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バス停の友達

掲載日:2026/03/11

「おはよう!りんちゃん」


「おはよミオ今日も暑いね」


私は七海 凛高校2年生

毎朝、7時15分にこのバス停に着く。

7時25分のバスに乗る為だ。

そして、この10分間いつもこのバス停にいる

「ミオ」という女の子と話をするのが日課だ。


ミオとの出会いは私が高校2年生にあがってすぐ位の時だった。

朝から土砂降りの雨で傘を差してても濡れてしまうぐらい。

ミオは傘もささず道路を歩いていた。

私は「大丈夫?」と傘を差し「バス停で雨宿りした方がいいよ!」と手を引き半ば強引にバス停へ連れていった。

それからミオはこの時間にバス停へ来るようになった。私と話をする為に。


「ねぇ凛ちゃん昨日の夕飯なんだったの〜?」


「昨日はね、アジフライだったよ」


「アジフライ!!いいなぁ食べたいなぁ」


「今度うち来れば?」

そう私が言うと、ミオは困った顔をして


「行きたいよいきたい」

その言葉と同時に私の乗るバスが来た。


「行ってらっしゃい!りんちゃん!」


「行ってきます」


私は学校で友達が居ない。

だから学校に行くのはずっと憂鬱だった。

でもあの雨の日、ミオと出会ってから少し楽しくなった。

ミオに「行ってらっしゃい」って言われると

今日も何とか頑張ってみようって思えた。


「おはよう!りんちゃん」


「おはよう〜」


「今日から高校3年生だねぇ、もう後1年で卒業だね」


「うん、」


「あれりんちゃん寂しそうだね、卒業するの寂しくなっちゃった?」


「ううん、学校は相変わらず嫌いだよ」


「なら早く卒業したくない?」


「でもミオと会えなくなっちゃうじゃん」


私の言葉にミオは笑顔で答えた

「大丈夫だよ!私はずっといるよりんちゃんと安心して」


不思議なことに、ミオはいつもここまでだった。


「ミオって、バス乗らないの?」


前に聞いたことがある。


「うん。私はここまでなんだ」


ミオはそう言って、いつも笑っていた。


どこに住んでいるのかも、

携帯番号も教えてくれない。


だから私たちは、

このバス停で、この時間にしか会えない。


本当に、バス停の友達だった。


そんなこんなでとうとう卒業式を迎えてしまった。


いつもの時間にバス停へ行くと大きくこちらへ手を振っているミオがいた。

「りんちゃん!!卒業おめでとう!」


私は初めて出来た友達を失うのが本当に寂しかった。なので卒業は全然嬉しくなかった。

「ありがとう、でも私ミオと離れるの寂しい」


そういうとミオは少し悲しそうな顔をして私に言った。

「りんちゃんお願いがあるの。私はりんちゃんに笑ってて欲しいんだ。私がいなくなってしまったあの日からりんちゃんは笑わなくなってしまったよね。ママとパパともほぼ口聞いてないんでしょ?」

そう言って私の手のひらに何かを乗せた。


「え…首輪?ミミが着けてた首輪…?どういう事?」

私は軽くパニックになった。

何故ならミオが渡してきた首輪は私が小学生の時から飼っていた猫が着けていたものだったからだ。それも私が母と一緒に作ったものだった。


「ごめんねずっと隠してて。私本当はミミなの。私死んじゃってからもりんちゃんの事ずっと見てたんだよ。そしたらりんちゃん笑わなくなっちゃってどんどん孤立して行って

心配で、また心から笑って欲しくて、

気付いたらあの雨の日あそこにいたの。

りんちゃん私と初めて会った時と同じ様にバス停に連れて行ってくれたよね」

ミオは、いやミミはポロポロと涙をこぼし始めた。


ミミと出会ったのは私が小学生1年生の時だった。

小学校からの帰り道、急に土砂降りの雨が降ってきて走って家に帰っている途中にバス停近くの田んぼ道をミミがびちゃびちゃになりながら

歩いていた。

可哀想と思った私はミミを抱っこして近くにあったこのバス停へ一旦雨宿りの為走った。

ミミは酷くやせ細っていた為、このままここに置いていったら死んでしまうんじゃないかと思い

家へ連れて帰りそのまま家族になった。


「りんちゃんがこのままママともパパとも仲良くなくなっちゃって離れていってしまうなんて嫌だよ、嫌だ!お願い、また笑顔で行ってきますって言ってよ!もうどうか悲しまないで…」

ミミは泣きながら私の肩を掴んだ。


ミミはただただ私に笑って欲しかったんだ。

いつもミミは私が学校に行く時、玄関まで見送ってくれた。かわいい声で「にゃ〜ん」と鳴くので私はそれに笑顔で「行ってきます」と答えていた。

だから毎朝ミミは初めて出会ったバス停で私を見送ってくれていたのだろう。

また笑ってくれると思って。


「ミミ、ごめん、ごめんね心配かけて

でもねミミがミオとして現れてくれてからは

毎日朝が楽しかった嫌な学校も頑張れた

だから大丈夫きっときっと大丈夫、私頑張ってみるから」

私はミミをぎゅっと抱きしめた。


私達のタイミングを見計らった様にバスが来た。

「りんちゃん、行ってらっしゃい!」


「ミミ、行ってきます」

私は久しぶりに笑顔でそう答えた。


バスのドアが閉まる。

空いてる席に座り窓の外を見ると、茶トラの猫がベンチに座ってこちらを見ていた。

そう、ミミだった。バスが発車し前方に視線を移し再度過ぎていくベンチに視線を向けると

もうそこにミミは居なかった。


私はこの春から東京の大学へ進学する。

今日は、母と父にただいまって言おうと思う。

私が笑顔でいること、家族で笑顔でいること。

それがミミの願いだから。


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