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3.消えゆくモノ

例の如く若干グロい(とも言えないかもしれない)場面アリです。


冒頭に2連発くらい・・・。


ご注意下さい。


 【木(木行)】

木の花や葉が幹の上を覆っている立木が元となっていて、樹木の成長・発育する様子を表す。

「春」の象徴。


+++++★+++++


 咲音、日向、日陰は集落から山に続く道を歩き始めた。

しばらく歩くと先ほどの池――今の【千人池】が見えた。

そこには。

「これ・・・」


無数の死体があった。


「全部この天災で亡くなった方々のものです。埋葬をするにも人手が足りなくて・・・池に水葬することも考えてます」


子供、老人。

女、男。


あらゆる年や性別の死体が並べられている。


この風景は咲音と日向に天災の深刻さを刻みつけた。

「先に進みましょう」


 

 休憩をはさみつつ、3人は山道を登る。

日陰が突然足を止めた。

「・・・何か来ます。日向、咲音さんをお願いします」

そして荷物を咲音に渡すと着物の袖をひるがえして2人の前に立った。

「隠れてください」

「え!?どうしたの、日陰!?」

日向に答えず日陰は2人を茂みに押し込む。

そして離れた。


しばらくして。

「災いは、お前が神子になったせいだぁぁぁ!お前を倒せば・・・みんな助かるんだ!」

そんなことを叫んで、鉈を振り回し、日陰に向かって走ってくる影があった。


危ない!


咲音と日向は同時に叫びそうになったが、次の瞬間固まった。


――ザッ


地面を蹴る音が聞こえて、日陰が動いた。


「土、金、剣となれ!」


声と共に日陰の手に1本の刀が現れた。

襲いかかった影は標的が目の前からいなくなって動揺している。


その隙を突いて。


「うわぁぁぁぁぁぁ!」

日陰は背中から影を切りつけた。

影が地面に倒れる。


 呆然と様子を見ていた咲音と日向は茂みから飛び出し、日陰の元に駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

