魔の手
この短編は好評であれば続編も考えようかな~なんて思ってます。
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「ねぇ、貴方」
「えっと、どうかしましたか?」
ルイス・スカルアの前には美しい赤い髪をした整った顔立ちの少女が堂々とした立ち振る舞いをし話しかけてきた。
「わたくしの名はサーナよ。訳あって家名は言えないわ。けれどきっと貴方も分かってくれるはずよ」
サーナ、と名乗った少女は目を細め、私にあの名前を言った。
「カナリア・ボーン」
「!?」
「ねえ、貴方もあの“魔の手”から逃れているのでしょう? わたくしもなの」
「サーナさんも……」
カナリア・ボーンというのは国で王族以外に一番権力を持つ公爵家、ボーン家の一人娘だ。
さぞ愛されていたのだろう。周りは彼女の無礼な振る舞いを咎めず、崇め称える。
そんな彼女に嫌われるのはボーン家を敵に回すも同然。
ルイスも通っていた学院には彼女に嫌われ、追い出された少女が沢山いた。勿論、ルイスもそうだ。
そんな彼女の行為を影では“魔の手”と呼び、忌み嫌われていた。
「わたくしは魔の手から逃れている者と一緒に立ち上がり、ボーン家を潰したい」
「そんなっ、無理ですよ!」
ボーン家は降嫁してきた王族も多く、安易に手が出せない存在。
孤高の存在であった。
「貴方もあの魔の手により家を潰され、こうしてこんな田舎へ逃げてきたのでしょう。助かるにはこれしかないわ」
サーナはどこか落ち着いた様子でルイスへ言った。
ルイスは迷った素振りをしていた。
自分のせいで家族を苦しめているのは確かだ。けれどこれ以上苦しめてどうする? でも……
「やるわ。だけど家族は巻き込まない。これでいいかしら?」
「構わないわ。ようこそ、ルイス。スカルアの名は捨てて、わたくしと共に」
「えぇ」
ルイスは決意を決めた。
美しく、煌びやかな格好をしていたルイスはぼろいドレスを見に纏い、家名であるスカルアの名を捨てた。
「ふふ、貴方は美しいわ。誰にも負けない、綺麗な魂を持っているもの」
微笑んだ少女と共に、ルイスはこの日、別人となった。