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ゴリラ出現

ゴリラ【ゴリラ】

[意]類人猿中最大の動物。西アフリカの森林にすむ。

俺の席の近くで、会話が聞こえる。


「ゴリ子、お菓子いる?」


伊藤唯(いとう ゆい)という名の女子が、ゴリ山ゴリ子なる女子にお菓子を差し出した。


「ポテチ?あー、いるいるー♪」


ゴリ子は差し出されたポテチの袋をを取り、むさぼり食い始めた。


「バリバリ!モグモグ」


その姿はまるで、ゴリラのようだった。


笑いを堪えている俺に、伊藤が話しかけてきた。


「須藤くんもいる?」


「……あ、ああ」


差し出されたお菓子を取り、食べる。


「うん、美味い」


「良かった♪」


ゴリ子という名のゴリラは、いまだポテチをむさぼり食っている。


「やっぱダメね。バナナが食いたいわ」


ゴリラだけにか?


「………ぷっ……く…」


危ない!笑いかけた!


「どうしたの?須藤くん」


伊藤が不思議そうに話しかけてきた。


「………い、いや……何でもない」


なんとか堪えた。


ふと、ゴリ子の方を向くと、今度はバナナをむさぼり食っていた。


「………………」


ぶふぅぅぅぅうぅうぅうぅっっwww

ゴリラがバナナ食ってるようにしか見えねぇぇwww


大爆笑しそうになったので、素早くゴリ子から視線を逸らした。


「ふんっふんっ!!モグモグ!ふんっふんっ!!モグモグ!」


鼻息荒くバナナをむさぼり食うゴリラ……もといゴリ子。


「……ぶっ!」


ダメだ!ゴリ子の方を見てはダメだ!考えてはダメだ!


「んーダメね。足りない」


いつの間にか食べ終わっていたゴリ子が呟いた。


ゴリ子は鞄をあさり始めた。


ふぅ……。やっと見慣れてきた。

これで笑わずに済みそうだ。


「あー、あったあった」


ゴリ子が鞄から、炊飯器を取り出した。


何で鞄の中に炊飯器入ってんだよ……。


周りの目など気にもせず、米を頬張りだすゴリ子。


「はふっはふっ!モグモグモグモグ!はふっはふっ!モグモグモグモグモグモグ!」


あっという間に、炊飯器の中の米が半分無くなった。


「はふっはふっ!モグモグモグモグモグモグ!はふっはふっ!モグモグモグモグ!」


そして、遂に炊飯器の中が空になった。


「ぶへー食った食った」


おめぇはすげぇよ。

たった1人で、おかずも無しに……。

今度はもっとゴリラ化したおめぇに会いてぇよ。

じゃあな!


「じゃあな!」


「……ど、どうしたの?須藤くん……」


伊藤が、不思議そうに言ってきた。


「……え?あ、いや……」


「何?いきなり?キモいんだけど」


ゴリ子に言われた……最悪だ……。


「そういや須藤って犬みたいな顔してるわよねwww」


初めて言われたよ、そんなこと。


俺をいじるのにも飽きたゴリ子は、さらに鞄をあさり始めた。


「他に何か無かったかしら……」

まだ食う気らしい。


「………何も無いわね……」


「………………」


俺は知っている。


彼女が、空腹に耐えているときの機嫌の悪さを。









授業中、予想通りゴリ子の機嫌はすこぶる悪かった。


「イライラ……」


イライラを口で言ってるよ、ゴリ子。


「イライライライライライライライライライライライラ……」


言い過ぎだよ……。

みんなの注目浴びてるよ……。


「イライライライラ……ふんっふんっ!!イライラ……ふんっふんっふんっ!!」


鼻息荒くなってきた。


先生めっちゃ見てるよ……。

迷惑そうだよ……。。


「じ、じゃあ、これ解ける人」


先生が生徒に問いかける。


しかし、手を挙げるものは、誰もいなかった。


1人を除いては。


「はい!ふんっふんっ!!」


ゴリ子だった。


「あ……じゃあ、ゴリ山さん……」


「3Xふんっ3乗ふんっふんっ+20ふんっX-7ふんっふん!!です」


もはや、何て言ってるか分からん。

因みに、3X3乗+20X-7と言ったらしい。

……たぶん。


「は、はい……正解です……」


先生めっちゃ困ってるよ……。


席に着くゴリ子。


「イライライライラ……」


その後も、ゴリ子のイライラは続いた。



昼休み、ゴリ子のイライラは絶頂に達していた。


「イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ……」


……うっせぇぇ……。


黙れって言いたいけど、恐くて言えない。


「どうしたのー?ゴリ子ー?」


脳天気な伊藤が来た。


「……オラに元気を分けてくれ……」


ノーマルな悟空のセリフだが、言った者はすでに大猿化していた。


「バナナ、いる?」


バナナを差し出す伊藤。

流石、優しいな。


「……すまねぇな……唯……」


バナナを掴むゴリ子。


俺はこのシーンを見て、ある場面を連想した。


悟空の界王拳を受けて、倒れ込むナッパ様(ゴリ子)。


「た、助けてくれ……。べジータ(伊藤)……」


手を差し伸べるべジータ(伊藤)。


その手を掴むナッパ様(ゴリ子)。


「へへっ……すまねぇな……」


「なあに」


ぶんっ!


