表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ANOTHER RAIN(アナザレイン)』 - 女性国会議員公開監禁事件 -  作者: 志村けんじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

最初の支援金額

♢ 


 奏玲邦チュン・レイホウは、ここで冷静になって、この目の前にあるもの以外の状況も、改めて確認してみる。


 ここはトイレでは間違いないが、便座カバーがプラスチック製のものではなく、欧米諸国などと同じく木製なので、その上に座っている。


 トイレは、ウォッシュレットタイプで、右側には操作スイッチのパネルがあり、トイレットペーパーも2ロール横に並んでいる。


 ガラス窓は無く、ドアの上下には、それぞれ2cmほどの隙間が空いている。


 床はタイル材だ。


 右側には手洗いの為の流し台はありお湯も出るが、顔を写す為の鏡はない。


 左側には、縦15cm、横70cmほどのフタがされた枠があるが、それがなにかはわからない。


 あとはエアコンが動いている音が聞こえるが、人の話し声などは聞こえない。


 自分を拉致したのは、少なくとも2人以上のはず。


 それでも、身代金目的ではない誘拐などあり得ない。


 寄付もすぐに集まって、すぐに解放されるだろうと、そのときは高を括っていた。



 腕時計を見て、半日が過ぎた午前10時過ぎ。再びモニター画面が点く。


 そこに映し出されたのは、政権与党で大臣をしていたときの映像だ。


「二位じゃ駄目なんですか!」

 あのときの映像だ。


 この映像は、もうわからないぐらいに拡散されて、もう何百万回も再生されている黒歴史だ。


 怒りで、思わず右側の壁を叩く。


「ふざけんなぁーー! 早くここから出しなさいよ!」


「なにを怒ってるでごじゃるか。あなたの輝かしい経歴でごじゃるではないでごじゃるでは」

 但し、今度はアニメの画像はなく音声のみだ。


「もういいのよ! こんな昔のことは!」


「失礼失礼。そんなに忘れたい過去でごじゃったか」

 感情の起伏のない音声が、忘れたい過去をえぐってくるが、言い返すことができない。


「それと、この映像が世界中に生中継されていることを忘れない方がいいと思うでごじゃる」

 モニター画面には、自身の映像が映し出される。


 それも怒りに満ち満ちた、醜い顔だ。


「女性は、おしとやかのが一番でごじゃる」


 ここに顔を写す為の鏡はないが、顔を撮っているカメラは存在する。


 奏玲邦チュン・レイホウは、目の前のカメラから、顔をそむけた。


 悔しくて、自分の足を何度も握った手で叩く。


「では、寄付金額が公開される午後8時まで、あと10時間ほど待つでごじゃる」



 そこから約4時間が過ぎて、強烈な尿意に襲われた。


「ちょっと! いないの! 早く出てきなさい!」

 大声で叫んだ。


「お呼びでごじゃるか。では、要件を話すでごじゃる」

 モニターのスピーカーから、ごじゃる丸の音声が流れて、自分自身のリアルタイムの姿が映し出される。


「ト……トイレに行かせて」

 羞恥心を見せながら要求する。


「なにを言ってるでごじゃるか。ここはそのトイレでごじゃる」


「は……恥ずかしいので、ここではできない」

 声を振り絞って、恥ずかしさを伝える。


「大丈夫でごじゃる。腰から下は映ってないでごじゃるゆえ、安心してするでごじゃる。もし音が恥ずかしいと言うのなら、その音を隠す為のメロディーもあるでごじゃる」

 なんの屈託もないAI合成の子どもの声で、そう返ってくる。


 この状況下では、便座カバーを上げた時点で用を足しているとわかり、その音を隠す為のメロディーも同じである。


 それが世界中に生中継されているのだ。


「あなたはそちらに囚われの身ゆえ、どうするのかはお任せするでごじゃる」

 そう残して、モニター画面は再び消える。


 もう、我慢にガマンしている尿意も爆発寸前で、このままでは漏らしてしまう。


 仕方なしに、上品さを装って便座カバーを上げ、できるだけお尻を上げないようにしてスカートを捲り上げ、ストッキングと下着を一緒に下すと、できるだけ音を出さないように用を足した。


 我慢していた排尿の快感に、顔の表情が思わず緩む。


 このときの、その表情がSNSをにぎわせた。



 そして約束の午後8時。寄付金額が『ジェイクロスハート』のホームページで公開される。


 その金額は、5万3500円。


 思っていた金額より、ずっとずっと低い。


 寄付してくれたくれた人は10人で、もちろん振り込んでくれた人は、みんな個人名だ。


 最高額の寄付金額は1万円で、最低額は500円だ。


「では、寄付して頂いた方に、お礼を言うでごじゃる」


「大丈夫。これは『ジェイクロスハート』の活動の為の寄付ゆえ、公職選挙法違反にはならないでごじゃる」


「あっ……ありがとうございます」

 それしか言葉は出なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