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『ANOTHER RAIN(アナザレイン)』/3 - 女性国会議員公開監禁事件 -  作者: 志村けんじ


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5/7

見えない監禁の思惑



 3日目、4日目と寄付金額は100万円を超えた。


 このまま多額の寄付金額が集まれば、すぐに解放されるはずだ。


 それでも、アンチばかりが多く集まるSNSだけでなく、自分たちの味方でもあるテレビなどの反応も気になる。


「ねぇ! テレビは見れないの。テレビを見せて!」

 そう要求した。


 特にAIからの返事はなかったが、テレビのワイドナショーが流れる。


 リベラル色の強いテレビ局では、特に自身を持ち上げてくれる発言が多い。


 それを見て込み上げる嬉しさで、笑顔がこぼれる。


 但し、奏玲邦チュン・レイホウは忘れていた。これがリアルタイムで配信されていることに。


 カメラのマイクは、当然ながら小さな独り言も拾っている。


 重箱の隅を突くように、その独り言も「切り抜かれる」。


 これは自身が国会の質疑でやってきたことと同じことだ。


 それなので「自業自得」という言葉が、SNSから出てくるようになる。


「別に居なくても、特に問題ない」や「このまま居なくなってもらっても構わない」などの声もあった。



 監禁から5日目を過ぎて、身体のあちこちが痒くなりだす。


ウォッシュレットで陰部は洗われているが、それでもシャワーや湯船に入るのとは違う。


「ちょっと! 体が痒いのよ! なんとかしてちょうだい!」

 そう訴えた。


 もう化粧も崩れて、酷い顔だ。そこにはいくらキレイにしていても60歳まえの女性の顔が出る。


 それを察してくれたのか、テーブルにメイク落としの洗顔のセットとタオル。そして化粧道具が載せられて提供された。


「ちゃんと全身にモザイクは掛けてちょうだいね」

 そう要求すると。


「わかったでごじゃる」

 と返事があった。


 化粧をするときは、モニター画面に自身を映してもらい、鏡のように左右も逆転してもらって、それを見ながら化粧をした。


そこには、いつも見せている強気な女の顔があった。



 週刊weekly JAPAN(ウィークリージャパン)編集部。


 この「女性国会議員公開監禁事件」に対して、記者・宮下結子みやしたゆうこはさほど関心を見せていなかった。


「宮下さん。この事件にあんまり関心ないみたいですね。どうしてですか?」

 パートナーカメラマンの小林が聞いた。


「なんか気に入らない」

 宮下は言った。


「なんですか? その気に入らないって」

 この事件は、気に入る、気に入らないの話ではないはずだ。


「だって、犯人の目的が曖昧過ぎる」


「目的は、国際支援NGO団体ジェイクロスハートへの寄付じゃないんですか?」


「だから、その寄付で玲邦議員がどうなるのかを、犯人は明言していない」


「あっ!?」

 そう言われて、小林も気がついた。


「犯人は、玲邦議員も役員に名を連ねているジェイクロスハートで、あなたへの支援をつのると言っただけ」


「そして寄付された金額は、ジェイクロスハートで好きに使っていいと言っている」


「それなのに、但し、企業や団体からの寄付は金額に関わらず、一切お断りとした上で、これを守らなかった場合は、玲邦議員はそこで終わりとだけ言っている」


「確かに……そうですね」


「犯人が言っているのは、寄付金額によって、提供する食事の内容を決めるということと、監禁状況を7つのチャンネルでリアルタイムで世界中に配信すると言っているだけ」


「ただ、玲邦議員が食事をしているところをみると、相当美味しい料理みたいですけどね」


「それで、ウーバーによる有名店の料理じゃないかって、ネットの特定班が動いたけど、結局はわからなかった」


「そう……ですね……」


「警察の方も、7つのSNSのアドレスと送られてきたメールアドレスから、犯人を特定しようとしたけど、結局のところわかったのは海外に居住している外国人のアドレスだということだけ」


「もう、そうなると国際的な捜査になってしまいますもんね」


「もし犯人の目的が、ジェイクロスハートへの寄付が目的だったとしても、それが玲邦議員の拉致と、わざわざあんな手の込んだ公開監禁までする説明がつかない」


「初めは、ただ高慢チキな玲邦議員をただはずかしめる目的だとも思いましたけどね」


「確かに、初めは女性蔑視の屈辱を与えるための目的はあったのかもしれない」


「それでも、現在は玲邦議員に対して、それなりの配慮も見せていますもんね」


「だから、犯人の真の目的が分からな過ぎて、気に入らないのよ」


「ちょっと!? そっちですか宮下さん!?」


 そう宮下結子は言ったが、この事件の犯人の素性がまったく見えてこないのも事実である。


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