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4.灼熱の鎖

今回はグロくない・・・はず。


熱中症には気をつけてください・・・・。

【火(火行)】

光り輝く炎が元となっていて、火のような灼熱の性質を表す。

「夏」の象徴。


+++++★+++++


 火の神の神殿に行く途中に咲音、日向、日陰は一度集落に立ち寄った。

「少し休んでから行きましょう」

日陰がそう言い、わずかな休憩時間が始まった。

思い思いにくつろいでいた時、

「神子様・・・いるかい?」

入り口の方から声がした。

「はい。いますよ。すぐ行きますので待っていてください」

呼ばれた日陰は外に出て・・・。

「・・・どうしたの?」

険しい顔をして戻ってきた。

「・・・また人が亡くなりました」

「・・・・」

「今年はやけに日差しが強いようです・・・」

「・・・日射病、熱中症、あとは・・・水不足ってところかな」


日差しが強い。


咲音もそれは思っていた。

「やっぱこれって・・・罰・・・なんでしょうか?」

「このままだと更に被害が広がってく・・・」

今、集落の人の2割が熱中症にかかっている。

死者が増えるのも時間の問題。

「・・・神殿に行きましょう。これは火の神の与えた罰です」

険しい顔をして言った日陰に、2人は黙って従った。


+++++★+++++


 火の神の岩場。

それは集落をひたすら南に向かって突き進んだところにある。

そんなに遠い場所ではないのだが・・・・。

「・・・暑い」

「暑いですね・・・」

「・・・そうですね」

3人は照りつける太陽を睨んだ。

睨んだところでなにも変わらないが。

「・・・休憩しません?」

「そうだね・・・」

「そうですね・・・」

咲音の提案で3人は木陰を探し始めた。

「火の神の神殿はその名の通り、周りを火で囲まれている・・・」

「え?」

日陰の言葉に咲音は耳を疑った。

「・・・わけでは無く、石造りで一年中夏のように暑いと言われています」

「暑い・・・」

咲音は思わず呟いて、日向は全力でげんなりした顔をした。

「この日差しの強さも火の神の所に行けば解決するかもしれません。頑張りましょう」


+++++★+++++


 休憩のあと、歩き通して一行は岩場についた。

「本当に岩ばかりだね・・・今、こんなところあったっけ?」

日向は咲音に問う。

「確か・・・埋め立てられたんじゃないでしょうか?ただの道になっていた気がします」

その時だった。


――ヒュン


風を切る鋭い音と共に、

「!?」

「咲音ちゃん!」

「咲音さん!」

何かが咲音に襲いかかった。

咲音は為す術も無く、立ちつくしていた。

そのまま、何かは咲音を抱えて飛び去っていった。

「・・・これは結構マズイかな」

残された2人は呆然としていたが、いち早く日陰が立ち直り、

「光、風、かの者の後を追え」

術を唱えた。

「とりあえず、神殿は後回しです。咲音さんを助けましょう」


+++++★+++++


 四方を岩に囲まれた部屋で、咲音は目を覚ました。

「あれ・・・?」


何でこんなところに?


