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花の方舟  作者: よつば 綴
第一章 出会い
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第9話 それぞれの想い




 皆さんこんばんは、フルールです。

 先日私はついに、上級貴族であるラーファ様と恋仲になりました。が、やはり階級の事が気にかかり、両手放しには喜べません。


 シャルル家でのお茶会の後、ラーファ様は父を訪ねてご挨拶してくださいました。予想通り父は発狂していました。ですが、ラーファ様の熱意と誠意に負けた父に許しをもらい、いよいよ両家公認の仲です。

 当の私はと言うと、まだ交際しているという実感が湧きません。ただ、ラーファ様を想う気持ちを自覚してからは、なんだかもう恥ずかしくてたまりません。

 ラーファ様は頻繁にお店に足を運んでくださり、沢山お話をなさって夕方には帰られます。時折、帰り際にとても寂しそうなお顔をされます。そんな時ラーファ様は、私の頬に優しくキスをしてから帰られます。顔が熱くなってしまいラーファ様のお顔を見る事が出来ず、後ろ姿をいつまでもお見送りするのです。


 貴族と平民との恋はご法度······とまではいきませんが、あまり心良く思わない方もいらっしゃるようです。上級貴族の方の中には階級をきっちりと分け隔てる方も少なくありません。

 ですが、シャルル家の皆様は階級を気になさらないようです。ご両親ともとてもお優しく、私を暖かく歓迎してくださいました。本当にいつか、もしもラーファ様と結婚できたら······。なんて夢の様なお話ですね。まずは、ラーファ様の事をもっと知りたいを思います。ラーファ様は私の事をよくご存知なのに、私はラーファ様の事をあまり知らないように思います。

 そういえば、いつもラーファ様からお手紙を頂きますが、私からお出ししたことがありません。もっとお互いを知るために、お手紙の交換したいと思います。早速お手紙を書いてみましょう。




 ──拝啓 ラーファ・シャルル様


 ご機嫌麗しゅうございます。

 突然ですが、ラーファ様はどんなお花がお好きでしょうか? 好きな食べ物は何でしょうか?

 私は、もっとラーファ様の事を知りたいと思います。

 明日お越しくださった時は、ラーファ様のお話をお聞かせください。


 貴方のフルールより──




 あまりに唐突すぎたでしょうか。殿方にお手紙を書いた経験が無いので、何から書けばいいのかわかりません······。

 とにかく、一度出してみたいと思います。お返事をいただけるでしょうか······不安です。



 翌朝。

 開店の準備をしていると背後から突然、


「好きな花はガーベラ。好きな食べ物は、君がこの前焼いてくれたレモンパイ。僕ももっと君の事を知りたいよ」


 フワッ抱きしめながら、ラーファ様は耳元で囁くようにおっしゃいました。


「おはよう、フルール」

「お、おはようございます!」

「朝の澄んだ空気に君の花たちの香り、と、真っ赤なフルール。とてもいい朝だ」

「ラーファ様は今日も朝早くからご機嫌ですね。私は恥ずかしくて、心臓が止まってしまうかと思いました」

「あはは。ごめんね。声をかけるつもりだったんだけど、花たちに微笑んでる君を見たらちょっと妬けちゃって······」

「まぁ、お花に嫉妬するなんて。ところで、今朝は随分お早いんですね」

「今朝はクラスの当番があるから、アズと待ち合わせてるんだ。それに、君からあんな情熱的な手紙をもらったからね。直接返事をしたくてさ」

「初めて男性にお手紙をお出しするので、なんと書けば良いものかわからず······」

『フルールちゃんらしくて可愛いじゃないか、ねぇ』


 ラーファ様の後ろからひょいっと顔を覗かせて言ったのはアズ様です。


「アズ様。おはようございます」

「フルールちゃん、おはよぉ。ラーファも、おはよぉ」

「はぁ······アズ、どうしてここに?」

「どうしてってねぇ、今何時だと思ってんの?」


 ハッとしてラーファ様はお店の時計を確認されました。


「あ、はは······。ごめんごめん」


 どうやらお約束の時間を過ぎていたようです。


「恋人と甘い一時も結構だけどねぇ、僕との約束も忘れないでくれよぉ」

「ごめんって。すぐ行くから外で待っててよ」

「わかったよ。まぁ慌てなくていいけどねぇ」


「はぁ······アズのヤツめ、フルールとの時間を邪魔するなんて。まぁ僕が悪いんだけどさ。あーぁ、もう行かなきゃ。フルール、また帰りに寄るからね」


 ラーファ様はぼそぼそと文句も仰いましたが、ご自分の非も認められる真っ直ぐなお方です。こういう所はまだまだ子供らしさを残し、年下という感じがします。


「はい。お待ちしております。行ってらっしゃいませ、ラーファ様」

「うん。行ってきます」


 なんだかんだと仰りながらも、ラーファ様とアズ様は仲良くご登院なさいました。


 アズ様は数日前にラーファ様とお店にいらしてくださいました。

 同じ医院で同じ日にお産まれになり、ずっと一緒に育ってこられたそうです。親友と言うよりも、兄弟の様なお二人です。とても仲がよろしいのですが、お二人の性格は正反対のようです。

 ラーファ様はとても真面目で真っ直ぐで、物静かで何にでも余裕を持っておられます。アズ様はいつもご陽気でゆるりとされている印象です。ですが時々、物悲しそうな目でラーファ様を見ていらっしゃいます。お二人には、私の知らない何かがあるのでしょうか······(๑•́ω•̀๑)




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