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第十話 人質妃、気になる寵妃探し

空回りの予感

 

 玫玫と晴藍はお茶を飲みながら緑での出来事を振り返り、そして唸っていた。


「私が確かに青で聞いていた噂は終末兵器だった」

「私も父から聞いていたのは恐ろしい終末兵器です」

「しかし、景旬殿から聞いたものは真逆なものだったな」

「全てを浄化する術、でしたよね」

「術というのが仮に兵器だったとしても辻褄が合わない」 

「それに……陛下は何故他国の土地に詳しかったのでしょうか」

「終末兵器だけを探していたのに、謎が膨れ上がるばかりだな。一つずつ潰していきたいところだ。でも、まぁ……太星殿が素直に教えてくれるとも思わないしな」


 玫玫と晴藍は互いに大きなため息をついてお茶を飲んだ。


 

「あ!」


 玫玫はふと何かを思い出したように声をあげた。


「晴藍。私もう一人の寵愛されていると言われる妃の方を探してみようと思います」

「ん?」

「景旬様も仰ってたじゃないですか。寵愛されている妃がいるって」

「いや、玫玫だからそれは」

「何かの間違いで私と晴藍は連れ去られたわけですが、寵妃様なら陛下から終末兵器についてなにか聞いているかもしれません!」

「め、」


 玫玫は晴藍と作成した大まかな王宮内の地図を開いて首を振って見まわした。

 寵愛されている妃が住めそうな場所を検討していく。


「寵妃様なら陛下のお部屋の近く? でも、お見かけしたことはないから……王宮とは離れた場所で大切に大事に過ごされているのかも……当然大きくて、豪華な場所にちがいないですよね!」

「まって玫玫」

 玫玫には晴藍の言葉は聞こえていないようで、拳を握って力強く立ち上がった。


 あの陛下が寵愛している姿は想像できないけど、お会いしてみたい!


 玫玫は前のめりで翌日から自分以外の妃について調べ始めたのだった。

 しかし、玫玫の気合いとは裏腹に侍女や侍従に聞いてみたものの皆が同じく首を傾げるだけだった。


「王宮内に知ってる人がいないとなると……」


 やっぱり、寵妃様は王宮内にはいないのかもしれない。


 玫玫は侍女や侍従が一度も見たことがない、いるはずがないと言うの聞いた上でいくつかの可能性を思いつく。


「誰も知らないってことは……誰にも知られたくないのかも。陛下が誰にも見せたくないくらい大切で大事なお妃様」


 玫玫は侍女や侍従に訊ねる内容を変えることにした。


「あの、陛下は……王宮の外へ頻繁に出かけられることはありませんか?」

「あぁ、それなら洛という御者が詳しいかと……陛下が馬車でご移動される際は必ず御者を担当する者です。常に馬小屋にいると思います」


 玫玫の問いかけは正解だったようだ。



 馬小屋に近づくと玫玫を見かけた侍従たちは血相を変えた。


「玫玫様! なぜ、このような場所に! お戻りください」

「いえ、用があってですね。洛さんという方はいらっしゃいますか?」

「洛、ですか? 少々お待ちください」



「お待たせいたしました。洛にございます」


 大柄の男性は小さく身体を丸めて手を組んで、地面に膝を付け頭を下げた。

 玫玫は嫁入りをした日、馬車の御者を担っていた男性だった。


「陛下の事でお伺いしたいのですが」

「皇帝陛下のことですか?」

「陛下は王宮の外へ頻繁に出かけられたりしてますか?」

「玫玫様と言えど、陛下の外出のお話等は……私の口からは」


 洛はとても口が堅かった。

 頑なな様子から陛下に信頼されていることに納得がいった。だからこそ、玫玫は引き下がれなかった。

 

 洛さんは絶対に何かを知っているに違いない。


「私が陛下と夫婦でいることの一大事なのです!」

「い、一大事ですか」

「そうです! 私は陛下を知らないといけません」


 寵妃様のことも!


 一進一退を繰り返す玫玫と洛。

 折れたと言うよりは折らされてしまったのは洛だった。


「陛下のためなんです! 陛下がもっと、自由に寵妃様にお会いできるように!」


 そう、寵妃様にお会いして堂々と王宮で暮らしても大丈夫だとお伝えしなくては、私に気を遣っているのだとすればそれは不要だとお伝えしたい。


「陛下の……ためですか……」

「はい!」

「……陛下は月に二度ほど、真夜中に出かけられますね」

「真夜中に?」


 自分で問いかけておいて、とても驚いた。

 

 ……本当に寵妃様が存在するんだ。


「だいたい……満月付近なので、あぁ、今日か明日くらいでしょうか」

「ば、場所はわかりますか!?」

「えぇ、馬車を走らせていますので……」

「私を! 連れて行ってもらえませんか?」

「真夜中にですか? それはいくら玫玫様の御命令でも」


 どれだけ玫玫が懇願しても、御者は眉をハの字にするだけだった。



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