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10 再会

癒しの泉についての説明をするタイミングを逃したので、さらっと説明させていただきます。

癒しの泉は、皇帝しか場所を知らないと言われる幻の泉です。

その名の通り、その泉の水には治癒の力があり、死ぬ間際の人間でさえ、甦らせることができると言われています。

金龍と麒麟の力により作られたその泉は銀色ですが、昔の皇帝が、銀より翠って言ったほうが響きが綺麗だということで、翠の滴と表現しますが、銀色です。


説明を忘れていて本当にすみません!

「久しぶりだな、梨・翠零」


言い放つ金の目をした人に私は驚愕の声を漏らした。


「どうしてここに…。なんで私の名前…?」


手から離れた桃がベシャっと地面に落ちて潰れる。

相変わらず…いや、この間よりもさらに上等な服。

しかもその服に縫われた紋章は…

金の人の後ろに控えた青い目の人が、苦笑いを浮かべた。


「詳しいことはここでは話せないんだ。少し着いてきてくれる?」


私は反射的に言い返した。


「知りもしない、ほとんど初対面のあなたたちについてきてって言われて、はいそうですかって行くわけないでしょ。」


反抗的な私の言葉に陰に隠れた彼らの護衛が動く気配を感じた。

…マズい。たらりと汗が伝う。


黒の人が口を開いた。


「今ここで私たちに逆らうのは得策ではないよ。それはきみもわかっているよね?」


揶揄うような彼の態度にこめかみがひくついた。

そんなこと私だってわかっている。


「ついてきてくれるな?」


私はふっと息をついた。


「わかりましたよ、皇子殿下。」


***


あの5人の青年たちの服に縫われた紋章は、麒麟の刺繍だ。

麒麟の紋章を衣服に塗っていいのはこの国では7人だけ。

皇帝と皇后。そして皇位継承権のある、皇帝の息子、そしてその従兄弟たち四人。

確か皇帝の姉の息子一人と、皇帝の弟たちの息子、三人だったはず。

なぜか皇帝は皇位継承権をそれぞれに与え、その5人の誰かが次の皇帝としているのだ。

普通だったらそんなことせずに自分の子供に継がせるはずだが。


…ま、そんなことを考えても私には到底関係ない話だ。


だったはずなのに…


「なに?この状況…」


ガタゴトと揺れる馬車の中。

両隣に赤と黒の人。そして向かいには右から青、金、白の人。


なりゆきは数分前に遡る。


***


荷物をまとめて社殿の外に出た私を構えるように待っていた五人。


『下に馬車がついているから行くぞ。』


参道を駆け下りた先にあったのは三つの馬車。

それで誰がどれに乗るかって話になったんだけど…


『『『『『俺(僕、私)が翠零と一緒に乗る。』』』』』


『はい?』


流石に皇子と一緒の馬車に乗るのは気がひけるからと、一人で荷物を持って最後尾の馬車に乗ろうとしていた私は

ビシッと動きを止めた。


『いや、私一人で乗りますよ?もしくは馬に。』


『馬になんて大切な番を乗せるわけないだろう。俺と馬車に乗れ。』


言い差した私の言葉を金の人は一刀両断すると、私が乗ろうとしていた馬車に乗り込もうとする。


『おい、抜け駆けはずるいぞ!キリン!』


緋の人が叫ぶと金の人はムッと眉を寄せた。


『その名前で呼ぶな紅炎(グエン)


そのまま軽い口喧嘩を始めてしまった二人を笑顔でずりずりと隅っこへと引きずっていく黒の人。その様子を見て鼻で笑う白の人。

あの二人、が、ガキだ…。

そしてさっきからうーんうーんと悩んでいた青の人が口を開いた。


『じゃあ、みんなでおんなじ馬車に乗ればいいんじゃない?』


青の人がいちばんまともだと思ってたのに、変なとこ抜けてる…。


***


そういうわけで二つ目の馬車に私の荷物を載せ、私たちは一つ目の本来なら四人までしか乗らないはずの馬車に6人で乗ったのだった。

ちなみに三つ目は乗せるものもなく、護衛たちも訓練含めて歩くらしいので完全に手持ち無沙汰な感じでついてきている。

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