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I am Aegis / Mors 1  作者: アジフライ
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第2話【魂を喰らう者】前編

「う……」

気を失っていた清火は迷宮の入り口があった場所で気が付いた。

……あれ、 ここって……

「うぅん……あれ……傷が……」

いつの間にか清火の傷はなくなっていたのだ。

……夢……だったのかな……でも服はボロボロだし……

清火は一先ず家に帰ることにした。

「はぁ……なんか疲れた……」

家の玄関に着いた清火はドアノブに手を掛けると

「のわっ! 」

ノブがバキッと音を立てて壊れてしまったのだ。

え……何で? え……えぇ……?

「……古かったのかな? 」

清火はとりあえず家に入った。

「はぁ、 ドア直さないと……」

そんなことをぼやきつつ自室のドアノブに手を掛けるとまた玄関と同じように壊れてしまった。

……は?

「……まさか」

清火は台所へ行き、 冷蔵庫にあったリンゴを手に取った。

そんなまさか……スーパーヒーローの映画じゃあるまいし……

清火はそう思いつつもリンゴを思いきり握ってみた。

するとリンゴは一瞬にして潰れてしまった。

「……嘘……」

……まさか……あの声が言ってたことが本当なら……

清火はあの時殺したゴブリン達を思い出した。

「……あれが全部……私の力になったということ……? 」

全ての魂を我が力に……か……あの声の言っていたことが本当で……もし本当に家族が生きている……とすれば……

この時、 清火に目的ができた。




家族に会うために……次元迷宮を片っ端から潰して回るしかない……




「……強くならないと」

多分……殺した魔物の強さと数に応じて力が増すんだよね……だったらもっと強い魔物を殺せば……

清火は剣を取り出す。

……その前に新しい武器を買わないと……でも高いんだよねぇ……

そんなことを考えていると清火の目の前に何かが落ちてきた。

「うわ! ? ……これって」

それはゴブリン達が持っていた剣だった。

さっきのゴブリンが持ってた剣……なんか……ゲームみたいな……別空間の収納庫みたいのがあるみたい……

「とりあえず武器はいいか……前持ってたのより粗悪だけど……早速明日に備えてもう寝よう……」

その日清火は眠りに着いた。

翌日……

「さて……」

清火は準備を済ませ、 次元迷宮の情報を確認した。

……なるべく人がいない迷宮がいいか……それに今の自分の実力を確認しないと……

清火は人が集まっていない迷宮を探し、 現地に向かった。

「……よし……」

迷宮の入り口に着いた清火は早速迷宮に入った。

……今回は砂漠系か……外は寒くてパーカーで来ちゃったから暑い……

そう思いながらも清火は足元が不安定な砂の上をひたすら歩いて行った。

しばらく進んでいくと遠方から砂煙が向かってきているのに気付いた。

来た……って、 あれって……

清火が目を凝らしてよく見ると……

「砂漠ムカデ! 」

……でも……ここで逃げたら……

清火は剣を構えた。 しかし……

「……無理ぃぃぃぃぃぃぃぃ! ! ! 」

戦うとか強さ以前の問題だよ! ムカデキモイし! ! ! !

清火は必死に逃げた、 幸い身体能力的に清火の脚力はムカデの追いかけるスピードよりも速く走れるようになっていた。

私こんな速く走れるようになってたんだ……でも逃げるのに精一杯だよ!

逃げ続けて数分……清火にある変化が生じた。

あれ……疲れてきたのかな……意識が遠のいて……

清火の意識はいつの間にか遠のいてきた。

ヤバい……このままじゃ……

「……」

すると清火の動きが突然止まった。

『キシャァァァァ! ! ! 』

ムカデが清火に襲い掛かろうとした瞬間……

「……! 」

清火はムカデの視界から姿を消し、 ムカデの背後から剣を突き刺しそのままムカデの体を真っ二つにした。

「……ふぅぅぅぅ……」

清火はそのまま他のムカデを探し出すようにおびき出し、 虐殺していった。

「う……んん……?」

清火は目を覚まし、 辺りを見回すと……

「え……何これ……」

清火の周囲にはムカデの死骸が何体も転がっていた。

うげ……気持ち悪……辺りに酸っぱい臭いが……というかいつの間に倒したの?

「とりあえず……先に進もう……」

次元迷宮 第10階層……

ここまで自力で来れた……いくらⅮランクの迷宮でもⅮランク攻略者一人じゃ無理のはず……でも……

ここまで戦ってきた記憶が無い……

清火はここまで来るのに自身が戦っていたという記憶がないのだ。

……一体私に何が起きてるの……?

