閑話③『有料会員限定ブログ』
『諸君!これがプロである!!』チャンネルには視聴者が月額で支援できる有料会員という機能が存在する。ただし有料会員向けの内容は週に一度のブログ更新と生配信のアーカイブ視聴のみで、会員限定の生配信は行われない。その分、料金は破格の百円に設定されていた。
「来週からホットもブログ書いて。担当曜日は土曜ね」
「テディが金曜日なのってメンバーカラー?」
「うん。やっぱ僕はゴールデンじゃないと」
「俺は茶色=土色……。ま。別にそれはいいんだけど」
ホットはどこか納得がいっていない口調で、最新日に更新されたテディのブログに目を通す。
『囲碁の夢』
やっほーテディです。最近西京焼きにハマってます。駄洒落じゃないです。
そろそろ視聴者諸君もホットに見慣れた頃でしょうか。僕も最初はコラボじゃない動画の編集で僕以外の声に字幕を当てるの凄い新鮮!って思ってたんですけどようやく慣れてきました。
夢のグループ実況はまだまだこれから。なんたって目標六人なんでね。これからもよろしくどうぞ……と先週の分をコピペしたのには理由がありまして。
※決して文字数稼ぎではございません。
そんなことを書いたからか編集のし過ぎか分かりませんけど、僕の夢にホットが出たんですよね。タイトル通り僕とホットが囲碁で遊んでる夢です。それでは回想いってみましょう!
ほわ~ん、ほわ~ん、ほわわわ~ん。
視聴者諸君は囲碁についてどれくらい詳しいですか?僕は全く知りません。
夢主が碁盤の上に白黒の碁石を置いて、陣地を取るゲーム程度の知識しか持っておらず……(辛うじて碁石を置く場所はマスの中じゃなくて碁盤の交点なのは分かる)。
僕が黒でホットが白で、順番に碁石を打ってったのはいいんですが……ホットが躊躇いもなく白で囲んだ僕の黒い碁石を引っ繰り返して自分の色に変えたんですよ。
もうオセロじゃん!冴えた頭で考えたらもうこれ囲碁じゃないじゃん!
でも夢の僕も同じことを何の疑いもなくやっちゃって。囲碁の道具を使ったオセロが暫く続くんですけど。盤面が進むにつれ僕の負けが濃厚になっていったんです。
夢の僕=深層心理なのか、わー!っと腕で置いてあった石を全部薙ぎ払っちゃいました。(最低)
そんなモラルに反した行いは未成年で卒業したはずなんですが、夢の中の僕はまだまだ負けず嫌いのピュアな少年だったみたいです。
夢あるあるなのか、僕があんな事しても第二回戦がしれっと始まります。それでまた負けかけて碁盤ブン投げてホットが真顔で碁石集めて……を計三回繰り返しました。ホットよく付き合ってくれたな。イケメンは夢でもイケメンだったんだ。
流石の僕も『次で最後にしよう!』とホットに言ったところでウィィィン……パチッと目が覚めました。夢の割には内容がシンプルだったので今でも覚えてます。
また今度ホットとオセロしよ。で負けそうだったら薙ぎ払ってみます。多分碁石みたいに綺麗には……多分無理かも。
それではまた来週ー。
☆彡
ホットは先週のブログでも思った一言を呟く。
「これいる?」
「いるよ!基本コメントに反応しないけど割と結構な人が読んだうえで返事書いてくれるし」
「あー。そう見ると大晦日のブログ凄い反応……ってこれシェンも書いてんの?」
「気が乗った時だけ書いてしれっと投稿してるよ。シェンのブログは海外勢の反応凄いんだよね」
「俺そんな毎週面白い事書けない……」
――文章ちゃんとしてなくていいのはテディので分かったけど。
「大丈夫だよ。それに……」
沈むホットを引き上げるように、テディはブログをする最大の利点を明かす。
「……ブログやってますを言い訳にSNSの更新を誤魔化せる。ホットに至ってはアカウントそのものを作らずに済むよ」
「ブログ最高じゃん!」
――SNSとか色んな人いて怖いし呟くことないし無理無理!正直テディが作らなくていい。寧ろ作るなって言ってくれたの地味に助かったんだよな……。
リアルの生活で嫌でも承認欲求が満たされまくっているホットにとって、SNSは完全に見る専である。おまけに年齢を偽ってゲーム実況をしている以上、秘密が露見するリスクは少しでも下げておきたかった。
「まぁ気楽に書いてよ。短くても全然いいから」
とテディに言われ、ホットが肩の力を抜いて書いたブログは――
『腰痛い』
――年齢バレを徹底的に回避した内容だった。
どうもホットです。職業柄?本番と妬み嫉みには強いですが……
最近、腰がめちゃくちゃ痛い。
本当にやばい。昨日とか一睡もできなかった。
立ってても痛いし、歩いても痛いし、寝ても痛い。
逆に「じゃあいつ楽なんだよ」って話なんだけど、座ってる時がまだマシという謎の状態。
俺のことまだよく知らない人だと
「どうせ夜にエクスタシートーナメントしてたからでしょ?」とか「ホットリミットによる弊害か?」とか邪推するかもしれないけど
理由はシンプルに年です。
お恥ずかしながら。寄る年波には勝てません。
「本当に恥ずかしいね」やめて?
さすがに限界を感じて市販の鎮痛剤を飲んだんだけど、これがめちゃくちゃ効く。
あの痛みは何だったんだってくらい楽。
若い頃は「特にスポーツやってないのに腰痛?もうおっさんじゃん」とか普通に失礼なこと思ってました。大変申し訳ございません。
正直、全然リアルに考えてなかった。でも来る時は本当に急に来るの辛すぎ。
これ書いてる今も痛いので薬飲んで整体行ってきます。
というわけでこれを読んでる諸君!腰、ちゃんと労わってますか?労わっていこう!
あ、なんかオススメのストレッチやグッズがあったら教えてください。
それではまた土曜日に。
☆彡
シェンは記念すべきホットの最初のブログを読んで一言。
「おじさんさぁ……。誰がここまで枯れさせろって言った?」
「流石これプロのホット。もう三十回くらい書いてる人みたいな文っ……」
「おいテディ!エクスタシートーナメントやんな!ホットにちゃんと言え!」
「してない……これはホットリミットによる弊害じゃないよ!」
「ちょ、二人共やめて?」
テディが感心して笑う中、シェンは見切りをつけてホットにツッコミを入れた。
「駄目じゃねーけど、ほんまにこれが初回でええん?無難に挨拶や意気込みとかでええじゃろ」
「改まって文に残すの恥ずい」
「腰痛で苦しんでるってバッドステータス(しかも嘘)を残す方がダリィわ!というか何で腰の話?」
「これほぼ父ちゃんの話」
「だからおじさんの解像度高かったのか……ってホットのお父さんってまだ三十代だよね?」
「最近いい整体見つけたらしいよ」
「そ、そっか……ホットのお父さん……」
ホットの両親に見せた結果、爆笑と共にゴーサインが出た。シェンの予想通りコメントは困惑と驚きで荒れたが――
「あ、父ちゃんそのストレッチって……」
「うん。コメントにあったやつ。結構……良いよ!」
――中年層の視聴者からの共感も多く寄せられたという。




