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18 紅炎視点

たいっっっへんお待たせいたしました‼︎

書くのが間に合わないのでこれからもしばらく開く可能性があります!すいません!

「だとすると、やっぱり妃にするのが一番手っ取り早い!」


「そうじゃないだろう月!何故解らないんだ…!」


「ほらほら、二人とも落ち着いて」


翠零を金龍宮に連れ帰った日の夜。翠零が怒って出ていった後解散した俺たちだったが、再び麒麟邸に戻ってきていた。

頭を抱えて歯を食いしばる月と、身を乗り出して反論する蒼風。それを嗜める玄瑞。

…うん、軽い地獄絵図だな。

さっきから会話は堂々巡りで月の発言に反論する蒼風も、珍しく自分が何を言いたいのかわかってねぇ。

玄瑞は嗜めるので精一杯だし、白嵐は飽きたのか眠っている。衣に皺がよるから床で寝んなっていっつも言ってるっつーのに。


「ったく…」


俺は朱雀の羽織を脱ぐと、白嵐にかけてやる。朱雀は火を司る神獣だ。朱雀からもらった羽織はとてもあったかい。というかあっつい。

ただ、白嵐は眠る時に神通力の回復に全ての体力を使うから、かなり体温が下がる。こういう時に俺の羽織はちょうどいいんだわ。

すぅすぅと小さな寝息を確認した俺は振り返る。


「何故だ?何故違う!妃になるのは誰もが望むことじゃないのか⁉︎番は…番は一体何を望む?」


「だからそれが違うんだよ!何が違うのかは僕にもよく解らないけど…」


あいもかわらず空回りする会話。

でも蒼風、たぶんお前は半分当たっている。

…そうだ。

違うんだよ月。

俺はぎゃーぎゃーと言い争う二人に向かって口を開く。


「なぁ月、お前、この会議で翠零の名前を何回呼んだ?」


「…今それは関係ないだろう?」


月は訝しむような怪訝な顔をした。


「関係あるから言ってんだろ。

お前、翠零の名前ほとんど呼んでねぇじゃんか。

女じゃない。

番でもない。

俺たちが今見るべき本質は『翠零』なんだよ」


翠零という人間を考えなきゃなんねんだ。


「「「‼︎」」」


ま、そうは言いつつ、俺は翠零の気持ちはわかんねーけどな。


「俺は情報収集が苦手だ。

考えることもあんま好きじゃねぇ。

でもお前らはそーいうの得意だろ?なら、月たちなら出来んじゃねぇの?

何だっけ、えっと、そうだ。情報を統合して考えるってこと!」


月はあっけにとられたように固まって、数秒の後プハッと笑い出した。


「そうか!なるほど確かにな。紅炎、たまにはいいこと言うじゃないか」


月は倒れるように寝転がるとハーっと息を吐く。


「そうか…俺に足りなかったのはそれか」


月は…あいつは元々素直だったんだよな。でも周りの環境のせいで俺たち以外を信用できなくなり、歪んだ。

だからこれはもう一度、月が前を向いて立ち上がる、機会なのかもしれない。


俺は王になる気はない。何も望まない。強いていうなら、ここにいる全員が…いや、翠零もいつか、皆んなで笑えるように支えるだけ。

俺は一人瞼を閉じる。

そしてそこに割って入る声がひとつ。


「提案がある」


「うぉっ!…なんだよ白嵐、起きてたのか」


感情的になっていたところに入ってきた白嵐の声に焦りつつなんとなく恥ずかしくなる。けど、白嵐はそんな俺の言葉をガン無視して続けた。



「王を選んだ後、翠零を妃にしなければいい」



と────。



◇◇◇


俺は、翠零を含めたあの5人の中で一番恵まれている。

家が貧しいわけでもなく、危うい立場なわけでもなく、

父上や母上も────兄上も、俺をちゃんと愛してくれていた。

特に二つ上の兄上なんか、俺が12になるまでずっと俺をそばで守ってくれていたし、俺が見せてとせがめば、

朱雀の炎を使った技も見せてくれた。本当に優しい人だった。


そんな兄は、朱雀に選ばれた、候補者の一人だった。


兄は、生後六ヶ月の時の名前の誓いで朱雀に選ばれた本物の候補者だった。

兄はその役割に、緋く刻まれたその痣に、相応しくなるために、人より何倍もの努力をした。優しくて誠実で、でも、少し強かで。

俺はそんな兄上が大好きでいつもくっついて歩いていた。


けれど、

俺が12で兄上が14のとき、兄上は、チカラに喰われて死んだ。


たまたま、父上と母上は皇帝への謁見に行っていて

留守にしていた。

俺たち二人は、庭で兄上の朱雀の焔を見ていた。

別に二人きりだったわけじゃない。他の人間なんて何人もいた。側近やお世話係、下女。

たくさんの人間がいた。

でもさ、誰が考えつくってんだ?

まさか、敵が一週間以上前から広大な庭に隠れて、俺たちが両親のいない時に庭に出るのを待っていたなんて。


候補者の兄貴と俺を狙った刺客だった。

候補者の兄貴を殺し、その跡を継いだ次の候補者になる可能性が一番高い俺を殺すことで、自分の親族か、操りやすい子供に朱雀を継がせようとでも思ったんだろう。

…だいたい、目星はついてるけどな。


そうして庭に出た俺たちを襲った。

咄嗟のことが判断ができなくなった俺は腰を抜かし、兄はそんな俺を焔で守ってくれていた。

たくさんの使用人が殺された。

それはもう沢山の。

兄の奮闘により、刺客を拘束できたんだけど、

もうその時には兄は限界だった。


次の瞬間、強大な朱雀の神通力と炎が入り混じったものが兄の身体から溢れ出した。俺は初めて見る朱雀の凶悪な力に何もできず、兄が苦しみ悶え喰われていくのを見ているしかなかった。

やっとチカラが収まり、兄のところに駆け寄った時にはもう、兄は力に喰われて鼓動は止まっていた。


『あにうえぇっ!』


今でもあの時のことはよく覚えている。蒼白な力のない兄の顔。それでも最期まで俺を安心させるために浮かべようとした笑みが硬直したその顔に残っているのが辛かった。

幼い頃の自分がそう呼んで兄の体に触れた瞬間、俺の左胸には焼けるような痛みが走り、まだ兄の上でわだかまっていた熱が自分に入ってくるのを感じた。

今考えると、きっとあれは朱雀の神通力だったんだと思う。

それが当時の俺には兄上の残された命のかけらを吸うようで嫌だった。


◇◇◇


そうして俺は最愛の兄を失い、兄の代わりとして新たな候補者に選ばれた。

兄の命が失われたことで得られたこの力が、


力の特性も災いとしてどうしても好きになることができなかった。


俺は地位なんていらない。

真の王とかいう重い称号も俺の肩には不似合いだ。

この力も、いらない。

だからさ、朱雀、叶えてくれよ。

たった一つの願いなんだ。

今日も俺はじくじくとあの日から痛み続ける痣を抑え、

祈り、願う。


みんなが最後に揃って笑える。そんな未来を。


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