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『ANOTHER RAIN(アナザレイン)』/3 - 女性国会議員公開監禁事件 -  作者: 志村けんじ


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3/7

優しさと絶望


 その日の午後9時過ぎ、今日初めての食事が提供される。


 あの左側にあった枠が開いて、その光が見えない奥から、ステンレス製のテーブルと共に、食事が出される。


 メニューは、鉄板に乗った、見た目はごく普通のハンバーグステーキで、副菜もあり、ご飯もある。


 お腹はかなり空いていたが、恐るおそる、そのハンバーグを箸で口に入れると、予想していたものとは違い、かなり美味しい。


 思わず笑みがこぼれる。


 そこから貪るように、その提供された料理を口に運んだ。


 すべてきれいに食べ終えると、テーブルと共に、残った食器が再び回収される。


 聞こえるのは、そのテーブルを収納するためのモーターの音だけで、人の気配は感じられない。


 それでも、人の三大欲求といわれる食欲が満たされると、もう一つの睡眠欲により、気がついたら眠ってしまっていた。



そこから数時間が経過して、奏玲邦チュン・レイホウは、お尻の痛さで目が覚める。


 腕時計を確認すると、3時過ぎだ。


 ずっと電気の灯りが付きっぱなしだが、夜で間違いないはずだ。


 あんな料理が出てきたなら、必ず調理した人間はいたはずだ。


 ここで本当にあのアニメキャラクターが生成AIなのか、大声で叫んでみる。


「ちょっと、居るんでしょ! 出てきなさいよ!」

 すると、期待とは反対にモニター画面が点いて、「ごじゃる丸」が出てくる。


「はい。なんでごじゃるか」

 てっきり、裏で人が操作しているものだと思っていた。


「あなた、寝ないの?」


「なにを言っているでおじゃるか。AIは寝ないでおじゃる」

 当然の答えが返ってくる。


「そ……そうよね」


「それで要件はなんでごじゃるか」

 無機質に聞いてくる。


「す……座っているところが硬くて、お尻が痛いわ」

 とっさに、その事実を伝えた。


「わかったでごじゃる。少し待つでごじゃる」

 そのわずか1~2分後、テーブルに柔らかいクッションが乗せられて出てくる。


「これを使うでごじゃる。あとはよろしいかな?」


「えっ、ええ。あとは大丈夫よ」


「それでは、良い睡眠を」

 モニター画面は再び消える。


 そこから、また数時間が経過して、もうすぐ朝の6時になろうという時間に目が覚めて、今度は便意を促してきた。


 誰もいない空間なのに上下左右を見渡す。


 カメラのレンズを2・3度チラ見して、便座カバーを上げると、排尿のときと同じ様にして、ストッキングと下着を下ろす。


 次に、ジャケットを脱いで、カメラのレンズに掛けようとしたが、首輪がされている為に、ドアノブと同じく手が届かない。


 しょうがなしに、ジャケットを両手で持って、カメラのレンズ前にかざして自分の姿を隠して、その態勢で用を足した。


 そのときの音が、トイレ内に響く。


 慌てて、音を隠す為のメロディーのスイッチを押した。


 隠していたはずの顔はあらわになり、更に恥ずかしさが増して、顔を下げて隠す。


 タレント時代は、嫌なことは罰ゲームであっても断ればよかったが、この生理現象だけは止められない。


「出してー! 早く助けてーー!」

 そう大声で叫んだ。


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