そう考えていたら、思い出した。


あ~・・・何か変なモノに連れ去られたんだっけ。


小さな窓と真ん中に置いてある水晶製の机以外、何も無い部屋。

咲音がこれからについて考えていた時。

「あら。気がついた?」

頭上から声を聞こえた。

「・・・上?」

見上げると赤毛の少女が宙に浮いていた。

「って・・・・浮かんでる!?」

「大丈夫よ。あたし、神だもの」驚いている咲音の横に少女は座った。

「神って・・・もしかして火の神ですか?」

「そうとも呼ばれてるわね」

「ここに私を連れてきたのはあなたですか?」

赤い瞳を持つ顔を見て、咲音は尋ねた。

「そうよ。あの神子がどの程度の力の持ち主か確かめるためのね」

少女は幼い顔に似合わない、冷酷な笑みを浮かべた。


+++++★+++++


一方、残された2人は岩のひとつに腰掛け、咲音の行方を考えていた。

「あ、風が変わった・・・行方が掴めたみたい」

「 本当!?どこだって?」

「ここから東に50歩・・・そこから北に35歩行ったところ、みたいだ」

日向は勢いよく立ち上がり、

「行こう!」

日陰にそう声をかけ、歩き始めた。


東に50、北に35歩。

そこには人がひとり通れるくらいの小さな穴があった。

「・・・この中かな?」

「入ってみよう」

日陰、日向の順で狭い穴を進む。

「このまま道が狭くなってたら・・・」

日向がボソッとつぶやいた。

「そういうこと言うな!」

「・・・ふふっ」

いきなり笑い出した日向に日陰は思わず後ろを振り向きかけて、


――ガンッ


思いっきり頭をぶつけた。

忘れてた。この穴、狭かった。

「~!」

痛みに無言で耐えている日陰。

その光景は、日向のツボにはまったようで・・・。

「あっはははは!」

「笑うなっ!」

「ごめんごめんっ・・・でも、こうしてると神子じゃなくて普通の少年に見えるよ」

その言葉で、日陰は気がついた。


昔――幼かった頃の自分に戻れている気がする。


敬語を使わなかったのも、大声で話したりしたのも久しぶりだった。


何かスッキリしたかも・・・。


「とりあえず先を急ごうか」

「うん」

後ろからかけられたら声に、感謝をしつつ、日陰は歩を進めた。


+++++★+++++


 どのくらいの時間が経ったのか、咲音にはわからない。

入れられている石の部屋では、なぜかお腹が空かなかった。

これでは頼みの綱(腹時計)も使えない。

こうして何もしない時が過ぎ、さすがの咲音も表情が暗くなってきた頃。

「そろそろ来るわよ」

火の神が部屋にやってきた。

「来る・・・?」

何のことだかさっぱりわからずに咲音がいると、

「ほら、出なさい」

火の神は出口を指して行った。


解放してくれるの・・・?


咲音は少し期待したが、

「ちょっと使わせてもらおうと思って」

その言葉に肩を落とした。

火の神の後について、石造りの廊下を歩いていくと、大きな部屋に出た。

天井からは鎖が垂れている。

「はい、ちょっと大人しくしてて」

「ちょっ・・・何するんですか!」

火の神は見た目に見合わない凄い力で咲音を抱え、宙に飛んだ。

そして、手際よく咲音を鎖に繋いだ。

咲音は天井から部屋のちょうど真ん中辺りに吊されている状態だ。

「何でこんな事を・・・」

抵抗する気も失せた咲音の力ないつぶやきに、火の神は答えず、

「最後の仕上げよ。・・・火よ、光よ、幻の空間を!」

そう唱えた。

すると、床が赤い光を放ち・・・。

「熱い・・・これって」

石は熱い溶岩に姿を変えた。

熱は何メートルも離れた咲音の所まで伝わってくる。


今、鎖が切れたら・・・。


そう考えるとゾッとする。

「いいわ!この熱さ!楽しくなってきた!」

楽しそうに笑って火の神がどこかに消え、残された咲音は途方にくれるしかなかった。


+++++★+++++


穴を進む日向と日陰は、突然現れた石造りの扉を前にしていた。

天井は既に立っても平気なくらいに高くなっている。

「力ずくで開けようとしてもダメだね」

扉に手をかけた日向が力を入れてもびくともしない。

「・・・木の神の時のように、何か仕掛けがあるのか?」

細かな模様が彫られている扉に、日陰も手を触れた。

扉は両開きで、真ん中に大きな鳥――朱雀が彫られている。

「扉には前みたいな窪みも無いみたいだし・・・」

2人は隅から隅まで扉を見るが、何も見つからなかった。

「本当に扉なのかな?」

つぶやき、上を見上げた日向は、

「あっ!」

目に入ってきたものに思わず声をあげた。

それにつられて日陰も上をみる。


天井には一枚だけ綺麗な正方形の薄い石が貼られていて、その真ん中には2つの窪みがあった。

「こんなところに・・・!」

2人は窪みに勾玉をはめる。


――カチッ


小さな音がして、静かに石の扉が開いた。

木の神の神殿の時のように、清浄な空気が場を満たす。

「行くよ」

日陰は日向に声をかけ、中に進んだ。


+++++★+++++


 天井から吊されている咲音は1人で煮えたぎる溶岩の上にいた。

火の神は戻ってこない。

「・・・」

溶岩の熱は冷めること無く、咲音の体力を奪っていった。

ちょっと意識が朦朧としてきた咲音の目の前に、

「もうすぐ来るわよ」

「・・・あ、火の神」

「何よ。もう少し驚きなさいよ」

涼しい顔をした火の神が現れた。

火の神が何かを唱えると、溶岩の池に飛び石が現れる。

「人間には足場が必要だから」

独り言のように火の神は言ってふわりと飛び石の上に降り立った。

そして少し経ち・・・。


――バンっ!