「怪我してない!?」

駆け寄る2人に日陰は薄く笑って、

「大丈夫ですよ。驚かせてすみません」

それを聞いた日向が今度は倒れている人を見て尋ねる。

「・・・殺したのか?」

「いえ。気絶させただけです。あれは本物の刀じゃないですから」

「ていうことは、術ですか?」

「そうです。先に進みましょう」

日陰は何事も無かったかのように歩を進めた。


+++++★+++++


 日が暮れた。

一行は森の中で野宿をすることにした。

「薪、ここに置いとくよ」

「ありがとうございます・・・あ。水を汲み忘れてしまいました」

食事の仕度をしていた日陰が声をあげた。

「私、汲んできますよ」

咲音が気をきかせて竹筒を手に取る。

「え・・・でも、夜ですし女性には危ないですよ」

「そうだよ。それに大変だから・・・」

日向と日陰、両方から止められた。

咲音は苦笑し、

「近場ですし、平気ですよ。何かあったら叫びますし」

と答え、2人の制止も聞かず川に向かった。

残された男2人は顔を見合わせ、

「・・・心配だね」

「・・・ですね」

小さくつぶやいた。

「水、木、彼女を守れ」

日陰が術を唱えた。

「何かあったら水と木の力が守ってくれるはずです」

「便利なものだね・・・と、そうだ。日陰に聞きたい事があったんだ」

「何ですか?」


「今の君は、ホンモノ?ニセモノ?」


日陰の笑みが固まった。

「・・・半身だからなのかな?わかるんだ。君の事が」

日向は表情を変えずに聞く。

日陰は息を吐いて答えた。

「ニセモノ・・・だよ」

本当の自分を偽って、生きている。

掟と信念に縛られて。

「何で・・・って聞いていい?」

「私が神子だからだ」


物事の真実を見極め、模範となれ。


神子は中立を守らなければならない。


例え何があっても人を憎むな。


神子は常に誇り高く、慈悲深くあれ。


「神子は集落の人の模範とならなければいけない。その方法に私・・・俺が選んだのが・・・」

「丁寧で、人に分け隔て無く接せられる人間で居ること」

「その通り。ただ壁を作って人から逃げている、それだけかもしれない」

でも、日陰は他の方法を知らない。

「複雑な事情があるのはわかったんだけど・・・」

日向は口を開きかけたが、少し止まり。

「やっぱ何でもない・・・っと、咲音ちゃん遅いな」

そう言って川の方に向かった。


 「模範か・・・」

男で神子になった事を非難する人がいる。

そんな人を見返してやりたかった。

誇り高く、慈悲深く、丁寧に。


時には冷酷にもなった。


真実を見極める。


最高の神子となって。


見返してやる。


「俺は・・・どうすればいい?」


+++++★+++++


 2人に心配をされているとは知らず、咲音は普通に川で水を汲んでいた。

「・・・これだけあれば」

一仕事終え、何気なく辺りを見回して違和感を感じた。

「・・・木が無いんだ」


沢山の木や花を見られる山。


でも川の周りだけ木が、草が、花がひとつも無かった。

よく見れば木があった跡――切り株が沢山ある。

「伐採したのかな・・・?」


伐採にしてはやり過ぎじゃない・・・?


