プロローグ中
1人で出歩いても目立ちづらい年頃になった、自分主観の意見であるが…。私が新しく生まれた世界を改めて見直すべきタイミングだと言っていいだろう。
「母さん、1人で歩いてきてもいいですか?」
現在の時間は朝、夜仕事をする母は寝ている時間、かといって無断で出かけるわけにもいかない。
「…気をつけなさい、あなたは目立つから」
「それはもちろん、昼過ぎには戻ります」
携帯もないこの世界で子供が持ち歩くものは水と小銭程度だろうか。軽く身支度を整えた私は店舗兼用の自宅を出た。
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この時間帯は商店街が賑わっている。最も商店街と言うよりかはバザールと言ったものがイメージが近いか。建物は石を積み重ねたようなもが多く、街の外側にはコンクリートの壁のようなものも見える。
「技術的には古代ローマでも可能か…推定はできんな」
以前から感じてはいたが、ネットはおろか本なども見かけることがない現状においてこの世界の文明レベルを推定することは難しい。
「おぉ!リンじゃねぇか!こんな朝から1人で何してんだ?」
「…ん?厳つい果物屋じゃないか」
店奥から見慣れた大男に声をかけられた。でかくてゴツい体とでかい声の果物屋のおっさん。たまに母さんと買いに来る果物屋だ。
「おいおい、いい加減おじさんの名前覚えてくれよぉ。ダイアン!ダイアンおじさん、呼んでみな!」
「ダイアン」
「呼び捨てにすんな!? たくっ、母親に似やがって。んで、1人で何してんだよ。母親は?」
「見識を広げてる。母さんは家で寝てる。」
「あぁー、まぁいいか。おめぇさん目立つからキィつけんだぞ。」
果物屋の大男が優しいと言うのは異世界の定番だろうか。
「あとこれ」
「ん?」
「やるよ、子供は栄養がいるからな。母ちゃんによろしく言っといてくれ」
「ありがとう」
よくわからない果物をもらってしまった。これはこのまま食えるのだろうか。
街の端まで来てしまった。近くで見てもコンクリートのように見える。大きさは5m程度だろうか、長さのわかるものが近くにないので判断しずらい。
この世界に生まれて6年が経ったがいまいちわからない。魔法が飛び交うでも、魔王が侵略するでも、戦争でもなく。なぜ私は記憶を持ったまま生まれたのだろうか。偶然?意味などないのだろうか。
異世界にて少女となったものは知らない。変革の日は近い。