「はぁ……考えても仕方ない……」

清火はボス部屋へ入った。

部屋にいたのは巨大なワームだった。

また虫……でもそろそろ慣れないと……ここまで自分で戦えてない……無意識に身体を操る何かに頼りっきりだし……

「……」

しばらくお互い睨み合っているとワームが地面に潜った。

「……まずい」

清火が焦りながらも集中すると……

(ズズズズズ……)

何……? 音が聞こえる……足元! !

清火は反射的にその場から離れると地面からワームが飛び出してきた。

「今の……避けれた……? 」

間違い無い……身体能力が魔物を倒した数に応じて上がってきてる……こんな速さで動けたことないもの……

清火は隙を見てワームに攻撃を仕掛けた。

しかし剣がワームの体を通らない。

ウッソ! ?

清火の動きが一瞬止まった隙を見てワームは清火を体で跳ね飛ばした。

清火は部屋の壁に叩き付けられた。

「痛っ! ……くない? 」

体が明らかに頑丈になってるみたい……とりあえずダメージの心配は無いか……でもこっちも攻撃が通らないみたいだし……どうしよう……

するとワームは再び地面に潜った。

まただ……避けても外皮が硬くて攻撃できないし……

その時、 清火の脳裏にある考えが浮かんだ。

……あれしか無いか……嫌だなぁ……

「えぇい躊躇ってる暇は無い! ! 」

すると清火はワームの攻撃を避けずそのままワームに食われてしまった。

次の瞬間……

『ぅぉぉぉぉぉ……! 』

ワームの体内から清火の声がし、 それと同時に清火がワームの腹を突き破って出てきた。

外が駄目なら中から攻撃だぁぁぁぁあああ体液気持ち悪いぃぃぃぃぃぃ! ! !

腹を切り刻まれたワームは力尽きた。

「……うぇ……酸っぱい臭いが……」

すると清火の頭の中にあの声がした。

『やっと自ら戦えたか……』

またあの声……まさか今まで私の体を操っていたのって……

すると清火の考えを読んでいるかのように声は答えた。

『正にその通りだ……だがもう戦えるであろう……敵の血を浴びながらも腹わたを切り刻む覚悟があれば大丈夫だろう……』

血っていうより……虫の体液だけど……まぁ既にゴブリンの血を浴びてるし……寧ろ虫の方が嫌だったり……

『そのまま戦い続けろ……そして全ての魂を喰らい尽くせ……その魂は其方の力となる……』

「力って言ったって……別に特別な能力とか無いじゃん」

『……いずれ分かる』

それを最後に謎の声は聞こえなくなってしまった。

……何なの?

色々モヤモヤした感覚を残したまま清火は迷宮のコアを探し出し、 迷宮の外へ出た。

ワームの死骸とムカデの一部は持ち帰ったし、 この迷宮は攻略完了か……

清火はコアを破壊し、 迷宮の入り口を閉じた。

「力……か……」

ムカデとワームの能力って……地面に潜ったり……毒を使ったり……ロクなの無いじゃん、 せめて毒が使えれば……

そんなことを考えながらも清火は協会にワームとムカデの一部を提出した。

やっと手続き終わった……折角だし他の迷宮にも行ってみようかな?

そして清火は再び迷宮の情報を調べていると……

「あれ、 清火さん? 」

後ろから声を掛けられた。

「あ、 たっくん」

声を掛けてきたのは拓郎だった。

「奇遇だな、 迷宮攻略終わった所か? 」

「うん……まぁ」

まさかここでまた会うとは……

すると拓郎は清火にある提案をしてきた。

「そうだ、 この後暇? 良ければ一緒に迷宮攻略しに行かない? 」

うーん……まぁ確かにこの後もやること無いし……一人で攻略するよりかは退屈しなさそう……

清火は拓郎と迷宮攻略しに行くことにした。

数分後……

清火と拓郎は迷宮の入り口へ着いた。

そこには他の攻略者も集まっていた。

……まぁこれが普通か……私は人気が無いかつ人が来る前に攻略しちゃったし……

「確かもう来てるはず……」

すると拓郎は辺りを見回し、 何かを探した。

「お、 いたいた! 」

拓郎の目線の先には何人か集団になっているグループがいた。

あぁ……あれがたっくんの仲間か……

「お、 拓郎やっと来たか」

「悪い悪い、 丁度知り合いに会ったから誘ってて」

すると拓郎の仲間たちは清火を見た。

……やっぱその反応するよね……Dランクの攻略者は皆足手まといだし……

「……気にするな、 清火さんは付いていくだけでいいから……」

拓郎は小声で言った。

たっくんが雄一の救いだよ……

そして清火は拓郎達と共にBランクの迷宮に入った。

…………

迷宮は洞窟系だった。

……やっぱり聴覚も急激に上がってるみたい……地面からの振動による敵の位置の特定……それに加えて音の反響によって迷宮の構造も把握できる……この先に分かれ道……当たりは右……

