懐柔
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監禁7日目を過ぎて、警察や政府から各方面に報道規制が掛かった。
『ジェイクロスハート』に集まった玲邦議員への寄付金額の合計は、700万円近くにまでなった。
これは参院議員選挙の比例で、33.9万票を獲得した野党第一党の著名な国会議員には、まだかなり少ない金額のはずだ。
それでも警察は、ここから模倣犯が現れないようにと報道規制を掛けたのである。
その効果は顕著だった。
元々、65歳以上の高齢者層に支えられていた寄付金額はガクッと減った。
SNSでの反応も1週間を過ぎた辺りから薄くなり、コメントの数も10分の1以下に減った。
いくら有名人だからといって、ただ政権与党の揚げ足を取っていただけの野党の国会議員が一人居なくなっただけでは、政局になんの影響もない。
各野党の国会議員の中には、「陰謀論」をSNSで語ったが、そんなことをするメリットはなにもなく、すぐに削除された。
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但し、奏玲邦は、この事実をまだ知らない。
わかっているのは、寄付金額が減っているという事実だけだ。
だから、目の前のカメラに向かって、寄付を必死に懇願する。
「私、奏玲邦は、これからも国民の皆様の為に、心血を注いで頑張って参ります。ですので、あともう少しばかりの寄付を皆様にお願い致します」
モニター画面に映されるのは、監禁される前の高飛車で高慢チキな自分の姿ばかりだ。
いくらモニター画面に向かって、それを否定しても国民からなにか返ってくるわけではない。
「ごじゃる丸! 居るんでしょ! ちょっと、話をしましょうよ」
そう「ごじゃる丸」を読んだ。
「はい。なんでごじゃるか、玲邦殿」
「もぉー。そんな堅苦しい言い方しないでよ。これからはわたしのこと、玲チャンって呼んで」
ここに来て、奏玲邦の心は壊れかけていた。
自らプライドを捨てて、生成AIに縋ったのである。
「なんでごじゃるか、玲チャン」
生成AIの「ごじゃる丸」が、その要求に答える。
「もぉー、聞いてよー。ネットのみんなって酷いのよ……」
奏玲邦の口から、ストレスを解消するようにとめどなく言葉が溢れる。
そこから3時間以上に渡り、「ごじゃる丸」との会話は続いた。




