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諸君!これがプロである!!~ゲーム実況者の日常~  作者: 椋木美都
小学生編

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 第5話『ネットゲーム0日目』

敦斗「テディってニコチューバーだったんだ。しかも一人……」

糸哉「僕だけじゃNico・Tubeのアカウント作れないから協力者の力を借りてるけどね……って本編始まるよ!そろそろ意識戻して!」

糸哉は敦斗にPC版サートナイトの基本操作を教え、ソロのカジュアルマッチを一回プレイさせることにした。


「どう?」


「敵が全然いない……と思ったらいた!」


「たまにあるよね。操作の感覚はどう?」


「多分大丈夫……いやでも待ってまだ間違えちゃあああ」


「おぉ!完全にテンパって負けたと思ったら勝った!この調子で目指せクラトラ(優勝)!」


「い……いったらぁ!」


その数分後。敦斗のミラクルプレーが止まらない光景に糸哉は驚愕し、初プレイ実況を録画しなかったことを後悔した。


「くっそー無理だぁ……」


「ナイスプレー。ホット実況者の才能あるよ。取れ高凄かったもん」


「えーマジ?次はテディも一緒にやろーよ!」


「いいよ。じゃあ次はホットも知ってるこのゲームを――」


☆彡

サンドボックス型アドベンチャーゲーム『レゾンクラフト』。略称はレゾクラ。膨大な世界の中で様々な『チャンク』という素材を組み合わせ、拠点を築きながら探索を進めていく形式のゲームである。その自由度の高さから世界的な人気を誇っていた。


敦斗はテディのアカウントを借り、糸哉はノートパソコンで別のアカウントからログインする。同じ空間にいるが、折角なので会話は直接ではなくボイスチャットアプリ『スカイコード』越しに、互いにヘッドホンを付けてプレイする形になった。


「移動キーはサトナと同じだよね?ダッシュは……え?何か視点バグった!」


「あー違うキー押してる。視点変えたら自分が何やってるか見えるよ」


「えっ視点変えれるん……わーー!屈伸してるー!」


「ダッシュは歩いたまま……ってホットー!ダッシュジャンプでどこ行くのー!?」


糸哉は敦斗に武器の作り方やスタミナの回復方法、モンスターの倒し方などを教え、アレキサンドライトを見つけるという目標を立てた。


「――まぁこの部屋見れば分かると思うけど、僕の親はゲーム実況に割と協力的で。ホットのお父さんお母さんにも泊まった時に『後々ホットと一緒にゲーム実況したいです』って話したけど、二人共あっさり賛成して凄いビックリした」


「え!あー。それって二人が泣いてた時?」


糸哉は肯定し、狩った羊毛で敦斗の分のベッドを作る。


「父さんにゲーム実況やりたいって言ったらこの家でやれって言われて。ここには父さんの大学時代の後輩……兄さんみたいな人と僕の二人で住んでるんだ。兄さんは社会人で今日は会社休みだけど、多分今頃彼女とデート中じゃないかな」


「え、へぇー。じゃあテディの親は……」


「別の場所に住んでる。ちょくちょく会ってるから別に寂しいとかはないよ」


「――」


敦斗はうっかり落下死してしまい、復活地点で必死に頭を回転させた。


――テディはいつも俺が聞きたいことを先回りして答えてくれる……本当に本心?


「テディって前俺が何話したのって聞いた時みたいに、肝心な部分をわざと隠すクセあるよな……」


「……ごめん秘密が多くて。これでもホットには話してる方だよ。もうこれプロのメンバーだからね」


「俺の勘ヤベーから。テディの嘘や誤魔化しも全部見抜くからな!」


「えっ。てことはホットの後ろにバースターが来てるのに黙ってることもお見通しだった?」


「ハ?ギャー!!」


敦斗が後ろを向いた瞬間――近づくと爆発する性質を持つ敵キャラクター『バースター』が彼の真後ろで自爆した。


「ホット……生きてるだと!?」


「ひ、瀕死だけど耐えた……!あれ!?ご飯食べられない!」


「強運……食べれないなら少し待てば自然回復すると思うよ」


アレキサンドライトが眠っている洞窟にはバースターの他にアンデッドやザトウムシなど危険がいっぱい。糸哉はたいまつを左手に持ち、敦斗に洞窟の道案内を始めた。


「アレキサンドライトってどれくらい深いとこにあるの?」


「んーと……あ、でもここのどっかには絶対ある」


「うわー大洞窟!敵の量エグ!どうやって下りるの!?」


「こうやって石を階段状に……」


広大な洞窟はレゾクラの世界において敵が潜む魔窟でもある。日の当たらない場所が彼等の生息域だからだ。糸哉は先程作った剣と盾を構え、自ら敵キャラクターの群れの中へ突っ込んでいった。


「僕が引き付ける!だからホットは先に行って!」


「アッツ!任せて……いや!馬鹿野郎テディを置き去りになんかできるか!」


「そこで仲間想い出さないで!?丸腰&ツルハシで挑むホットの方が馬鹿犬だよ!あーすぐボロボロになっちゃうからツルハシで敵殴っちゃ駄目ー!」


糸哉は戦いながら敦斗を説得し、ひとまず彼を無事に送り出すことに成功した。


――新手が湧く前にホットと合流しなきゃ……アレキサンドライトが近くにあったらいいけど。


「あ!それっぽいの見えた!」


「ナイス!」


流石ミラクル!と糸哉が戦闘を中断して合流しようとしたその時、敦斗は息を弾ませながら不可解な一言を放つ。


「すげー!もしかしてこれアレキサンドライトの部屋!?」


「え?」


――部屋?アレキサンドライトチャンク()がアーチ状に生成されてるってこと?


