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失敗の常識

作者: 砂利海
掲載日:2026/04/05


成功すれば大出世だ。

Sはかつてないほど燃えていた。

大型案件のプロジェクトを任されたからだ。


かつての上司Oと居酒屋へ行った。

SはOのことをとても信頼している。

昔、取引先を怒らせてしまったとき、Oが一緒に謝ってくれたのだ。

あの時のOがいなければ今のSはないだろう。

「Oさん。あの時は本当にありがとうございました。あれ以来、私の仕事への姿勢は変わりました。」

「いや、俺もそうやって成長してきた。でも、次の案件は大事だぞ。成功すればかなりの出世につながるぞ。」


明日からプロジェクトは始まる。

しかし、プロジェクトメンバーで一人だけ気がかりなメンバーがいた。



###

Aは今年配属された新人だったが、プロジェクト開始初日から遅刻をしてきた。

Aは同期と比べて仕事が遅く、ミスも多かった。

ミスの多さから、Aはいつも申し訳なさそうにしている。


Sは、先輩のBをAの教育係につけた。

-- 明るく前向きなBの仕事の進め方は、Aの参考になるはずだ。


しばらく経ったころ、Bの担当業務に大幅な遅れが発生した。

SはすぐにBから状況説明を受け、対策を練った。

-- 当初の計画とは異なるが、十分ゴールには到達できる。



###

そんな中、Aの発注不備が発覚してしまう。

何と来週中に手配しなければいけない資材の発注ができておらず、その資材が無ければプロジェクトは止まってしまう。

それは今から用意できるようなものではない。

数百万の損失が発生してしまったのだ。


-- どうしてこんなミスをするんだ。


この時点で、プロジェクトは絶望的だった。


Oの顔が頭をよぎる。


SはAに言った。

「すぐにでかけるぞ」


それからSとAは、業者に直接頼み込みに回り、頭を下げて何とか急ぎで資材を用意してもらうことができた。


Aはいつものように申し訳なさそうに言った。

「Sさん。すみませんでした。」


しかし、Sはわかっていた。

プロジェクトでは、常に問題が発生して、必ず遅れる。

それを解決することが仕事なのだ。

一仕事終えた安堵感と共に、Sは優しく言った。

「気にするな。こうやって成長していくんだ。」



###

しばらくして、Aは会社を辞めてしまった。


何とかプロジェクトは成功に終わった。

先輩社員Bもミスをし、何度も計画は遅延した。

S自身も昔の自分のミスを思い出すことがあった。

それでも最後にはみんな無事にプロジェクトを終えることができた。


しかし、Aだけが自分の失敗を許せなかったのだ。


疲れた体で家に帰り、鏡に映った自分の目を見てSはつぶやいた。

「誰があの子の未来を作れるのだろうか。」




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