咲音がそう思う程、木は少なくなっていた。

そんな事を思っていた時。


――ポン


と、両肩に手が置かれた。

「きゃあ!?」

油断していたせいか悲鳴を上げて、咲音は後ろを振りかえる。

そこには顔のそっくりな2人組がいた。

良く知った顔だった2人を見て、咲音はとりあえず安堵した。

「驚かせてすみません」

「帰って来ないから手伝いに来たんだ」


そんなに時間が経っていたのか。


咲音は意外に思いながら、水を持って2人の後を追った。


+++++★+++++


 夜が明け、一行はふたたび歩き始めた。

「ところで、神殿ってどんなところなんですか?」

休憩の時、咲音は日陰に質問した。

「木の神の神殿は周りを沢山の木々に覆われていて、内部は一年中温暖で様々な種類の花が咲いている、と言われています」

そんな理想郷みたいな所だなんて咲音は全く想像していなかった。

「でもさ・・・」

突然日向が会話に入ってきた。

「だんだん木、減ってきてるよね」

「確かに・・・」

山に入ったばかりの頃は歩くのも困難な程に木や草が生えていた。

それが今は無い。

実際3人が座っているのは切り株の上だ。

「これは異常ですね・・・」

日陰が深刻な顔で呟く。

「何かひっかかるんですよね・・・」

咲音も呟く。

「・・・」

日向は切り株を見ていた。


+++++★+++++


 それは突然だった。

「・・・石像?」

いつもと変わらず山を登っていた一行の前に道の幅ほどある石像が立ちはだかった。

「龍・・・?」

咲音は突然現れた龍の石像を見つめる。

日向は少し考えて、

「青龍、だね。そうだろ?日陰」

「そうです。木の神の山ですから」

「セイリュウ?」

聞いたことのない単語だ。

「青龍というのは伝説の生き物なんだ」

「昔から東を守ると言われています」

「へぇ・・・」

日陰が説明できるのは右に置いておいて、日向もサラッと解説をするのには驚いた。


あ、ホントに歩く百科事典だ。


咲音はそう思った。

本人にはあまり言えない。

「で、石像に話を戻そう。何か青龍の目の辺りに不自然な形の窪みがあるんだけど」

言われて咲音と日陰が見ると、確かに両目の辺りに窪みがあった。

「・・・この形、どっかで見たことあるんですが・・・」

ボソッと日陰が呟いた。それを聞いて咲音と日向は窪みを凝視する。

「・・・あ」

「これって」

2人は同時に気がついた。

対になった柔らかな曲線を描く形。

それは日向と日陰が持っている勾玉と同じ形だった。

「見た感じ窪みに勾玉をはめるみたいですけど・・・」

咲音が言った言葉に従い、2人は石像に歩み寄る。

黄色の勾玉は左側に。

青色の勾玉は右側に。


同時にぴったりと窪みに入った。


だが、何も起こらない。

「方法が違うのでしょうか・・・」

日向と日陰は勾玉をはめたまま固まった。

手の空いている咲音が何気なく石像の台座部分に手を触れた。


――ドン


「!?」


咲音が軽く手を触れただけで、石像が崩れた。

「・・・これってマズいですよね」

現代に残っていたら国宝級の美しい石像である。

これには流石の日向も冷や汗をかいた。

混乱で頭が真っ白な咲音の代わりに日向は日陰の方を見た。

「・・・何で満面の笑みなの」

そこには2人が見たことのない日陰の顔があった。

「道が開けました!これで神殿に行けますよ!」

言われて2人が(元)石像を見やる。

砕けた石像の後ろに細い道ができていた。

それを認識した瞬間、清浄な空気が体中を満たす。


何もわからない、能力の無い咲音と日向にもここが神殿の入り口だとわかった。


「いよいよ木の神の神殿に入ります。・・・良いですか?」

引き返すなら今のうち。

日陰は2人にそう問いかける。

「大丈夫だよ」

「大丈夫ですよ」

答えを聞き、日陰は道に足を踏み入れた。


+++++★+++++


 細い道には今までに無い数の木や花が生えていた。

油断すると足をとられて歩き辛い。

「本当に木ばっかり・・・」

咲音は聞いたとおりの景色に驚くばかりだ。


さらに進むと、花畑の広がる広い空間に出た。

「山にこんなところがあるなんて・・・」

花畑の中央では大木が天に向かってそびえ立っていた。

先頭を歩く日陰が大木の前で足を止める。

そして、地面に膝をついた。


「我はこの地におわす五柱の神々に仕えし神子。木々を守りし木の神よ。我の前に姿を現したまえ!」


日陰が唱え終わるのと同時に花畑に突風が吹いた。


そして、現れた。

「このようなところに何様だ。人間よ」

大木にもたれるように木の神は立っていた。

神と聞いて老人を想像していた咲音と日向はその容姿に驚いた。

茶色の腰まである長髪を1つに括り、穏やかな青の瞳を持つ長身の青年だった。

「私は、神々の仰った言葉の真意を知りたくてここに来ました」

「・・・言葉とは」

「『人間に天罰を下す』という言葉です。その言葉通り、集落では天災が立て続けに起きています。でも、私には神々の意志が・・・真意が理解できないのです」

「言ったな・・・そのような事も」

「何故ですか!何故・・・私達は罰を受けているのですか」

木の神は答えなかった。

その代わりに、傍らにいた咲音を見やった。

「・・・お前は人間の娘か」

「はい」

突然のことに驚きながらも、咲音ははっきりと答えた。

「お前は気づいただろう。この山の異変に」

日向と日陰が同時に咲音を見た。

視線を受けた咲音も木の神を見る。

青の瞳は真剣な色をたたえていた。


遊ばれているわけじゃない。


咲音は山の様子を思い返した。


木と草と花。


休憩で立ち寄った川。


切り株と減っていく・・・木。


「自然が消えていく・・・」

我知らず、咲音はつぶやいていた。

「「自然が消えていく・・・」」

日向と日陰も繰り返し、気づいた。

「その通りだ、娘よ。人間はこの山の木々を切り倒していった。確かに生きる為に木は必要だ。しかし、人間の行動は行き過ぎた。世の均衡を崩している」

木の神は寂しそうに笑い、小さく

「・・・我の力も弱っているようだ」

つぶやいた。

「これが・・・私達のやった事・・・」

五行の均衡が崩れる。

それは世界の崩壊を意味していた。

「人間は・・・大きな間違いを犯していたんだ・・・」

神の力さえも奪う程の。

咲音も日向も日陰も。

何も口に出せなかった。

「理解できただろうか。神子よ」

「はい・・・よくわかりました」

「木の力を整えるには、木を、自然をよく考えることが必要。たった数年で整えることは不可能。何十年もの時を重ねることだ」

木の神はそう言うと咲音に錫でできた鍵を渡した。

「これは・・・?」

「後に必要とする時が来る。それまで大切に持っていろ」

そして、再び花畑を風が吹き抜け、


「・・・いない」

木の神は消えていた。


+++++★+++++


「次はどの神のところに行くんですか?」

山から出て、平坦な道を歩きながら咲音は尋ねた。

「そうですね・・・集落の外れにある岩場、そこにある火の神の神殿に行きましょう」

「また・・・何かが消えていってるのかな・・・?」

日向のつぶやきに咲音と日陰は沈黙した。

今回の事で人間のした事の重大さがわかった。

正直、見るのが辛かった。

「何があるとしても・・・私は真実を見極めなければならない」

神々の意志を聞き。


そして世の均衡を取り戻す。


それが、神子の勤め。


そんな決意をしている日陰を見て日向は。

「・・・・・」

複雑な顔をした。

シリアス・・・になった・・・?


今回もご覧頂きまして、本当にありがとうございました!


神様を登場させてみました。

日陰がウダウダしてます。


日陰の思いはもっと深い・・・というか黒いモノのハズなんですが・・・。

私のつたない文章力ではこれが限界です。

正直意味不明です・・・。


次回は火の神の所に行きます。


是非ご覧下さい。

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