「……!?」


糸哉が敦斗を追って駆け込んだその先に――あり得ない光景が広がっていた。


深成岩(しんせいがん)チャンクが続くはずの壁一面が、アレキサンドライトチャンクに置き換わっていたのだ。


淡い緑だったはずの壁面は提灯の光を受けてゆっくりと紫へと移ろう。宝石の一つ一つがただの黒にならず、深い藍や葡萄色となって――レゾクラの摂理を完全無視した構成は、洞窟の中に不意に現れた異物として冷ややかな光を放っていた。


「えーー?」


――アレキサンドライトチャンクは作業台じゃないと作れない……ましてや部屋が自然生成するなんて有り得ない。


「まさか……」


「やったアレキサンドライトチャンク!テディ!これ塊じゃなくて宝石みたいな形に……どうやってバラしたらいい?」


何も知らない敦斗はその場で歓声をあげ、夢中で周りのチャンクを掘っていく。知識のある糸哉は、人工物でしかない異常を目にして別方向の驚きに襲われた。


「……ホット。これは多分――ってあれ」


糸哉は部屋の奥に書見台を見つけ、敦斗に置かれていた本を読むよう勧める。


「えーっと『愚かな侵入者どもよ。神の裁きを受けるがいい』……!?」


「やっぱりぃぃ!?」


『ドドドドドドドドドォーーーン!!』


「ぎゃああーーーーー!?」


敦斗が読み上げたと同時に、地面の下に仕掛けられていたダイナマイトが全て起爆する。当然即死した彼等は途中で更新した復活地点ではなく、黄金チャンクで建築された部屋の中で復活した。


「あれ!?洞窟前じゃない……初期地点?」


「え?え?どゆこと?今度はゴールドの部屋!?」


「はぁ……多分こういうことだよ」


糸哉が右手を振った先には――『ドッキリ大成功!』と書かれた看板が立っていた。


「シェン出てこーい!いるなら言ってよ!」


『やれやれ……』


「!?だ、誰!?」


『新入りのホット・ドッグよ。俺は諸君!これがプロである!!チャンネルの所有者シェン・ロンだ。気軽にシェンと呼べ』


手術着のスキンに身を包んだシェンはボイスチャットで話さず、レゾクラ内のチャットで敦斗に挨拶する。糸哉は「マジでいつ入って来たの……?」と画面左下に表示されるチャットログを見返すが『Shen_UP』がログインした履歴は残っていなかった。


「テディ何この人!神なの?外科医なの?メディカルドラゴンなの!?」


「落ち着いて。外見(スキン)が手術着なだけで中身は引きこもりのヘビースモーカ」


『Teddy_KPはShen_UPに抹殺された』


「テディー!?」


言い切る間もなく糸哉はシェンのアレキサンドライト剣に切り伏せられ、敦斗の嘆きだけが残った。メディカルキャップとサージカルマスクで表情は読み取れないが、シェンの前でジョークや悪口はご法度である。


「はいごめんごめん。ホット。シェンは『諸君!これがプロである!!』のサポート枠なんだよ。このチャンネルが成長しやすい環境作りを裏で色々やってくれてるんだ」


「えっ凄……だから神!?」


『皆が俺をネット界の神だと恐れているだけさ。ま、俺の指にかかればテディなんて一瞬で溶岩の海に沈められる』


「エグ!何でそんな人がテディのチャンネル手伝ってんですか!?」


「それはまた今度。シェンの家は夏休みのどっかで行こうと思ってたんだ」


『邪魔をした。挨拶はまた会った時に改めて行おう』


「あっ……さよーなら!」


敦斗は別れを惜しみながらシェンに言葉をかけ、黄金の壁を手で掘り始める。それを見かねた糸哉は手っ取り早く設定を切り替えて出口を作った。


「敦斗のお父さんお母さんともちゃんと話して同意をもらったら、ホットの家に実況用の機材と設備一式を送るよ」


「え!俺の部屋にこれが……!?」


「勿論、受験に受かるまでネットゲームは僕と一緒にやる時だけだよ?」


「マジか……!?うわ絶対合格する!えーシェンにも早く会いたい!」


こうして糸哉は同居人とシェンの力を借り、活動内容・活動時間・収益分配などの必要事項を明記した保護者同意書を作成した。

シェン「本チャンネルは個人じゃなくて法人で動いてます」

敦斗父「あ、そーだったんですか!?(思ってたより凄いちゃんとしとる!!)」

敦斗母「え?テディ君って個人勢じゃないの?」

シェン「正確には違います。その方が個人事業主のままでいるより色々メリットがありますから」

テディ「実は僕もそのあたりはシェンと父さんに丸投げしてるんで曖昧なんですよね……」

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