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13.水鏡の向こう側

短く終わらせました。

最後までお楽しみ下さい

 たくさんの風景が頭の中を流れていく。

咲音は目を閉じて、その流れに身を委ねていた。

そして――。


 「ん・・・」

目を開けると青い空が見えた。

咲音はゆっくりと起き上がると、辺りを見回した。

2人分の昼食が入ったカバンが横に転がっている。

あの時間とは違う、懐かしい光景が広がっていた。

「本当に帰ってきた・・・」

水面を覗き込めば、自分の顔が写る。

日向も日陰も誰もいない。

咲音は足早に自分の家がある方向に歩き出した。

 「ただいま」

アスファルトの道を歩き、家に入ったら咲音の母が買い物から帰ってきたところだった。

「あら、おかえり。今日の夕飯どうする?」

あの時から時間はそんなに経っていなかった。


じゃあ、日向さんは・・・?


2階の客間――日向の部屋の扉を咲音はそっと開けた。

ベットとクローゼットにブルーのカーテン。

使っていないかのように綺麗なままで、日向のいた形跡は無かった。

試しに、

「お母さん、親戚の中に日向って人いた?」

訊いてみれば、

「何言ってるの。そんな人いないわよ」

そう答えられる。


水の神の言った事って本当だったんだ・・・。


再び日向のいた部屋に戻り、ベットの上に置かれた町史を手に取る。

そして開いた。


+切島町史 千人池ノ項

 

 まだ人々が神と繋がっていた遠い昔の話である。


 山奥の池の周りに集落があった。

万物を統べる五柱(いつはしら)の神に守られた平和な集落だった。

ある日、集落に疫病が発生した。

それを境にこの集落に様々な天災が降り注ぐようになった。

何千もの人が死に、集落は死体に埋もれた。

埋葬も間に合わず、人々は何千もの死体を池に沈めた。


しかし、神子とその【半身】、そして少女の力により集落は再び神々の守護を得た。


その後、この池は追悼の意を込めて、【千人池】と呼ばれるようになった。



 増えている・・・。

「日向さんと見たときより増えてる・・・・!」

わずかな違いだけど、咲音はやっと、


本当のことだったんだ・・・・。


そう実感することが出来た。



 それから、どんどん日は過ぎ夏休みは終わった。

咲音は前と変わらず、学校に通う。


そして雪が降り出す頃、

「・・・猫?」

咲音は雪に埋もれて丸くなっている猫を見つけた。

「さすがにこれじゃ死ぬよね・・・」

慌てて掘り起こし、雪を払う。


「あ・・・・」


色素の薄い茶色の毛が現れる。

咲音をじっと見つめる目は青のかかった灰色。

まるで、


「日向さん・・・?」


「にゃあ」


咲音がつぶやくと猫は「そうだ」と言わんばかりに鳴く。


「ヒナタっていうのか・・・よし」


そっと猫を抱えると、咲音は荷物を持って家への道を歩き始めた。

見守るのは暖かな日の光とそれを受ける木の陰。


ここは神のおわす土地。

魂の鎮められる池は過去を映す。



水鏡の向こう側の世界は今は誰にもわからない。


そんなわけで最終話でした。

いかがだったでしょうか・・・・・?

終わり方には色々あると思いますが、私はこれでOKだと思っています。


最後までご覧頂いた方、本当にありがとうございました。

次回作は・・・まだ考えていませんが、とりあえず壺やら色々更新したいと思います。


ではでは!

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