を追ってくる。

「氷、壁になれ!」

術で足止めをしようとしたが、鬼はそれをも軽々と飛び越えてしまった。

「このままだと・・・マズイですね」

日陰は少し考えた後、自分の首もとに手を伸ばした。

そして、一本の紐を掴む。


「咲音さん!これで、入り口を開けてください!」


勾玉の繋がっている紐を引きちぎって、日陰は咲音に向かって投げた。

「えっ・・・わっと」

突然飛んできた勾玉に、咲音は驚きつつもそれを掴んだ。

「咲音ちゃん!早く」

日向に促され、咲音は窪みに勾玉をはめ込んだ。


――ゴゴゴゴゴゴ


轟音と共に、水面が二つに割れ一本の階段が現れた。

「日向!咲音さんを連れて先に進んでください!」

「わかった!」

日向は咲音の手を引いて走り出した。

「いいんですか!?」

「大丈夫・・・日陰だからね」

2人は少し歩いたところで立ち止まった。

再び、


――ゴゴゴゴ


轟音が聞こえてきた。

「これって、まさか!」

2人が道を戻ると今、まさに神殿の入り口が閉じようとしていた。

「日陰さんは・・・!?」

「まだ来てない!」

外を見ると、日陰は追いかけてきた鬼を振り切ろうとしていた。

「日陰!早く!」

「わかってます・・・・!」

日向が差し伸べた手を日陰は掴んで、中に滑り込んだ。

「行きましょう!」

三人は神殿へと歩き始めた。


+++++★+++++


 「あ、日陰さん。これを返します」

咲音はさっき預かった勾玉を日陰に返した。

切れた紐は元の通りに結ばれている。

「ああ・・・ありがとうございました。助かりました」

そして日陰は、懐から束になった鍵を取り出した。

「その代わりにこれを預かってもらえませんか?」

咲音は少し躊躇した。


神にもらった大事な鍵を私が持ってていいのかなぁ?


「大丈夫ですよ。持ってるだけでいいのですから」

日陰にそう言われ、咲音は鍵を受け取った。

「日陰!何か大きな扉があるよ!」

2人の先を歩いていた日向が振り返って叫んだ。

その先には精密な模様が彫られた大きな両開きの扉があった。

日陰は少し目を閉じてから、

「あの部屋に水の神がいます」

歩き出した。

そして扉に手をかけ、押した。


――ギギィッ


少し力を入れただけで、扉は音をたてて開いた。

部屋の中には大きな池があった。

3人のいる場所から石造りの橋が伸びて、池の中央にある東屋に繋がっていた。

その東屋に水の神はいた。

「よく来たな。神子よ」

水の神は短い黒髪を持った少年の姿をしていた。

咲音と日向は意外な気持ちで水の神を見ていた。

「さて、本題に入ろう。そなた達は鍵を――真実を求めて、ここまで来たのだな」

「はい」

水の神は滑るように橋を移動して、日陰の前まで来た。


「では、教えよう・・・と言っても他の者の言葉で感づいていると思うが。

人間の罪。それは自然の摂理を無視したその行為。

木を切り、大地を荒らし、水を汚す。こうしてこの地を壊していく・・・だから罰を与えた」


そこで水の神は片手に水の玉を出した。

「だが今はそれどころではない。あの水晶が壊れ、我らの力は完全ではない・・・そして、あの鬼が力をつけてきている」

パシャンと水の玉が割れ、中から鉄でできた鍵が現れた。

水の神はそれを咲音に渡した。

「この五種類の鍵は、新しい水晶を封じてある箱の鍵だ。これを持って、千人池に行け」

水の神がそう言ったその時。


――ゴゴゴゴ


地響きがした。

「何!?」

水の神が天井を睨みながらつぶやいた。

「結界が破られた・・・鬼が来る!」

「神殿なのに・・・!」

日陰はすぐに術を放つ体制に入り、日向は咲音を背にかばった。

そして。


――ギギィ


音をたてて、扉が開いた。

入ってきたのは、鬼。

「神殿も軽く入れるものだな」

鬼は鎌を振りかぶって、咲音に襲いかかった。

「きゃ・・・!」

「土、壁になれ!」

日陰の術で咲音の周りに土の壁ができた。

「やはり狙いは鍵か・・・残りの鍵もあの娘が持っているのか?」

「はい・・・っ!?」

日陰が答えるより早く、鬼の鎌が襲いかかる。

一瞬の隙をついて、土の壁は崩れた。

再び鬼は日陰に向かって走る。

「土、金、剣となれ!」

日陰は剣を構え、鬼の心臓を狙って突き刺した。

だが。

「甘いな」

「え・・・?」

日陰の剣は鬼をすり抜け、その影はふっと消えた。

「まさか・・・!」

後ろを振り向くと、鬼が咲音に襲いかかろうとしている。

水の神も、日陰の術も間に合わない。

咲音は避けることもできずに、目をつぶった。


――ザシュッ


刃物が切り裂いた。



微妙なところで終わったなあ。

・・・書いたの自分ですけど。


これ以上続けたら長くなりすぎそうだったので取りあえず掲載しました。

続きは早めに載せられたらと思います。

展開の早さには定評があります。。。

頑張ってついてきてください!

お願いします!(切実)

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