次の瞬間には、ナッパ様(ゴリ子)は天高く投げ飛ばされていた。


それをしたのは、他でもないべジータ(伊藤)だった。


「わあああーーっ!!な、なにを……!べジータ(伊藤)!べジータァ(伊藤)ーー!!」


全身に気を溜めるべジータ(伊藤)。


「動けないサイヤ人など必要ない!!」


ナッパ様(ゴリ子)へ気を放つを撃つべジータ(伊藤)。


それが命中するナッパ様(ゴリ子)。


「……べ、べジー………!」


直撃し、絶叫するナッパ様……つーかゴリ子。

べジータ(伊藤)の攻撃により、破壊されていくゴリ子。

消えていくゴリ子。

跡形も無くなるゴリ子。


一瞬で、ここまで連想してしまった。


「須藤くんも……食べる?」


「な…なな……なんてやつだ……自分の仲間まで殺しちまいやがった……」


伊藤に向かって言い放ってしまった。


「えーと……え?」


「ごめん。何でも無い」


まさか、クリリンのセリフを発してしまうなんて、自分でも予想していなかった。


「で、いる?」


「ああ」


俺は差し出されたバナナを受け取る。


皮を剥き、食べようとする。


そのとき


「!!」


俺は殺気を感じた。


……後ろから、何者かが俺を睨んでいる。


まるで、蛇に睨まれた蛙の如く俺の体は硬直してしまった。


俺は恐る恐る振り返る。


「……………!!」


そこには


「ふんっふんっ!!」


鼻息の荒い猛獣がいた。

つーか、ゴリ子。


「ふんっふんっふんっふんっ!!」


ゴリ子の視線の先には、俺の持っているバナナがあった。


「ふんっふんっ!!」


ゴリ子の方を見ると、さっきまで食っていたバナナが皮だけになっていた。


つまり、よこせってことか。


「やらんぞ」


「はぁ!?別にあんたの持ってるバナナ食いたいとか言ってないし!ふんっふんっ!!」


墓穴を掘ってるぞ、ゴリ子よ。


「じゃあ食うか」


「ストッふぅーん!!」


ストップと鼻息が混じったな。


「なんだよ?」


「取引をしよう」


「ほう、取引とな……?」


「そう、バナナを賭けた取引」



「……いいだろう……」


正直どうでも良いが、おもしろそうなので乗っておく。


「で、取引の内容は?」


「あんたのバナナと、あたしのバナナの皮×10を交換よ。ふんっ!!」


「いらぬ」


「冗談よ。本当はこっち」


ゴリ子は、鞄の中から何かを取り出した。


「……何だそれ?」


紙状のものだった。


「……知りたい……?ふんっ」


ゴリ子がニヤニヤしてる。


「?……ああ」


「伊藤の半裸の写真」


「!!」


伊藤の……半裸……。

俺の頭の中で、伊藤が半裸の姿を想像してみる。


「…………………」


たらー……。

あ、鼻血でた。


なるべく気にしないようにしているが、伊藤はいつアイドル事務所からスカウトされてもおかしくない程の美少女なのだ。

それの、半裸の写真があるなんて……。

因みに、伊藤は何か知らんけど、どこかに行って今はいない。


だらーー……。

やべ。鼻血の量がやべー。


写真は、裏返されていて見えなくなっている。

…………見たい…………。


「どうする?交換する?ふんっふんっ!!」


「…………当たり前だ!」


バナナをゴリ子に渡し、写真を取る。


「……伊藤の……半裸……はぁはぁ……」


鼻血を垂らしながら、知人のポルノ画像を見ようとする俺。

……サイテーだな……俺……。


写真を裏から表に。


「……伊藤の……半裸……はぁは…………………………………………………………………は?」


ゴリ子から貰った写真には、半裸のエスパー伊藤が写し出されていた。


「………………計りおったなぁ!!ゴリ子めぇ!!」


「何よ。間違ってないじゃない。あたしは『伊藤』って言っただけよ?『伊藤唯』なんて一言も言ってないわよ?ふんっ!!」


「…………………」


不覚だった……。

ゴリ子にこんな知恵があるなんて……。

ゴリラのくせに……。


「もぐもぐもぐもぐニヤニヤ」


にやけながらバナナを頬張るゴリ子。

その顔が、腹立たしい。



ゴリ子の顔を見て嫌悪感を感じていると、伊藤が帰ってきた。


伊藤の姿を見つけると、ゴリ子がにやけだした。


「唯ー、須藤が……」


「!!」


こやつ……さっきのことを伊藤に言うつもりか……!


「須藤くんが……どうしたの?」


「さっき須藤が……」


「あぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」


必死で抵抗。


「ど、どうしたの……須藤くん……?」


「……あはは……。ゴリ子、ちょっと来い」


「ふんっ!!」


ゴリ子と共に廊下へ出る。


「?」


伊藤は訳が分からず、首を傾げていた。





「取引をしよう」


「ほう、取引とな……?ふんっ!!」


さっきと立場が逆になっていた。


「……要求は何だ、ゴリ子……!」


「バナナ1年分」


「!!…………そ、そんなの無理に決まってるだろ!」


「唯ー、須藤が……」


「だあぁーー!分かった分かった!」


「ふんっ!!ニヤニヤ」


このゴリラがぁ……!


「……だが、1年分は無理だ。いくらか譲歩してくれ」


「じゃあ、1万円分」


「高すぎだって……」


「唯ー!」


「だあぁぁぁぁ!!分かった分かったぁ!!」


「ふんっ!!ニヤニヤ」


腹立たしい……。

戦略的なゴリラめ……。

殺そうか?

いや……止めとこう……逆に殺されそうだ……。




次の日、近辺のスーパーからバナナの姿が消えた。

作者は、ドラゴンボールの大ファンです。

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