22 父side
「ようこそおいでくださいました」
自分と妻、そして愛娘の麗凛三人揃って皇子たちに首を垂れる。
ちなみに、翠零…だったかな?翠嵐だったかも…は、私達の後ろの方で使用人と一緒に並んでいる。
くそっ!あいつのせいで麗凛の代わりに嫁がせるつもりだった孫氏が大層お怒りなんだぞ!
まあいい、いよいよだ。まさか、麗凛が皇子殿下に気に入ってもらえるとは…!
…しかし、通達が来たのはつい昨日。意外と来るのが早かったな。
するとそのうちの一人、白髪のお方が私達の後ろの方に視線を向け二度瞬きした。
なんだ?何か気に触れることでもあったのか?
すると、青髪のお方がまるで、天女かと錯覚するような美しい笑みを浮かべ、言い放つ。
「ところで、この家にはもう一人お嬢さんがいましたね?今どちらに?」
一瞬で空気が張り詰め、凍りついた。妻が、翠零を睨みつけ、歯が砕けるのではないかと心配になる程強く食いしばる。
私はたらり、と額から流れた汗を拭うことなく慌てて笑顔を取り繕った。
「あ、あの子は今体調が悪いそうで…」
「ふむ。ではそこにいる少女は幻か?」
黒髪の方が翠零のいるあたりを指差した。私はますます焦る。
くそっくそっ!やはりあいつ何かしたな?何をした!わざわざこの一番大事な時に急に帰って来たのは皇子に気に入られるためだったのか?
これだからあんな女の娘は!!
「なぜ…」
「なぜ、と言うが、皇妃になる者の家を調べ上げるのは当然だろう?」
穏やかに笑う黒髪のお方。その笑顔を前に私の肌はぞわりと粟立った。
「やっ、ははは…。どうしても皇子方にお会いしてみたいと聞かず…申し訳ありません」
かなり苦しいが、なんとか言い募り、頭をかく。
あぁあ!くそ!またあいつのせいだ!あの疫病神めが!まぁいい!皇子は五人いる。そのうちの一人にでも麗凛に気があれば良いのだ。
◇◇◇
客間に五人を通した私は、皇子殿下を麗凛に任せて客間を出た。
「翠零!お前、どういうことだ!」
「どういうことも何もないと思いますけれど。彼らのいう通り、皇妃を迎える家を徹底的に調べ上げるのは常識ですね。
…あぁ、もしかしたら、今まで私にしたことも、知られているかも知れませんね」
「お前にしたこと?私のことを脅そうとしているのか?下手なことは辞めるんだな。特に酷いことをしたわけでもなければ、生活費だって払ってやったんだ!感謝してほしいくらいだ!」
私が怒鳴ると、翠零が何かを諦めたように溜息を吐き、そして、静かに目を合わせてくる。
その何の感情もこもっていない、ひたすら無機質な表情に私の背中に汗が伝うのを感じた。




