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09 蟠桃

社殿がある山の頂上に着くと私はふと上を見上げた。

空には満天の星。

自然と微笑みが浮かんでくる。


「綺麗だなぁ…」


皮肉なものだ。


今日はもう遅いし寝よう。

「失礼します」と言って社殿に入ると意外に社殿の中は暖かく、灯りもついていた。

端には布団もある。

───誰かいるのだろうか。

けれど人の気配は一切ない。


「使わせていただきます」


と黄竜に祈ったあと布団に入る。

そしてすぐに深い眠りに落ちていった───。



翌日、目が覚めた私は社殿の裏にある井戸で顔を洗って(ついでに山を散策して)戻ってくると、驚きに息を呑んだ。


「布団が…朝食まで…!」


なんと布団は綺麗に片付けられており、朝食まで用意されていたのだ。

旬の食材を使った副菜から、山の皮で取れたであろう川魚。

湯気が立っている汁物になかなか食べられない白米!

更には食後の甘味に桃が切り分けられ器に盛られていた。


「えっ、怖い怖い怖い。この神社人居なかったよね?」


昨日は疲れすぎてあんま気にしなかったけど考えてみれば鳥肌モノだ。

流石の私も顔がひきつる。

そっと片足を後に引く、と


ふわっ


いきなり閉ざされた社殿に入ってきた風が社を通り抜け、後に残るのは微かに重たい雰囲気。

私は思わずパッと顔をあげ祭壇に飾られた黄龍の掛け軸を見た。


…そうだ、ここは黄龍を祀る神社。

なんか不思議なことがあってもおかしくないのかも…。


ふむ、と考え始める私。しかし、

クゥ

とお腹から音が鳴った。


「…お腹も空いてるし感謝して頂こう。」


私は昨日と同様黄龍に祈るといただきます、と食事に手をつけた。


***


「…にしても、美味しいご飯だったなぁ。桃は自生してるものだろうけど…。ちょっと探してこよっかな。

あ、その前に食器は洗ってしまおう。」


風呂敷に食器を包み井戸に行くために立ち上がった。


井戸の水を汲み上げ、木桶の中で洗う。


ガサッ


「⁉︎」


木々が揺れ私は反射的に身をすくませた。

まさか、居場所がバレた?

そう思っていると出てきたのは小鳥。

小鳥はそのまま飛んでいってしまった。


「なんだ、鳥か…。そう言えば参拝者の可能性もあったね。」


洗い終えると私は一度社殿に戻り、食器を重ねて片付け、また外へと出た。

桃を探しに行くのだ。


しばらく歩いて行くといきなり開けた場所に出た。

目の前にはサラサラと流れる川。

清流には数々の魚が泳いでいる。


「わ、川だ!」


そして周りの木になるのは沢山の桃。

桃の木だ。


「やった」


桃をひとつもぎ取ると川につける。トプンと水飛沫が立ち、ピシッと辺りに水が飛び散った。

さっと洗うと平らな岩の上に置き、折り畳みの小包丁で半分に切る。果汁が溢れ出していてとても美味しそうだ。丁寧に皮を剥いて行くとかぶりつく。


「んん〜!」


甘い!

…いいのを見つけちゃった。


***


翌日、朝餉を食べ終わった私はまた、桃の木がある川のほとりに来ていた。

今は竹を使って作った竿で魚釣りをしている最中。

…今頃迎えにきた使者にでも怒られてるかな、あの人たち。

少しいい気味だ、と思ってしまうのは仕方がないと思う。


一通り魚を釣った私は、魚を塩で焼いてお昼ご飯に食べたあと、また桃をとっていた。


「そういえば、今は桃の季節じゃないはず。

なんでこの山では今もなってるんだろう?」


首を傾げながらまた一つ桃をもいだ時だった。


ガサ


「⁉︎」


木々が揺れ草を踏み締める音がして振り向くといたのは────



「久しぶりだな。梨・翠零」



あの日出会った五人の青年たちだった。

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