彼女が山本である理由
感想や評価、お待ちしております。
彼女は今日、ある名を捨てた。
彼女の名は山本。だが山本は本名ではない。
親しい人でなければ本名を教えることはない偽りの名を持つ警戒心の強い女。
山本は恋をしたいけれど警戒心の強さからか恋ができず、いつまで経っても彼氏ができることはなかった。
そんな彼女にも初恋の人がいた。それはとある高校の同級生の、ぷりんくんである。
ぷりんくんというのはあだ名だ。金髪に染めていたけれど頭のてっぺんの色が落ち、黒に戻っているその髪色がぷりんみたいだからと付けられたあだ名だ。
彼はそれを気に入っており、彼イコールぷりんくんとなり彼の本名を覚えている者は少なかった。
そんな彼のことあだ名で呼ばず、本名で呼んでいたのが彼女山本だ。
ぷりんくんは山本の名を教えたくない、という気持ちを汲み取り彼女にあだ名を名づけた。
それが、山本である。
彼が何故、山本と名づけかかは謎だが彼女が今だそのあだ名を名乗っていることから気に入っていることは確かだった。
そんな彼女、山本とぷりんくんの再会は同窓会だった。
当時ぷりん頭をしていたぷりんくんはぷりん頭ではなくなり、真っ黒に染まっていた。
髪を染めていたのは若気の至りだろう。今は仕事のため、髪を染めるのをやめていた。
ぷりん頭ではなくなったぷりんくんにぷりん、というわけにはいかないので周りはやっと彼に本名を聞いた。
「山本。山本だよ」
「山本?」
彼の本名は山本だった。
そう、彼は彼女に自分の本名をあだ名にするように言っていたのだ。
彼女は彼の本名を知っているのにも関わらずそれを了承した。
それは何故かって……?
「あれ、山本くんって結婚してたんだ!」
それは彼の左手の薬指に光っている指輪が全ての謎を現しているだろう。