しばらく進むと清火の予想通り分かれ道があった。

「分かれ道か……左に進んでみようぜ」

拓郎の仲間が左へ進もうと提案してきた。

「……だめ、 左には強力な魔物がいる……」

清火が反対すると拓郎の仲間の一人が怒った。

「Dランクが口を出してんじゃねぇよ……お前は黙ってればいいんだよ……」

「……」

世の中は本当にこんなやつばっかり……

清火は面倒だと思いその時は黙った。

すると拓郎が清火に近付き、 小声で話し掛けた。

「ごめん……俺の仲間が……」

「たっくんが謝ることは無いよ……」

数分後……

しばらく進むと清火の予想通り、 先にサイクロプスが待ち構えていた。

「こ、 こいつ何なんだよ! 刃が通らねぇ! 」

このサイクロプス……普通個体じゃない……皮膚が硬質に進化してる……でも目玉なら攻撃が通る……私が殺るにしてもさっきの男が前に出過ぎて邪魔で武器を投げれない……

清火が手を出せずに手間取っているとさっき清火に突っかかってきた男が叫んだ。

「テメェ! ただでさえ役立たずなんだから囮くらいにでもなりやがれ! 」

その言葉にキレた清火は

「アンタが邪魔で手を出せないんだよ! ! ! そこどけ! ! ! ! 」

あまりもの権幕に驚いた男はサイクロプスの側から離れた。

やっとどいた……さて……

そして清火は剣を手にし、 投げる構えを取った。

サイクロプスは清火に向かって突進してきた。

「清火さん、 危ない! 」

拓郎が警告するが清火は構えの体制のままサイクロプスを引き寄せる。

……今!

サイクロプスが清火にぶつかろうとした瞬間、 清火は剣をサイクロプスの目に向かって投げつけた。

剣はサイクロプスの目に深く刺さり、 サイクロプスはそのまま倒れ、 清火の目の前で止まった。

「う……嘘だろ……Dランクが……」

これでまた強くなったかな……こいつの皮膚は硬いみたいだし、 私の体も頑丈になるのかな……

そんなことを考えていると拓郎が話し掛けてきた。

「清火さん、 そんなに強かったっけ……? 」

「あぁいや、 最近筋トレしてて……」

無理があるぅぅぅ! ! ! 何言ってんだ私ぃぃぃ! ! !

すると拓郎はただ頷くだけで何も言うことは無かった。

絶対優しさで聞かないだけじゃん……絶対怪しんでるよね! ?

しかし全員何も話すことなくそのまま先へ進んでいった。

その後も清火達は魔物を倒しながら先へ進み、 ついにボス部屋へたどり着いた。

「ここがボス部屋か……」

すると拓郎達が清火の方を見た。

しかし全員何も言わずに部屋に進んだ。

まぁ……道中魔物を倒してたのはほぼ私だしね……

一同が部屋に入ると扉が閉じた。

それと同時に天井から何かが落ちてきた。

その正体は巨大な蜘蛛だった。

「あれは……バカな、 Aランクのボスだぞ! ? 」

「Aランク! ? 」

そのボスはAランクの迷宮に出現するはずの魔物だったのだ。

「まずいぞ、 早く部屋を出ねぇと! あんなの勝てねぇよ! 」

慌てて拓郎の仲間が扉の方へ走った。

清火もそれに便乗して付いて行った。

……まぁ珍しくもないことか……たまに等級に見合わないボスが出てくることあるもんね……

一同が扉の前に着いた瞬間、 蜘蛛は清火達に襲い掛かった。

「危ない! ! 」

蜘蛛に気付いた拓郎は清火を突き飛ばすように攻撃を避けさせた。

そして……

「うわっ……」

拓郎達は蜘蛛の糸に捕まり、 天井に釣り上げられた。

すかさず蜘蛛は天井に上がり、 拓郎達を捕食しだした。

「え……嘘……たっくん! ! 」

あまりにも一瞬の出来事で状況を整理できなかった清火は叫ぶことしかできなかった。

「清火さん、 逃げろ! ! ! 」

拓郎がそう叫んだ瞬間、 蜘蛛は拓郎の頭を食いちぎった。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ! ! 」

油断し過ぎてた……いつもみたいに逃げられると思ってた……私のせいで……たっくんが……

捕食が終わった蜘蛛は扉の前でへたり込む清火に気付き、 再び天井から降りてきた。

そして絶望で身動きのできない清火にゆっくりと近付いていく。

もう……どうでもいいや……生きてるかも分からない家族なんかを探して……大切だと感じていた人まで失って……何一つ守れない私が……何が強くなるだ……もう生きてる意味なんて……

清火は喪失感で溢れた。

そんなこともお構いなしに蜘蛛は清火にじりじりと近付いてきていた。

続く……


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