音をたてて扉が勢いよく開いた。

開けたのは咲音のよく知る2人。

そうとわかった瞬間、咲音は安堵して力が抜けそうになった。

「日向さん!日陰さん!」

大きく手を振って咲音は2人を呼んだ。

「咲音ちゃん!?何でそんなところに!?」

驚く日向とは対照的に、日陰は飛び石の上に立つ火の神に冷静に向き合っていた。

「はじめまして、火の神。私は神子、日陰です。・・・早速ですが、そこに吊されている彼女、咲音さんを返していただきたい」

前に立つ日陰の背を見て、気がついた。


怒っている。


顔にも、声にも出ないけれど、彼は怒っていた。

彼の放つ気配から日向にはそれがわかった。


日陰に睨まれた火の神は表情ひとつ変えず、

「ただで返すと思っているの?だとしたら、甘いわね」

そう言う。

日陰は答えない。

「あなた達があたしの攻撃を上手くかわして、この溶岩の池の中心に吊されている彼女を助けることができたら返してあげる」

火の神の言葉と同時に、池の中の溶岩が巨大な水滴となって2人に襲いかかった。

2人はとっさに別の石に飛び移って避ける。

飛び石は溶岩にあたり、跡形もなく溶けた。

「うわ・・・」

上で見ていた咲音も言葉を失った。


あれに当たったら・・・。


日向と日陰は横目でそれを見つつ、

「どうする?当たったら痛いよ」

「簡単には行かないね・・・。日向、ちょっと頼んでいい?」

日陰は日向に小さな声で何事かを囁く。

火の神と咲音には何も聞こえない。

「あの2人は、あなたを助けられると思う?」

黙っている咲音に火の神は話しかける。

「・・・絶対に、助けてくれますよ」

「何でそう思うの?」

「・・・何ででしょうね」

咲音は日向と日陰の事をまだ、よく知らない。


でも、「絶対」と言い切れるほど、2人を信用していた。


理由はわからないけど。

「相談は終わったようね」

火の神が言って咲音が見ると、真っ直ぐこちらを見た2人がいた。

片方――日向の口が小さく動く。

その目は咲音を見ていた。


うごかないで


日向は繰り返し、繰り返しそう言っていた。

2人が何をするのかはわからない。

でも、咲音は信じる。


 そして、2人は走り出した。

池の真ん中に向かって。

「真っ正面から来るなんて・・・」

火の神は呆れたようにつぶやいて、再び溶岩を宙に浮かばせる。

一拍の後、2人に向かって放った。

勢いよく飛ぶ玉を避ける・・・と思いきや。

「えっ!?」

「避けない!?」

2人の勢いは止まらず、そのまま溶岩の中に突っ込んだ。

咲音は思わず目を瞑った。

でも、

「術・・・!?」

火の神の焦った声を聞いて、恐る恐る目を開ける。

そこには、薄い水の膜を体の周りに作って走ってくる2人の姿があった。

その膜で溶岩から身を守っていた。

火の神は再び唱え、溶岩で巨大な壁を作った。

「風、火、彼を浮かべよ!」

日陰が唱えると、日向が宙に浮いた。

日向は壁を越え、再び石の上に降り立つ。

咲音のところまであと少しだった。

「やるわね・・・神子。でも、これからどうするつもり?膜を作る力も飛ぶ為の力も、あなたにはもう残ってないみたいよ」

火の神に言われた通り、日陰は額に汗をかき、肩で息をしている――霊力はもう残っていない。

再び火の神の放った溶岩が日陰と、走る日向の前に立ちふさがった。


その時、日陰が微笑んだ。


日向は止まらなかった。


「土、金、少女を捕らえし鎖を断ち切れ!」


声が空間一杯に響き渡る。


――パンっ


咲音は頭の上で何かが壊れる音を聞き、自分が落ちていく事を感じた。

でも、怖いとは思わなかった。


視界の隅に、走る日向を見たから。


鎖が切れ、咲音が落ちる。

その瞬間、日向は勢いよく飛んだ。

そして、空中で落ちる咲音を受け止めた。

咲音は小さく微笑んだ。

「風・・・っ、2人を運べ・・・!」

日陰の声と共に2人は風に包まれ、日陰の元に降り立った。


+++++★+++++


 「・・・咲音さん・・・大丈夫ですか・・・?」

「私は全然・・・日陰さんの方こそ!」

「私は大丈夫です。無事で良かったです」

「本当に怪我とかなくて良かったよ」

「2人共助けてくれてありがとうございました」

咲音が言うと、2人は小さく笑った。

その顔には安堵の表情が浮かんでいた。

「あれほどの術を連続して使うなんて・・・あなたにはかなりの力が宿っているみたいね」

火の神は純粋な笑顔でそう言った。

「これを持って行って。そのうち必要になるはず」

火の神は銅製の鍵を日陰に渡し、消えた。


+++++★+++++


「本当に大丈夫?日陰」

岩場から少し離れた林で3人は野宿をすることにした。

日中の暑さはすっかりなく、涼しい風が吹き抜けていった。

疲れたのか咲音はすでに寝てしまった。

「平気だって。日向こそ大丈夫?」

「こう見えて体力はあるから・・・次、どうするの?」


どこに行く?


日陰はちらっと咲音を見ると、

「土の神の神殿、そこがここから一番近いんだ」

「じゃあ、そこにする?咲音ちゃん、疲れてるみたいだしね」

「そうだね。場所は・・・この林を抜けた先」

そんなわけで、第四話でした。


アクションシーン・・・・残念な感じですね(笑)

私の腕ではこれが限界です。

脳内補完をお願いします・・・。


展開早いな・・・この話。

そう思う今日この頃。


次回も是非ご覧下さい。

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